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妄想中  作者: 渋谷奏
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オリンピック、前夜10

「イチ、ニ、サン、ヨン。」 

 彼女の想いは多くの人々の心を動かした。彼女の病室には、毎日届くたくさんの手紙や千羽鶴が飾られていた。彼女の病気を知った人々が、彼女に「早く病気が治って欲しい。」「東京オリンピックで彼女の姿が見たい!」たくさんの人々の温かい心に彼女は支えられている。

「エリ子、あなたには選手としても、人間としても負けたわ。」

「先輩、選考レースでは負けませんからね!」

「ありがとうございます。」

 彼女の水泳選手の先輩後輩も、病気のお見舞いに来てくれた。彼女の病気を知った時とは違い、彼女を本当に心配してくれている。それが一目で分かったので、彼女も先輩後輩がお見舞いに来てくれたことが嬉しかった。

「もう一回、歩いてみましょうか?」

「はい。」

 彼女はリハビリをしている。運動ができなかった間に落ちてしまった筋肉を鍛え直そうとしている。彼女が白血病を公表してから、直ぐに彼女の骨髄の提供者が現れた。彼女は骨髄移植手術を行い、無事に白血病を治した。

「エリ子さん、がんばって!」

「あ! 真帆ちゃん! 結ちゃん!」

 彼女と同じ白血病で入院していたが、一足先に骨髄移植をして完治した真帆ちゃんと結ちゃんの姉妹が、彼女のお見舞いにやって来た。

「お姉ちゃん、あげる。」

「ええー!? 私にくれるの!?」

「うん。」

 結ちゃんが自分のおやつをくれるという。

「ありがとう。今度、何か欲しいものをプレゼントするね。」

「金メダル。」

「え?」

「東京オリンピックの金メダルが欲しい!」

 彼女の瞳から自然と涙がこぼれだす。正直な所、リハビリはしているが、彼女自身も東京オリンピックに出場できるかどうかは半信半疑だった。それなのに純粋な瞳の結ちゃんは、本気で彼女が東京オリンピックに出場して、金メダルを取ってくれると信じてくれている。

「ああ~ダメだ。病気になってから、涙もろくなっている。」

「痛いの?」

「うんうん、逆。嬉しいの。真帆ちゃん、結ちゃん、金メダルをたくさん取って、二人の首にかけてあげるね。」

「やったー!」

「約束だよ! お姉ちゃん! 絶対だからね!」

 彼女には明確な目標があった。生きる目標は彼女に活力を与えてくれた。彼女を応援してくれる人々に応えるためにも、彼女は約束を守るためにも諦めることはない。

「いくぞ! 2020東京オリンピック! 私が金メダルを絶対に取るんだ!」

 彼女の人生は、ここからがスタートだ。

「ここは病院です。静かにリハビリしてください。」

「すいません。」

「キャハハ。」

「クスクス。」

 病院では静かにしましょう。


 おわり

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