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第20話

ついに最終日スタート!

ちゃんと先輩してるみぃちゃんはこちらです。

『昨日はごめんね。用事あるけん先に行っときます』

うん、これでよし。

結局あんまり寝れんやったし、お散歩とかして時間潰してしまおう。それで、帰ってきたらちゃんとエヴァちゃんとお話する。よし。

昨日のシュシュを腕に付け、通学バッグを持って部屋を後にする。こんな時間やし、誰もおらんよね。外に出るにしてもまだどこも開いてないし。とりあえず、登校時間くらいまでは校内をぶらぶらしますか。旧校舎辺りなら、ギリギリまでおっても人に見つかりにくいかな。

「らーらららー♪」

天気いいなー。ポカポカして気持ちいい。

「……はあぁ〜」

ダメやん。やっぱ、無理。こういう時って無理にテンション上げようとしても無駄なんやなー。

鞄を手放し、その場にしゃがみこんでしまう。誰もおらんけん良かったものの。

うつむくとポロポロ涙が落ちてくる。あーあ、やっぱ、言わん方が良かったんかな。

「……ひっく」

あー。ダメダメ。ここじゃそろそろ、朝練で来る人に見つかる。早く人がおらんとこに。

あー。あのお姉さんがなんとかなるって言ってくれたのに。全然そうなる気がせんよ。だってお互いこんな風になるとか思わんやん。ただちょっと意識してみただけ。それだけで。恋に憧れて、1番側にエヴァちゃんがおって。一時期的にそう思い込んでるだけ、それだってあり得るやん。だって恋とか知らんやったもん。急にこんな気持ちになって顔を見れんごとなって、意味分からん。

「もう、やだぁ……」

どんな顔して話せばいいか分からんし、エヴァちゃんがどう考えとるか、知るの怖いし……。

「あらあら、どうしたんですか? あなたもサボり予定なの?」

目の前が翳る。

目をこすろうとするとハンカチを差し出された。

「……」

「こらこら、ダメよ。目が腫れちゃうでしょ」

知らん人に泣き顔を見られる……うぅ。

「ありがとう、ございます」

「どういたしまして。とっておきの場所があるの」

揺れる髪が視界の端に移る。どうしても顔を見られたく無くて、ハンカチで目元を押さえたままのウチは、手を引かれるままに歩いた。やがて、座ってと言われるまま腰を下ろす。階段みたい。

涙が止まり、ふわりと甘い香りがするハンカチをようかやく手放す。

「落ち着いた?」

「はい」

やっとその人の姿を見る。

ウチよりも少し身長が低くて、くるくるのツインテールが印象的。薄いけど、お化粧してるみたいですっごく可愛い。 幼い顔だから年下かと思ったら、胸元のリボンは2つ学年が上であることを示していた。

「今日は授業サボっちゃおうと思って、1回実家に帰ってまた戻ってきたところだったの」

てことは、お家がご近所なんだ……ちょっと羨ましいかも。

「私も、サボろうかなって思ってて……」

「あと1時間もしたら、登校時間を過ぎて誰にも見つからずに外に行けるわ。これ、一緒に食べましょう」

「え! これ!!」

単純なウチはそれを見た途端に沈んどった気持ちが急上昇。

「わたしのお家はパン屋さんなの。実はこれ、試作品なんだけど。本場では人気らしいって聞いて、作ってみたらしいの」

わあぁ! こんなところでお目にかかれるとは! いや、パンなんて普段食べんし、気づかんやっただけか。

「明太フランスパン。飲み物はお茶しかないんだけど。ごめんね?」

「いえ! ありがとうございます! ちなみにこの明太子って……」

「福岡から取り寄せたらしいわ。どうして?」

「う、ウチ、今年福岡から来たんです! 明太子大好きだけどめったに食べれなくて……」

明太子自体が高いし、変にパパが健康志向なせいで余計に手が出せず。たまにコンビニでおにぎりが買えたらラッキーくらいの、ウチにとっては超レア食材!

ちなみにお菓子は自分のお小遣いでこっそり買ってて大丈夫やったんやけど。見つかっとったら怒られると思う。

「あらそうなのね。さあどうぞ。うちのパンはとっても美味しいのよ」

「いただきまーす!」

んはーっ! さすが明太子! バターの香りもたまりませんな!

「幸せ……♡」

このフランスパンの堅さもクセになっちゃいます!

「そんなに喜んでもらえるなら、新メニューとして出してもらいましょうかね。……あら? 可愛いね、そのシュシュ」

あ、これ。そうだ、髪に結ぼう。汚れるかも。よいしょ。

「昨日出会ったお姉さんが作り方を教えてくれたんです。今日は、これをまた作ろうかなって。作り方を忘れないうちに」

何か考え事でもあるのかじっとウチの頭を見ている先輩。

「あっ、そうだ。お店で作ってもらったんだから、お金払わないと」

「いいのよ。まだ試作品なんだし気にしないで。手芸屋さんなら、駅前にあるSoramiyaがおすすめよ。見てるだけでもすごく楽しいの」

あ、そういえばお店のことまで考えてなかったや。

「ほうあんでふか?」

「手芸好きの友達の行きつけのお店よ。すごく種類が豊富でキラキラしてるの。目的以外のものまで買わないように注意しなくちゃね。他にも何か作ってみたいなら、近くに本屋さんもあるから探してみるといいわ」

どうせ夕方まで戻らんつもりやし、いろんなとこに行ってみよう。よく考えたら学校の外に出ることってまだあんまりなかったな。リトル・ガーデンくらいじゃないっけ? お散歩してみようっと。

「ありがとうございます。なんか、学校をサボるなんてドキドキです」

立ち上がってポケットからペンとメモ紙を取り出した先輩は、階段を机にして何かを書いている。

「たまには必要なものよ。楽しむといいわ。じゃあ、私はちょっと用があるからここで。これはうちのお店までのだいたいの地図。お腹が空いたら是非どうぞ。じゃあね」

手渡されたうさぎのキャラクターが載った紙には丸くて可愛い文字でお店の名前と先輩の名前、それから簡単な地図が描かれていた。ここから近いみたい。帰りにエヴァちゃんにお土産で買って帰ろう。もう少しのんびり食べてようっと。悪い事してるから緊張しとったけど、楽しみになってきた!

手作りのシュシュと先輩のお家のパンをエヴァちゃんに持って帰るんだ。喜んでくれるかな。……キス、また出来るといいな。

お店のネーミングセンスの無さは許して……

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