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ロボサムライ駆ける■第20回★徳川公国、旗本ロボット、早乙女主水(もんど)は生みの親である京のアシモフ博士をおとづれる

ロボサムライ駆ける■第20回★

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/ http://9vae.com http://visitjapan.info




■第3章(8)


 主水たちは宿泊所である新京都ホテルへ入った。


 この新京都ホテルは、鯱をかたちどった五十階建ての建物になっている。

 

レイモンの許可を得て、主水は京都市内へ出た。

使い番ロボとして知恵を連れている。


主水の誕生登録場所は、京都なのであった。


 レイモンについてきた主水の目的の一つが、自分の生みの親、足毛布博士に会うことであった。

誰も気づいていないのだが、時折主水は病気が出ることがある。この治療について、ぜひとも相談する必要があるのだ。


 突然、意識が空白になるのだ。


足毛布博士なら、この理由を知っているだろう。


 この主水の病気は、マリアもびゅんびゅんの鉄も、きずいてはいない。


 急に訪問して、博士にどのように挨拶してよいものやら、主水は迷っていた。


 実はすでに十分以上も、広大な足毛布博士宅前にたたずんでいるのだ。


「こんちわー」でもなく、

「いやーどうもおひさしぶりですー」てなわけにもいかず。


そう軽く言う訳にはいかない。


 ともかく、足毛布博士が、主水を裏切り者と思っていることはまちがいないのだ。


足毛布博士の保護から逃げたことは事実だ。


 主水自体のメインボディは、実はアメリカNASA製である。


対惑星探査用ヒューマノイドであった。


 NASA特別ロボイド工学研究所で制作中、足毛布博士が主水をつれて逃げたのだ。


ちょうどそのおり、あの霊戦争が始まって、地球上のすべての観念が少しばかりシフトした。


 足毛布博士は、NASAのロボットに日本精神を吹き込んでいた。それゆえ、サムライロボットとして。主水が再生され、誕生したわけである。


 徳川公国、旗本ロボットに迎え入れられたのにも一悶着があった。


 現在でも、足毛布博士は、主水を自分の手にとりもどそうとしている。

 

主水としては、今、自分の身に起こっている体の不調の調整がどうしても必要であった。


それも誰にも知られないうちに。どうしても足毛布博士に会う必要がある。


意識を高揚するいわゆる強化剤が、あるはずなのだ。


ついに、意を決して門の呼鈴を押した。


 門にあるポールのモニターがついた。

『どちらさまで』

 コンピュターグラフックスでかかれたキャラクター顔がロボボイスで答える。


「足毛布博士にお取り次ぎいただきたい。拙者は、早乙女主水と申す者でござる。そういっていただければわかるもうす」


『足毛布博士はご在宅ではありません』


CG顔は愛想なくそう答える。

もっともCG顔に愛想を求めても無理な話だ。


 おかしい。

 主水の第六感がそう告げている。


 生物体の反応がないことに主水は気付く。


加えて、恐るべき悪気が屋敷に残っている。

この悪気は、何だろう。主水と知恵は、屋敷内へ忍び込むことにした。

「いくぞ、知恵」

「がってんだ-い」


 二人は裏手の壁からジャンプした。瞬時、二人の体を電光が包んだ。泥棒避けの機構が作動したのだ。

「あいたっ-たー」知恵が叫ぶ。

「あいたいのは、わしじゃ、知恵」

「違う、違う。か…、体が…あいてて」

「そうじゃ、わしはててごにあいたい」

「痛い、痛い……。そのシャレに腹もいたい」


 何とか着地する。が一難去って……


 突然、声がする。ロボットドーべルマン犬だった。


 主水は、飛び込んで来る犬をつかまえる。そして犬のある所を強く押した。瞬時、倒れるドーベルマン。


 犬の首にある生命点を圧し、眠らしたのだった。


 邸内に入った。

 博士の研究屋は荒らされていない。

が、何かの想念が残っている。


どうやら、足毛布博士は、いずこかにつれさられたらしい。


ロセンデールだろうか。


が、なぜだ。主水は何かの手掛かりをさがそうとする。

「主水のおじさん、何かが落ちてる」

「拾い物はお前もだ」

「何を言ってるの」


 知恵が拾ったものを手に取ってみる。


「これは一体、何なの」


 知恵が尋ねる。それは六角形のペンタグラムだった。

「これはユダヤ教の印だが」

 主水は首をひねる。


「足毛布博士って、ユダヤ教徒だったの」

 知恵が、主水にも思いがけない質問をした。


「いや、そんなことはないはずだ。博士は、由緒正しき仏教徒だったはずだ。なみあむだぶつ」

 といいながら、片手拝み。


が、はたしてという恐れが主水の心の中に芽生えている。


 今一番の主水の恐れは、足毛布博士がいないことだ。


博士がいなけければ、意識をはつきりさせる強化剤の調合法がわからないのだ。家に来た意味がない。


 一体どうすればいいのだ。主水は悩んだ。

「この人は誰」

 机の上に飾られていた立体写真を知恵は持って来ていた。


「お前、泥棒なれしておるのう」

「そんなにほめられたら、てれちょうよー」 知恵は頭をかいた。


「写真の人は、主水のおじさんじゃないの。そっくりじゃない」

 

が、主水のはずはない。違っている。服装が霊戦争以前のものだ。その男は、主水と同じ顔をしているが、ロボットではなく、正真証明の人間だった。

 主水には写真を撮られた記憶はない。


 もし、この男が死人でいないとするならば、足毛布博士の法則に触れる。


 足毛布博士の法則『現在生存している人間の顔をコピーしてはいけない』


 写真をよくみる。主水の生まれる前の日付が写真に焼きこまれている。が、その写真を主水は見た記憶がないのだ。


足毛布博士には、主水と同じ顔をした息子がいたことになる。が、そんな話は聞いていなかった。


 早乙女主水の顔は、息子に似せて作られたのだろうか。はたして博士に息子が……。考え込む主水であった。


 ロボットの顔は、作り手の好みによって作られているのだ。ある者は自分の昔そっくりに。ある者は死んだ恋人に。


 二人は行方をしる手掛かりなく、博士の邸を去った。

(続く)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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