記憶の世界
「ふぅ、美味かった。」
「ん、おいしかった。」
食事は元の世界と同じようなもので、とても美味しかった。
「これでやっと落ち着いて考える事が出来る。」
ずっと立っているのも疲れるので俺はベッドに座り込んだ。部屋は二人用なのでまあまあ広くベッドも二つあり、奥にはシャワールームもあった。
一息ついたところで森での出来事を思い出していた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ヨミとともに光に包まれ意識を失ったあと気が付くと目の前には本棚があった。
「ここ、どこだ?さっきまで森にいたはず?」
「ここ⋯は、マスターの記憶の世界」
声のした方を見るとそこにはヨミがいた。マスター?記憶の世界?
「マスターて俺の事?」
「うん、ご主人様がよかった?」
「えーと、そういう事じゃなくて」
「だって、マスターはヨミの飼い主だから。」
あぁ、そういう事か。
「ヨミ。俺の事は普通に名前で呼んで。そのほうが嬉しいし。」
「んっ、分かった。」
そう言ってヨミは頷いてくれた。よかった。そういう風に呼ばれるのは嫌いではないけど、誰かにマスターと呼ばれるとこ見られたら面倒くさそうだし⋯⋯
「ありがとう。そういや記憶の世界てどういう事?」
これでやっと気になっていた事が聞ける。
「ここは、夕耶の記憶、知識を、視覚化したところ。」
ならこの本棚が俺の持っている知識か?
「あれ?じゃあヨミはなんでここに?俺の知識ならここには来れないんじゃないの?」
「わたしの持っている知識の一部を、見れるようにした。そこ、扉あるでしょ。」
あ、本当だ。なんで気付かなかったんだろう?
「じゃあ、そこで調べて。」
そう言うとヨミは光に溶けるように消えた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「なぁ、ヨミ。」
いつの間に移動したのかヨミは俺の隣に腰掛けていた。
「なに?」
「記憶の世界を使った後、時間があまりたってなかったんだけど、どうして?」
ふと、疑問に思ったので聞いてみる。
「あそこは時間の流れが違うから。」
やっぱりか⋯
「どれぐらい違うか分かるか?」
「たぶん、こっちよりは早いと思う。」
うーん、よく分からないって事か。
とりあえず必要な情報は森の時にもう手に入れたから、パンフレットにも目を通しておくか。
パンフレットには指輪や冒険者カードの使い方、街の地図が載っていた。
冒険者カードには身分証の他にも通帳としての機能もあるらしい。
次に指輪。これは指輪を着けている方の手を空中で二回振ると目の前に、ゲームでよく見るステータス画面の様なものが現れる。内容は見たまんまで自分の身体能力を可視化したものらしい。
ここで俺のステータスを確認してみる。
《不知火 夕耶》LV.1
ステータス
筋力 D+ 敏捷 C
持久力 E 耐久力 E
魔力 F 魔質 SSS
魔法耐性 C
技能
【記憶の世界】 【????】
スキル
えっ?一つランクがおかしいのがあるんだけど⋯
一般人の平均値がEという事なので、俺のステータスはLV.1にしては高い方の様だ。
どうやら記憶の世界は技能扱いらしい。もう一つ技能があるみたいだが、まだ使えない様だ。レベルが足りないのか、他に何か条件があるのかもしれない。スキルは何も表示されないのでまだ持っていない様だ。
そういや、魔質って聞いたことがないな?
「なぁヨミ。この魔質ってなんだ?」
自分のステータス画面をヨミに見せ聞いてみる。
「魔質?それは、自分の魔力の純度。これによって同じ魔法でも個人で威力とかに差がでる。」
そういう事か。魔法の詳しい事は明日分かるだろう。
なんでこんなに魔質が高いのか気になるが、考えても分からないので、そろそろシャワーを浴びて寝る事にする。
だがここで問題が起こる。
「なぁヨミ。なんでついて来るの?」
「いつもみたいに洗ってくれるんじゃないの?」
そう。前の世界では俺がヨミを洗ってあげていた。だって猫だったし⋯⋯
だが今は違う。16歳と14歳の男女が一緒にシャワーを浴びる。
うん、だめだろこれ。