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ロボサムライ駆ける■第34回 剣闘士大会のために早乙女モンドは西日本『ロボット道場』へ、トレーナー『吉野』は、モンドを潰そうと画策。また因縁の相手、ロボレス大樹山とも対峙する。

ロボサムライ駆ける■第34回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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第四章 剣闘士(5-2)

    ◆

 新平野にある大阪市の中央に、その建物『ロボット道場』は設けられていた。まるで円盤が着陸したように思える。大きい。西日本都市連合議場と同じ広さ、あるいはもっと広いかもしれない。


 剣闘士道場の中に入った主水は、驚いた。これは東日本以上だと思った。巨大なアスレチックジムが数十個ある感じなのだ。


 ジムといっても人間のように筋力をトレーニングによって増強するわけではない。反応速度、ジョイント部分の潤滑、電子頭脳のシノプス反応、計算速度、試合の分析・解釈、試合例を、電子頭脳に読み込んで行くのだ。

 廊下にはずっーと、剣闘士大会の優勝者の立体写真が並んでいた。


「これは…」

 ゆっくりと、主水はその顔を見ていく。

 松前の名前で登録されている主水はトレーナーに尋ねた。

「思われるとおり、優勝者だ」

 トレーナーはにこりともせず答えた。

「今、彼らはどうして…」

「それは…」

 案内するトレーナー・ロボットは言葉を濁した。


「残念ながら、ロボット廃棄処分になったとか」

 しゃれを言い、事実を知ろうとした。


「そういう訳ではござらん。皆データバンクに生きてござる」

「データバンクに生きてだと」

 主水は悲しくなった。つまりは優勝者はだれも生きてはいないのだ。


     ◆

「戦いとは、対戦相手の息の根を止めることじゃ」

 主水の前にいる老剣闘士トレーナー『吉野工作』が言った。


 怜悧な、あるいは無表情とも言える顔付きで、白髪である。作務衣を着ていた。体にむだな動きがない。動きが流れるようである。

「吉野様、ではいかなるときも、対戦相手を殺せとおっしゃる訳ですな」

 主水は勢い込んで尋ねた。

「そういうことじゃ」


「トレーナー吉野殿、何のために相手を殺すのですか。同じロボットなのに」

「ほほう、松前殿は、そのような基本的なこともおわかりにならぬのか」

「さようでございます。私め、主人の大黒屋様から剣闘士になれと指示されただけで…」


「ロボットの戦いは、持ち主の自分の名誉のためじゃ」

「名誉ですと、人間の名誉のためだけですか」


「さようじゃ、松前殿、我々が存在できるのはそのため。人間のために死ぬことは当たり前じゃろう」

「それは足毛布博士の公理でございますな」


 足毛布博士の法則『ロボットは、人間の利益のために死ぬべきである』


「そうじゃ。どうやら、合点がいかぬようじゃな」

「吉野殿。我々は、人間に作られたとはいえ、生命体でござる。つまり新しい個性でござる」

 主水は力み、主張する。

「いやはや、危険思想じゃのう。足毛布博士が聞かれたら、どう思われることか」

 吉野は頭を振りながら暗い顔をする。


吉野は考えていた。

『このロボットは危険思想の持ち主じゃ。試合中に潰してしまわねばならぬ。後で競技委員会に連絡しておくべきじゃ』


 実際、同じような質問をしたことのある主水であった。

 主水が足毛布博士の元から逃亡したのも、その議論が原因なのだ。



 主水は、深い記憶の層から、何かが浮かび上がって来るのを感じている。


 霊戦争以前に、「ロボリンピック」という競技大会があり、ロボット同志がおのが技量を競ったことを。


そのメモリーはすべてのロボットの基本フォーマットの中に残っていた。


それはそれはすばらしいロボット同士の競技会であった。ロボットはロボット自身の名誉のために戦ったのだ。


その時、力士型ロボットの一人が、主水の側まで近づいてきた。


 彼は剣闘士トレーニングセンターの一室にいた。大きい。二メートルくらいだが、体重は四百キロはあるだろう。


「俺は大樹山よ。主水、覚えているか」

 急にそいつは話しかける。この力士は、主水の本名をしっていた。

「大樹山殿、申し訳ないが、とんと」

 主水は首を振った。

「貴様は俺の舎弟を殺したのよ」


 主水の記憶メモリーバンクの中で、何かがくるくるまわっていた。

「そうか、あのとき、貴公が…」

 主水は、徳川公が臨席される天覧大相撲大会に付き添いとして参加したことがある。


 そのおりのこと、ロボレスの唐海が、大相撲場所に殴り込みをかけてきたのである。


 唐海はロボ相撲の昇進試験に問題ありとして、ロボ相撲を去り、ロボットプロレスであるロボレス協会に所属を変わったものであったが、意趣返しのためこの天覧相撲大会を混乱に陥れようとして、ロボット相撲ホールに暴れ混んできたようだった。


 そのとき、主水は徳川公を守るため、唐海を切り殺していた。

「それでは大樹山殿は、唐海関の兄弟子であられるか」


「そうじゃ、剣闘士大会のおり、楽しみにしておるぞ、主水」

 どすの効いた声でしゃべり、大樹山は、どすどすと足音もはでに、去っていった。

「この大樹山とは戦わねばならぬのか」

 主水は思った。


何という因縁輪廻の中に生きているのだ。


もう一つ心配なことがある。

この試合を見れば、足毛布博士が気付くかも知れぬ。

さらに、ロセンデール卿がいればもっと悪いことになろう。


(続く)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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