表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/63

ロボサムライ駆ける■第21回霊能者、落合レイモンは、西日本都市連合の議場で訴えていた。 「新しい日本は、心柱(しんばしら)によって統一されるべき。その場所は西日本で、すでに発見されているはずです」


ロボサムライ駆ける■第21回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/ http://9vae.com http://visitjapan.info


■第3章  (9)

 それは巨大なガラス箱に見える。

 西日本都市連合の議場は、京都郊外にある新京都ドーム都市の中に造られていた。


 この議場全体は透明強化プラスチックフレビレンガラスのドームで覆われている。中から近畿の外界がよく見えた。西日本の各市を代表する代議員が、--各市の場合、市長が多いのだが、--その一人一人がこの議場に送り込まれていた。


 近畿新平野がフラットだけに、ドームからはすべての町々がよく見える。レザー光線がよく届くのだ。


 各議員は、丁髷の上にヘッドベルトを巻いている。その後半分にレザー光線集約装置がついている。レザー光線は各都市の市議会との連絡ができる。直接アクセスができるので、嘘の発言はできない。


 各都市の市章が、各々の羽織りに鮮やかに描かれている。

 各々武士階級の出身者が多い。がしかし、腰の大小は議会場内の持ち込みはご法度となっていた。


 いよいよ、全国都市会議が開催されたのだ。 が、いかんせん意見の一致するところは少ない。


 二十年前に起こった「霊戦争」の影響で、日本は東西に大きくわかれていた。ロボット奴隷制の西日本と、ロボット自由主義の東日本である。


 霊戦争のおり、東日本では人間が数多く亡くなり、社会のシステムとして、ロボットに人権を与えなければ立ち行かないエリアとなっていた。それゆえ、統一国家としての日本の態をとるのは非常に難しい。それは「霊戦争」以後、どの国も同じであった。


 落合レイモンは、東日本を代表してこの会議に出席している。


 東日本側の立場としては、統一を望んでいるのが事実だ。現在の関が原関所により人的交流、ロボット的交流が阻害している現在では、日本国家としての発達は望めなかった。加えて、レイモン、あるいは、徳川公国の徳川公廣にとって、心を曇らせているのは、ロセンデールの動きである。


 ロセンデールは神聖ゲルマン帝国の後援を受けて、日本へ来ている。


 神聖ゲルマン帝国は、日本が再び統一国家として国力を充実するのを望んでいない。極東の分裂国家として存在してもらう方が、有り難かった。つまり、支配しやすいと言う訳だ。



 落合レイモンは、議場で訴えていた。


「日本は、心柱しんばしらによって統一されるべきです」


「その心柱というのは、実際どこに存在するのだ」

 議場のあちこちから罵声が飛んでいた。レイモンは声をおとした。


「西日本の方々、真実を申し上げましょう。その場所はすでに発見されておるはずです」

 レイモンの顔は自信に満ちている。レイモンのこの発言の後、会場は一瞬無言となり、それから蜂をつついた騒ぎとなった。人の頭があちこちしている。熱気がドームを包む。

「どういうことだ」

「説明しろ」


 がなり声がつづいた。


 続けてレイモンは、指で指し示しながら


「西日本都市連合の議長、水野栄四郎殿がすべて、ご存じのはずだ」

 『議長団席』の一角に占める水野の方に、人々の眼が集まる。議員の一人が言った。


「本当ですか、水野様」

 水野は二メートルもある長身を急に立ち上がらせた。場内は水を打った静けさとなる。皆聞き耳をたてているのだ。


「諸君、落合レイモン殿の諌言に惑わされてはなりませぬ。レイモン殿は、我々西日本の纏まりを壊すためにこの会議に派遣されてきたのだ。我々が、その心柱を探すために何年かけてきたと思う。ここで説明しておこう。ロセンデール卿に心柱を探すことをお手伝いしていただいておるのは、卿が優れた霊能力者であり、かつて各国の心柱の幾つかを発見なさっておるからだ」


 水野は断固とした口調で、すべてを締めくくった。会場が落ち着く。が、再び、


「まて、水野殿。ロセンデール卿は各国の心柱を発見することによって、その国を神聖ゲルマン帝国の支配地にされなかったか。ロセンデール卿こそ、新しい帝国主義のまわしものであるこに、諸君は気がつかれぬのか」


 レイモンは言い切った。再び、爆弾発言である。

「誹謗だ。誹謗だ」


 議席のあちこちから声が上がり、レイモンに向かって人々がこぶしを振り上げ殺到してくる。議会はパニック状態になる。


「いかん、主水。レイモン様をお助けしろ」

 夜叉丸は立ち上がった。議場の控室にいた主水の耳のレシバーから、レイモンの付け人夜叉丸の叫びが響いた。


「レイモン様を無事に議場から脱出させよ」

「が、夜叉丸殿。議場警備員たちに任せた方がよいのではないか」


「馬鹿者。あの議場の暴徒の中に、ロボ忍が交じっておったらどうする。あやつら、レイモン様を誘拐し、心柱の利用にレイモン様の力を使うつもりだ。わたしの後に続け」


「道を開けろ」


 主水は叫んで、飛び出して行った。


「こやつは」

議場の警備員が罵声をあげる。


 議会は混乱状態だ。そこに主水が飛び込む。

「ロボザムライだ」

(続く)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/ http://9vae.com http://visitjapan.info



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ