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第22話

いや、急にシリアスモードやん?

ウチとエヴァちゃんが付き合うことになって数ヶ月。

「恋葉! 聞いてください! わたくしテスト頑張ったんですのよ! 褒めてください!」

嬉々とした表情でテストの点数を見せてくれたエヴァちゃんは、元々菊花寮に入れるくらい成績が良いのでそりゃあもう差があって。

「あー……すごい。これでもエヴァちゃんに教えてもらってバリ上がっとるんやけど、やっぱ敵わんね」

自信あったけど、思っとったより低かったかも。

「ええ! 恋葉とっても頑張ってましたわ! 次はきっともっと良くなりますわね! 頑張ったねのチュー! ですわ♡」

恋人になって変わったことは、エヴァちゃんがウチのことを恋葉って呼ぶようになったことと、いつでもどこでも構わずハグやキスをするようになったこと。クラスでは既に付き合ってると思われてたみたいで、最初は付き合い始めたことを話すと「まだ付き合ってなかったんだ!」と驚かれるのがほとんどやった。でもそれももうなくなって、キスしててもなんだか温かい視線を感じはするけど気にならなくなってきた。いや、恥ずかしいけどさ!

「今日は部活なので、先に寮に戻っていてくださいね♡」

ギューッとハグされて、愛されていることを感じる。恥ずかしいけどほっと一息、安心する瞬間。

「うん、分かった。待っとるよ」

もう放課後か。部活の時間はエヴァちゃんと一緒にいられない。そうでなくても、友達の多いエヴァちゃんは休み時間にふらりとどこかへ行ってしまうこともある。そのくらい普通よ、そんなの分かっとるけど……エヴァちゃんは変わらない。ウチと付き合っても。

「恋葉、部屋に置いてる原稿を持ってきてもらえませんか? 今日が締切というわけではないんですが、早くお披露目したいのに忘れてきてしまって。先生にも呼ばれてるんです」

「あー、うん。いいよ。どこに置いとるん?」

「おそらく机の上かと。封筒に入れてますの」

「了解、後で部室に届けに行くね」

「お願いします♪」

キスをしてウチは部屋に戻った。学校だと何かと邪魔になって髪を結んでるけど、終わって部屋に戻ったらいつも解く。この解放感がたまらんのです。まあこの時期は暑いけどね。

「ふぅ……」

また学校に戻るのに制服を脱ぐわけにもいかないので、軽く髪に櫛を通してから、エヴァちゃんが言っていた原稿を探す。彼女の言っとった通り机の上に置いてあった。今日の朝もバタバタやったもんね、まあ忘れても仕方ないか。

「さて、行きますか」

正直あの部室に行くのは気が進まない。だって、エヴァちゃんはウチと付き合っても変わらんのやもん。

あとでコンビニ行ってお菓子いっぱい買ってこよっと。それくらいいいよね。



コンコン、とノックしてしばらく待ったものの目の前の扉は開かない。エヴァちゃんが行くって言っとったんやし、誰もおらんこと無いはずやけど。

「あのー、……」

自分でそのドアを開けた瞬間、まあ、そういうことですよね、と。泣きそうな、でもどこか冷静な自分が心の中で呟く。もう慣れたもん、エヴァちゃんはそういう人なんやもんね。

「恋葉! 持ってきてくれたんですの? ありがとうございます!」

すぐに気付いて駆け寄ってきたけど、なーんか、制服が乱れてない? それよりも決定的な瞬間を見ちゃったわけやけど。ノックはそこにいる誰の耳にも届かなかったらしい。そう、いたのはやっぱり1人じゃなかった。

「読んでくださいましたか? 星花祭の合同誌に載せるんですのよ!」

「ううん、勝手に読むの良くないかなって」

ていうか、絶対えっちぃ絵ばっかやし……。

「あらまあ! 読んでくださいまし! だって、わたくしの初めて世に出る百合漫画を恋人が1番最初に読んでもらうのは当然でしょう?」

「こ、恋人」

「ええ!」

恥ずかしいけど、とっても甘くて優しくて、言葉になるといい響き。恋人、だって。ふふ。

少し嬉しくなったのもつかの間、後ろにいる先輩が、ボソッと口にした言葉が耳に入ってカッとなる。

「エヴァちゃん嫌い!」

キスって、恋人の特権じゃないんかな。それともみんなが恋人で、ウチはその中の1人とか。あんまりエヴァちゃんには特別じゃないんかな。クラスではあんなやけどあ、教室を出てウチと別行動になったら、ウチのこと忘れてるんかな。

「恋葉!?」

先輩は悪気があったわけじゃないと思うし、エヴァちゃんもそんなつもりでいるわけじゃない。きっとそうだと思うのに、モヤモヤ、イライラ、落ち着かない。

もうやだな、嫉妬するの。

部活でみんなとキスしてるのなんて、そんなの、見たくなかったじゃん。


「恋人、いたんだ」


言ってないんだ。ウチのこと。恋人いるって知らなくて、キス、してたんだ。もしかしてあの人は本当にエヴァちゃんのことが好きなのかも。そんな人とキス、してたのかも。取られるかな、そもそもウチってエヴァちゃんのじゃなかったんかな。そりゃあ、分かっとるよ、綺麗な金髪であんなに可愛くて外国人さんでお人形みたいで、ウチじゃ釣り合わんよ。そりゃあね。でも付き合っとるんやもん。ウチだけ見てほしいのに。嫌になる。もっと心が広かったら良いのに。なんでこんななんやろう。ちゃんと気持ちを伝えずに、エヴァちゃんに酷いこと言っちゃった。もう、自分が嫌になる。

おかしいなーこの回で最終回のはずやったんやけどなー。あれー?

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