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プロローグ
今も傷口からは血が流れ出ている。焼けるような痛みの中、声が聞こえた。
『⋯⋯ねぇ、ねがい、とか、ない⋯の?』
聞いたことの無い声。そのことが手放しかけた意識をかろうじてつなぎとめた。
「⋯⋯出来る⋯なら、もっと、普通に⋯生きた、かった。」
こんな時だからこそ、やっと口にできた自分の本心。
『そんな、こと⋯で、いいの?』
あぁ。例えば、金や権力があってもそれが何になる?そんな物よりも、俺は⋯
『やっぱり、おもしろいね?』
身体から力が抜けていく。焼ける様な痛みも、もう既になかった。ついに時間が来たということが嫌でも分かる。
『⋯⋯じゃあ、待ってるね』
薄れゆく意識の中、聞こえたこの声は、誰だったのだろう?