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事故ったようです。

前回のあらすじ、魔法陣で異世界転移中に事故った。

 


 気がつくと、意識が沈む前の(おぞ)ましい景色とは対照的に、(うら)らかな日差しに包まれた草原に倒れていた。


「……っ」


 足首のあたりに捻挫のような痛みが訪れた。あの穴に落ちたときに、足首を捻ったのだろうか。


 立ち上がって周囲を見渡す。足元には自転車が落ちている。自転車は何か衝撃を受けたのか所々変形していた。乗れないことは無いだろうが、雑に扱うと壊れてしまいそうだ。あとは、どこまでも草原が広がっているばかりで、人気(ひとけ)はなく建物なども見られない。


 カイトは、無事だろうか。恐らくカイトは異世界に転移してしまったはず。ただ、途中で事故にあったので、俺は元の世界にいるのかカイトが飛ばされた異世界にいるのかはわからない。取り敢えず人を探してみようと自転車をひいて歩こうとすると、何かが近付いて来るのが見えた。


 遠過ぎて見えないが、人か? いや、人にしてはシルエットがおかしい。サッカーボールみたいな形と大きさだ。多分、小動物だろう。


 段々、姿が(あら)わになっていく。……半透明で青い。そんな生物、いただろうか。動物園に行った記憶やテレビを見たときの記憶を辿(たど)るも覚えがない。観察を続けると()ねて移動していることがわかった。足の機能がないのだろうか。


 目の前に来て、ピタリと動きが止まった。正体は、RPGのゲームでよく見かけるスライムだった。目や耳などはなく、化学の授業で作ったときのようなスライムだった。


 間違いない、ここは異世界だ。ということは恐らくこのスライムは魔物なのだろう。殺される前に倒しておくべきか。


 いや、そんな殺傷能力があるようには見えないし、あるゲームでは魔物は仲間になることがあった。見た感じ敵意も無さそうだし、もしかしたら仲間になるのかもしれない。


「おーい、スライム」


 取り敢えず呼びかけてみる。ピクリと青い身体を震わせると俺の足にすり寄ってきた。あ、意外とかわいいかもしれない。触ってみると、そんなにネバネバしていない。むしろゴムみたいで弾力が凄い。つついて見ると倍以上の力で押し返される。


 つついたその瞬間、スライムは俺から離れると地面にひしゃげた。そして次の瞬間には地面に反発するように押し戻していた力を跳躍に回し腹部に攻撃してきた。衝撃は思ったよりも強く、俺は5メートルくらいぶっ飛ばされた。


「ぐっ……この野郎……」


 反撃するためにすぐさま立ち上がって前を睨むと、既にスライムは逃げていた。やり場のない怒りを抱きつつも腹をさすった。


 ……痛い。ゲームで言うなら1ダメージとかそこらなのだろうが、気を抜いたら胃の中をぶちまけそうなくらいには痛い。それはそうだろう。俺はきっとこの世界では村人B並のステータスなのだろうから。


 今度スライムを見つけたら自転車でぶん殴ってやろう。そう決意して、カイトを探すために歩き始めた。まずは街を探す。そこで情報を集めるのだ。もしかしたらこのわけがわからない世界から帰れるかもしれない。……帰ったところで、特にしたいことはないけれど。


 異世界(ここ)では見つかるだろうか。俺の、したいこと。



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