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ロボサムライ駆ける■第32回徳川空軍の飛行船は、早乙女モンドを助けるために妻マリアを載せて出撃するが、西日本のロボ忍者が、巨大な「たこ」に載って接近、妨害工作を行う

ロボサムライ駆ける■第32回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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第四章 剣闘士(5-1)

「姐さん、よい眺めですぜ。さすが徳川様の空軍飛行船てわけだ」

 鉄が飛行船の窓から眺めている。


「まあ、鉄、いい年をした大人ロボットが、それほどよくはしゃげるものですねえ。飛行船に乗ったというくらいでねえ」

「だって、姐さん、私しゃこう見えても、空を飛んだのは初めてなんですよ」

「さようですか、よく高所恐怖症じゃなかったことですね。それに私たちは、これから物見遊山に行く訳じゃないのですよ。西日本のロボットと、ひょっとしたら戦わなきゃいけないんですからねえ」


「戦いですって。ああ、胸が高鳴りまさあ。おまけに姐さんの前で、いい格好ができるなんて、最高じゃありませんか」


「鉄さん、あなた、ひょっとして、私に惚れてる訳じゃないでしょうね」

「ね、姐さん。何を言い出すんですか。姐さんがだんなの内儀だってのはよくわかっていまさあ。ははあっ」

 と笑いでごまかす鉄。


「そうですか。それならいいんですけれど。あなたのはしゃぎの一因は、私と旅行できるからではないかと考えましてね」

「そりゃないですぜ、姐さん」

 内心ドキッとする鉄。といいながらも、顔を赤らめる鉄であった。


「大変です」

 ドアをノックして、徳川空軍の佐久間大尉が入って来る。


 空軍の軍服は空色のモンペ服の上に陣羽織を羽織っている。肩章には階級が示されている。また、背中には三つ葉葵が白で染め抜かれていた。


 佐久間は面長で彫りの深い顔をしていた。どうやら徳川公廣の親戚筋らしい。


「どうかいたしましたか、佐久間大尉」

「現在、本船は西日本と東日本の境界近くまで飛行してきておりますが、敵が現れました」

 佐久間は顔を高潮させていた。


「敵だって、そいつはいけねえや」

 鉄が起き上がり、片腕をまくりあげた。

「気の早い人ですね。空のうえで殴り合う訳じゃないんだから、なんですか、その腕まくりは」

「すみません、つい、地の上の戦いと間違いまして」

 鉄はぼりぼりと頭をかいていた。


「ともかく、お二人とも飛行船操縦室のモニターをご覧ください。どうぞこちらへ」

 佐久間は二人を案内する。二人は佐久間に従い、通路を歩む。


「鉄さん、うれしいでしょう。コックピットを見せてくれるんですからね」

「そりゃ、うれしいでさ。願ったり叶ったりとはこのことだ」

「鉄さん…」

 いいながら、急にマリアは立ち止まり、鉄の顔を見た。


「何ですか、姐さん」

 何事かと期待してマリアを見返す。

「では戦いが始まったら、あなたの男っぷりてものを見せていただけるのでしょうね」

「がってんしょうちのすけでえ」


 佐久間大尉は鉄の様子を見て首を竦めた。

こいつはだいじょうぶかという顔付きである。


「どうぞ、こちらです」

 

ドアを明けた。コックピットに入る。たくさんの徳川軍の空軍兵士が働いている。

「うわっ、思っていた以上に広いや。ねえ、姐さん」

 鉄が突拍子もない声を張り上げて、片手で額を打った。


「うるさいですわねえ、私はヨーロッパから日本へ来たとき、小型気球に乗ったり、飛行船に乗ったりして、うんざりしているのです」


「どうぞ、あれが敵の姿です」

 佐久間大尉が操作卓の上にあるモニターを指し示した。


「何だ、ありゃ」

「どうやらタコのようです」

 佐久間の間の抜けた返事である。

「タコだって、タコってのは海の底にいりゃいいものおよ」

 鉄は強がっていた。


軽量で張力のある高密度繊維で編み上げられたタコが、境界線上にずらっと揚げられていた。西日本都市連合があげているタコだ。上空からの侵入を防ぐためらしい。


「姐さん、何かタコの下に見えますぜ」

「何かの重しでしょうね。見せていただけますか、佐久間大尉」

 その物体に飛行船の監視カメラがズームした。


「これはひどいですねえ…」

 思わず顔の表情が強張るマリアだった。

「こいつはあんまりだ」


 鉄も表情が変わった。


 国境から逃げようとしたロボットの首が、各々のタコの飾りにつけられているのだった。


「数枚のタコには、どうやらロボットが乗っているようです。しかもロボ忍です」

 佐久間大尉が告げた。

「おもしろいじゃないですか」


「たぶん、あやつらは、この飛行船の気球部分に爆発物を飛ばすつもりでしょう」

 佐久間が述べた。

「それじゃ、あやつらに、火器じゃなく、火気厳禁と言ってやらなきゃなりませんねえ」


「鉄さん、あなた…何を。私の怒りが爆発しますわよ」

 たしなめるマリア。

が、しゃれを言った鉄に、コックピットの全員から、冷たい視線が投げ付けられた。

「へい、どうもすみません」

 縮こまる鉄。


「さあ、ここが正念場ですよ、鉄さん。あなたに働いて貰いましょう」

 鉄にとっては目が覚めるような言葉だった。「ええ、姐さん、私が何を」


「こちらもタコを飛ばすのですよ」

 にっこりしながら言うマリア。

「それで、まさか…」


 悪い予感が鉄の頭をかすめる。眼を白黒させる。


(続く)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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