キング・オブ・スポーツ5
「学割で1万5000円で3回練習できますよ。」
「学割があるんですか!? ラッキー!」
近代五種同様、マイナー・スポーツのフェンシングも競技者人口を増やそうと、学割を始め、色々なキャンペーンを行っていた。
「よし! これで全員と総当たりで勝負するぞ!」
「いえいえ、あなたフェンシングはやったことはあるんですか?」
「いいえ。」
「このフェンシング教室は、素人の方にフェンシングに親しんでもらうためのものであって、総当たりとか、真剣勝負を行うものではありません。基本の基本を学ぶ教室ですよ。」
私のやる気は空回りしていた。それでも近代五種で東京オリンピックに出場するためには、フェンシングを練習しない訳にはいかなかった。
「お願いです。私にフェンシングを教えてください。」
「はい。いいですよ。」
ちなみに、近代五種のフェンシングは、エペによる1分間一本勝負の総当たり戦。勝率70パーセントを1000点とし、得点が増減する。1勝あたりの得点は試合数により異なる。
「こんな感じです。」
「要するに、相手を突けばいいんですね。」
「そうですね。」
「こんな感じでいいんですかね? フンフンフンフンフン!」
私はフェンシングのインストラクターから、知識を得た。そして、私は若さに任せて、恐ろしい勢いでフェンシングの突きを、針千本のように放ちまくる。
「な、なんて恐ろしい速さだ!?」
「とても素人の女の子とは思えない!?」
「て、天才だ!? フェンシングの天才少女だ!?」
私の天性の才能はフェンシングでも開花した。ランニングと水泳のタイムは人並み。射撃の腕前もプロ級だが、知っているのはゲームセンターのおやっさんだけ。私という人間を初めて知った世間の人はフェンシング教室の人々が初めてかもしれない。
「どうですか? 私のフェンシングの腕前は?」
「内定だ! 東京オリンピックに出場は確実だ!」
「すぐにフェンシング協会に連絡を! 天才フェンシング女子高生の誕生だ!」
「うちのフェンシング教室とスポンサー契約をしてくれ! 金なら、いくらでも出すぞ!」
どうやら私のフェンシングの腕前は、かなり良いみたいだった。東京オリンピックに出場や、フェンシング協会に連絡とか、スポンサー契約とか、喉から手が出そうな程、良いお話が次方次へと出てきた。
「ごめんなさい。無理です。」
「もったいない!? どうして!?」
「私は近代五種で東京オリンピックに出場したいんです。」
若い私は純粋な言葉を使う。私の頭の中には、フェンシングの選手として、近代五種の選手とも兼任して東京オリンピックに出場することは思いつかなかった。
つづく。




