獣耳少女がいました
身体を包む温かな日差し。前髪を撫でる風がとても心地よく、俺――
不知火 夕耶 は、先程までの光景を思い出していた。
辺り一面の瓦礫とその中心にぽっかりと空いた空間にたたずむ自分。そして化物を見るような目で自分を見つめる視線。その事が自分のしたことを言外に語っていた⋯⋯
その事を思い出すとともに徐々に意識がはっきりとしていく。
「ここ、どこだ?」
周りを見渡して見ると、そこには人為的な建造物は全くなく、明らかに現代日本ではない。辺りには木が生い茂っており、俺と少女のいる所だけがひらけた空間になっていた。
⋯⋯えっ?少女?
そして少女を見てまた驚いた。
年齢は十代前半ぐらいだろうか、肩ぐらいまであるふわふわした白髪をうしろで一つに束ねており、眠たげに伏せられていたが、その両眼は透き通るような赤だった。顔立ちは整っており、まるで人形のような美少女だ。だが問題はそこでは無い。少女の頭上にそれはあった。いや、生えていたというべきか。それは、ネコ耳だった。コスプレに使われるようなパチモンではなく、正真正銘、本物のネコ耳だった。
「⋯⋯起きた?」
あ、こっちに気がついた。ヤバイ尻尾がピコピコ動いてて超可愛い。尻尾あったんだ。⋯⋯じゃなくて、
「えーと、君は誰?」
俺の知り合いにネコ耳はいない。ついでに尻尾がある人もいない。
「⋯⋯覚えて、ないの?」
そしてその目は悲しげに伏せられてしまう。
まずい、な、なにか言わないと!
「君みたいな可愛い子、会った事があったら絶対覚えてるよ!」
それは間違いない。ネコ耳の少女なんて忘れるわけがないだろう。
「何か思い出せるようにヒントもらってもいい?」
すると少女は首をかしげ考える素振りをした。
「⋯⋯ん、と、一緒に、おふろ⋯入ったりとか?」
えっ?
「⋯⋯あと、一緒に、寝たり、とかした⋯よ?」
えっと⋯今なんて言った?一緒にお風呂や寝た、だと⋯⋯
「⋯⋯この、リボンの、こと、も⋯わすれたの?」
そう言うと少女は髪を束ねていたリボンをほどき、俺に見せてきた。
「その、リボンは⋯」
あいつのリボンをどうして?まさか⋯⋯
「お前、ヨミか?」