その2
木村綾香は34歳の切れ長の目をした美人な方である。医療文化人類学専攻で大学の準教授である。自分より博識であり年収も高い、社会的にも安定し何よりほとんど解雇がない、羨ましい限りである。
クリニックの臨床心理士など年度更新なので、院長の胸下三寸でいつ首になるか分からない!
「先生、きっと統合失調症だと思われていると思いますが。これは違うと思います。」涙目で訴えるように迫ってくる。
かなりの迫力で迫ってくるので、たじたじになりそうなのを堪えて「そうですか」
と答える。
「私は見たんです。朝、外出した時に霧がかかっているのかと気にもしなかったのですが、よく見ると霧のひとつひとつが全部UFO だったんです。しかも、UFO 全てが私の身体の中を素通りして行くんです。今も身体中にとどまっていると思います。」
隼雄は驚いた‼
臨床のカウンセリングの中で夢分析をしているが、同じことを言う患者がかなりいた。
しかし、リアルに見たという報告は初めてであった。しかも、自分もUFOらしき物体が木村綾香の頭の中に入り込んだのを見てしまった❗
これは現実なのか?
隼雄はため息をついた。