第9話
ぴちゃんっ
「…………ふぅ〜♪」
「…………」
ねむかぁ〜…。
既にエヴァちゃんの腕の中で眠ってしまいそうです。疲れた体に温かいお湯が気持ちいい……。
「恋葉ちゃん、こんなところで寝てはいけませんよ?」
「んー分かっとうけど、今日バリ疲れたもん」
「体力テストでしたものね」
それもあるけどさー、
「朝からバタバタしたけんたい〜」
あの後いっぱいキスされて、気付いたら時間がギリギリで、あんなに余裕持って準備したはずなのに結局は遅刻ギリギリ。おかげでクラスのみんなに笑われちゃって……まあ、名前は覚えられたみたいやけどね。
「うふふ、楽しかったですわ♪ でも、だからってここで寝てしまってはわたくし、手加減が出来るか分かりませんわよ?」
「起きます絶対寝ません大丈夫です」
「あら〜残念ですわ♡」
エヴァちゃんたらからかっとーやろ! もう!
「あ、そうだ。お家から持ってきたチョコレートがあるんです。あとでいただきましょうか」
「ほんと!?」
「はい♡」
「流石エヴァちゃん〜♪」
持つべきものは友ですな!
「そろそろ上がろ! チョコちょこ〜っ♪」
◇
はあああっ!! なんということでしょう!
「えばちゃ〜んぎゅうう〜」
「お母様ったらどうしてお酒が入ったものを……」
恋葉ちゃんの強烈なハグを受け止めます。撮りたい……ビデオに納めたいです……。
「ん〜」
「どうかしましたか?」
「暑いっちゃけど! パジャマ暑い〜」
ぬ!? そ、それはいかがなものかとっっでもチャンス? 恋葉ちゃんのは、はだか……? ゔっ。お風呂で見るのとはまた別物ですし!!
チョコレートの入っていた箱。半分以上が包み紙だけの状態。わたくしがいただいたのは1つ。それ以外は全部恋葉ちゃんで……彼女はアルコールに弱いみたいです。
「恋葉ちゃんっ! 風邪をひいてしまいます!」
「んぅ〜、じゃーえばちゃんがあっためてよー」
「そんなこと言っていいんですか?」
「なんれ〜?」
「……」
ここまでくると襲いたい気持ちも……無くなったりはしませんが。やっぱり恥ずかしそ〜にしてるのを見るのが、いや、でも甘えん坊さんな恋葉ちゃんも可愛い!!
「もいっこたべよぉ〜♪」
「だだだだめですよ恋葉ちゃん!!」
「食べると〜」
「食べすぎですっ! ほら、明日も学校なんですからそろそろ寝ましょ!」
いけませんいけません! これ以上はわたくしの心臓に悪いですわ! こうなったら無理やりにでも寝てもらいましょうっ。
むすっとほっぺを膨らませる恋葉ちゃんもとっても可愛いのですけど。どうしたら……。
「恋葉ちゃん? 一緒にこちらで寝ましょう?」
ベッドの上で手を広げてみるとあっさり上がってきました。スリスリしてきて可愛いです。幸せそうな笑顔です。
「にゃ〜っ♡」
「うふふ♪ 恋葉ちゃんたら甘えん坊さんですね♡ おやすみなさい」
「だめーだめよぉ〜えばちゃんもぬいでー」
なんと。まあ、いいんですけどね。言われた通り、パジャマを脱いでからまた布団の中へ。
「ん〜あったかい〜♪」
お互いの体温を感じながら眠る……なんて素敵なんでしょう! 私に抱きついたまま目を閉じた恋葉ちゃんは、すぐに寝息をたてて寝てしまいました。こんなに可愛いなら、あのチョコは全部恋葉ちゃんに食べてもらっても……なーんて。しかしどうしましょう。実はあれ、まだあと1箱あるのです。開けてしまったものの処理もそうですが、流石に未成年の私たちが食べるのは……特に、恋葉ちゃんに悪いみたいですし。先生方にあげるには数が足りない……。
「倉田先生なら、」
校務員の先生ならお一人でいらっしゃることもあるでしょうし。それがいいですわ。明日早く出て、渡しちゃいましょうか。
さて、解決したところで、わたくしも眠りましょう。
「おやすみなさい、恋葉ちゃん」