『夏休みの課題作文 』シン・ゴジラを見た感想を書きなさい
タイトルまま
シン・ゴジラには美しいシーンがある。
東京に上陸したかの怪物は「名前のない怪物」であった。ちょっと待って欲しい、劇中でGODZILLAと命名されているではないか。と反論したくなる気持ちもわかる。
だが、違う。
それはGODZILLAであってゴジラではない。スクリーンの中ではゴジラであっても私たち(この私たちという呼びかけも昨今では言葉狩りにあっているようだが)の魂に眠るゴジラではないのだ。
では如何にして、「名前のない怪物」はゴジラと認知されるのだろうか。
シン・ゴジラには美しいシーンがある。
シン・ゴジラはビームを放つ瞬間が最も美しい。うつむいたゴジラの顔にぽかりと空いた穴から、血反吐のような黒煙が東京三区に充満する。ついでその黒煙は真紅の滝のような業火へと変わり、そして。
細く鋭く鉄をも蒸発させる青白い吐息を獲得した名前のない怪物は、ゴジラへの産声を上げるのだ。
それは蝶の羽化に等しい。蛹の中から蝶が羽をふわりと広げた飛翔する姿とシン・ゴジラが青白いビームを獲得する姿はまったく同質の美しさを秘めている。
このシーンを書くことでシン・ゴジラは完結しているのだ。
変化するものは美しいという、世界へ愛の告白に他ならない。イエス・キリストのごとき無条件の肯定をシン・ゴジラはやってのけたのである。