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ロボサムライ駆ける■第36回剣闘士大会で、早乙女モンドは、『松前闘司郎』としてロボレス大樹山と死闘、殺戮者と呼ばれた。さらに議会護衛のロボ剣士「死二三郎」と刃を交える。

ロボサムライ駆ける■第36回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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第四章 剣闘士■(7)


 剣闘士大会中盤で、総当たり戦になる。

武術ジャンルに関係なく戦う。手慰の興味しんしんタイムだった。


『東、大黒屋どの所属、松前闘司郎どの、西、会津屋どの所属、大樹山どの』


 行司が大声で呼びあげた。

剣術部門と力士部門の本日の人気者同志の対決だった。いやがうえにも、観客の興味は盛り上がる。

 歓声が大阪湾に響きわたった。


 主水は大樹山とがっちりあたっていた。

 大樹山は最初から、主水を殺すつもりだ。

大樹山は、刀をはたき込み、剣はみごとにたたき落とされていた。ついで、さば折りを掛けて来る。


「主水。ここが地獄の一丁目ぞ」

 大樹山は真っ赤な顔をして耳元で囁いた。


「大樹山どの、どうしても、拙者を殺すつもりか」

「あたりまえじゃ、かわいい舎弟の仕返し、せんでなるものか」


 主水は逆にロボットレスリングで鍛えた技で返していた。

「むぐっ、貴様、一体、どこで格闘技を」

 大樹山の表情には主水に対する恐怖の色が見えた。


「アメリカでのう、鍛えておった」

 落ち着いて主水は答える。

「相手に取って不足なし。ここが死に場ぞ、主水」


 アメリカのNASAにいたころ、主水はロボットプロレスリングから誘われたこともあるくらいの腕前なのだ。


 主水は、大樹山の頭を、体でがっちりつかみこんだ。大樹山も両腕で主水の腰関節がきしむ程、締め上げている。

 場内の空母でも、観客は息を飲んで試合を見ていた。死闘であった。


 戦いをするものの勢いが、観客にも伝染していた。


機械の体がきしんでいる。ばきばきと音がした。

主水の腕もとから、機械の部品の残りがポロポロと甲板へ転がり落ちた。


 主水が、とうとう大樹山の頭を潰していた。「おおーっ」

 観客からどよめきが起こった。ゆっくりと主水は、大樹山の体を横たえる。観客総立ちであった。


大樹山の首から上はぐしゃぐしゃに潰れ、跡形もない。

 この試合の後、主水は『殺戮者』のあだなを貰う。


    ◆

 後半戦にはいっていた。また部門ジャンル別の戦いとなる。


「もしや、議会のおりの、レイモン殿あずかりの、狼藉の御仁ではござらぬか」

 主水の次の対戦相手がそういった。

「そういう、貴殿は」


「死二三郎でござる」

「貴公は、たしか、黒こげになっておられたのでは」


「いや、修理されました。この剣闘士試合のために。貴公こそお名前が『松前闘司郎』となっておられるので、わかりもうさなんだが、それで拙者が切り落とした左手はいかがいたした」


「この剣闘士になる前は、地下坑道で働かされておりましたゆえ、修理してくれました」

「それはよかった。それでは存分にお手合わせいただきたい」

「のぞむところ」

「死二三郎殿、今度はあの議会のおりのように参らぬ」

 

主水は青眼に構える。

「それは私も同じこと」


 二人の刀は動き始める。が、刀の動きがあまりに早く、観客は刀が見えない。おまけに死二三郎も、主水もすばやく動く。観客の目にも止まらぬのである。手早に働きながら、主水は話しかける。

「中々の腕前よのう、死二三郎殿」


「貴殿こそ。このような宿敵にあえて、うれしいぞ」

「私も同じ考えじゃ」


 しばらくは刀を交え、静止する二人である。突然、主水の目に光が射した。光線は視覚機能から頭脳へ入る。何かの信号が、この光線に含まれている。よろける主水。隙に乗ずる死二三郎。

「一体誰が」


 おそらくは死二三郎を擁する都市代表の仕業であろう。

が、光に目が眩んでいる様子に死二三郎は気付いてはいない。

「ええい」

 すばやく死二三郎の剣先から逃れる主水。死二三郎は不審に思う。


「主水殿、いかがなされた。拙者から逃れられるのか」

「そうではござらぬ」

 主水は目を瞑った。だらりと両手を下げる。隙だらけである。


「その姿は一体、私を嘗めておられるのか」


 死二三郎はあまりの姿に怒り始めた。主水は無言である。

「ちぇっすと」


 死二三郎は怒りに駆られて切りかかる。

怒りのエネルギーが、死二三郎の電子頭脳の処理をわずかに狂わせる。


 死二三郎が上段から振り下ろす刀に対して、逆に主水は飛び上がる。かなりの上空から、勢いを込めて、剣を振り下ろしていた。


主水の剣は、死二三郎の頭から背中にかけて切り裂き、留まっていた。「うっ」


 死二三郎は、甲板のうえに頭や背中から生命液を飛び散らかして、どうと倒れる。顔を横にかしぎ、言った。

「主水殿、見事じゃ」

「いや、貴公こそ」

 

主水はゆっくり目を開く。主水の開いた目には、まだ何かの光が当たっていた。

「その目への光りは」

 死二三郎は、様子のただならぬことに気付く。

「いや、何でもござらん。波の照り返しでござろう」

 主水はごまかそうとする。


「くっ、何たる卑劣な真似を。我が都市連合も。我輩ここで恥かき申した」

 死二三郎は、この卑劣な手段に気付いて悔やむ。

「主水殿、お願いがござる。拙者、メインボディの爆発装置が作動する」

 死二三郎は、苦しい息の下、恐ろしいことを告げる。


「なんと」

「拙者、不負の男と呼ばれましたならば、そのような処理をされておりまする」

「して、願いとは」

 主水は死二三郎の思いを聞こうとする。


「どうか拙者の左腕をお使いくだされい。取り外して貴公の手にしてくだされい。拙者が切り落とした左腕のかわりにお使いくだされい。拙者死二三郎の生きていた証しとして貴殿の左腕として、お使いされたく」


「死二三郎殿、有り難く頂戴いたす」

 死二三郎は、主水にほほ笑んで事切れた。主水は死二三郎の体を拝んだ。その後形見として左腕をはずす。


主水が後に下がって、しばらくして死二三郎の体は爆発した。

(続く)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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