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アフターレター1:姫凪こよみ-2

私はまだ、遙ちゃんのことが好き。愛してる。だから、他の誰かを好きになったり、愛したり、気にしたりしない。

と、思っていたのかな。

晩御飯を食べ、お風呂に入って、パジャマに着替えた私は、ごろんとベッドの上に転がった。

そして、私は私のことを考えた。

私の気持ちはーーーーいま、思っている気持ちと持っている気持ちは、ホンモノなのだろうか?もし、これがニセモノだったら、ホンモノの私の気持ちはどこ気あるんだろう。

あの日ーーーー遥ちゃんの葬儀の日に、燃やしちゃったのだろうか?あるいは、置いてきたのだろうか?

『此方くんは、それを望んでるのかな?』

紬ちゃんの言葉が、私に中で木霊する。

それくらい、あの言葉は私に大きな衝撃を与えたのだろうか。

「わからないよ……」

ポツリと呟く、私。

どんなに考えても、どんなに悩んでも、わからなかった。

私の気持ちも。

遙ちゃんの思いも。

そして、紬ちゃんの言葉に対する答えも。

なにも、わからなかった。

「一人よりはーーー」

腕を伸ばし、サイドテーブルの上の充電器にセットされているスマホを取る。

取ったスマホのキーを解除し 、トップ画面のメッセージアプリを起動。

一人で悩んでいても、解決できる問題じゃない。

だから、相談をするんだ。その相手は、私と遙ちゃんのことをよく知っているーーーー違う高校に合格した幼馴染み。


翌日。あ、前日が金曜日だったから、もちろん、土曜日。

歴とした休日。

私は、駅前にある喫茶店で、昨夜、相談のメッセージを送った人を待っていた。

ただ、待つだけではあれなので、試しに喫茶店内に置いてあった新聞を読んでみた。

文字ばかり。苦手な社会ばかりで、挫折。

次は、大人の人が読んでそうな情報雑誌に挑戦。

面白くなかった。

そして、行き着いた先は手紙を書くことにした。

手紙の送り先は、遙ちゃん。で、返事なんて返ってこない。

でも、書かなくちゃいけない。

理由は、私にある。

で、いざ、それに取り掛かってみると、なにも思いつかなかった。

「よ。会うのは、卒業以来だな」

悶々とする私に懐かしい声が聞こえた。

「久樹ちゃーーー君」

ついつい癖で長い間読んでいた愛称を口にしそうになり、慌てて言い直す。

「別に『ちゃん』でもいいぞ? 俺は気にしてないしさ」

と、私の正面い座る彼。

「ダメだよ。私たちはもう、高校生なんだか、ちゃんとしないと」

それが、愛称の変更。

高校生にもなって異性の幼馴染をちゃん付けで呼んでいたら、変に思われる。

私も、彼も。

私たちは単なる幼馴染だから、それ以上の関係に思われなうにしないといけない。

別に、私が通う高校と、彼が通う高校で私たちのことを知ってる人はいないけど。

あ、私のところには紬ちゃんがいた。

でも、紬ちゃんは全て知ってるから大丈夫。

「ごめんね。突然、相談しちゃって」

「別にいいって」

「でもでも、何か予定があったんじゃないの?」

今日は土曜日。

友達と遊び行く予定があったり、はたまた恋人がいて遊び行く予定があるのではないかと、昨夜、送ってから考えた。

「元から何もない」

「ほんとに?」

「あのなー、お前に嘘をついて、俺に何の得があるってんだ?」

「久樹君のことだから、無理に断って来てくれたのかと……その、彼女さんとか……」

「こよみ?」

「な、なに?」

「それは、まだいない」

久樹君のその一言には念のような重みが感じた。


「んで、相談って?」

注文して届いたブラックのコーヒーを飲む、久樹君。

ブラックが飲めることに内心、驚いた。

私なんて、カフェオレを頼んで、飲んでみたら苦かったので、ガムシロップとミルクを沢山入れたのに。

「んとねー、久樹君……」

そして、いざ、その話題になるとなかなか、喉から出てこなく、ストローを指でいじって誤魔化す。

でも、そんなのきっとバレバレなんだろうな。

なんたって、私と彼の付き合いはそれだけ長いんだから。

「こ……」

「こ?」

がんばれ、私。

こんなの、遙ちゃんに告白したあの時に比べればなんてことないんだから。

勇気を振り絞れば、できる。私。

「高校生活にはなれた?」

全然違う!!

内心で頭を抱えて悶絶する私。

「高校生活?」

ほら、怪しまれてる。むしろ、何かに気付かれているのに怪しまれてる。

「そ、そ。高校生活だよ」

話題をなんとか本題の方に戻そうとしたいけど、そのまま続けるとを選んだ。

理由は、たぶん、あれ。

久々に久樹君とどーでもいいことを話したいからかな。

「ほら、私たちって高校生になってそろそろ半年経つじゃない?だから、慣れたのかなーって」

「んー、慣れねー」と、コーヒーカップをテーブルの上に置く、久樹君。

そして、「慣れたと、言えば慣れたことになるのかなー」と、怪しげな言い方。

「そ、そうなんだ」

「でもさ、なんでこの話題なんだ?」

聞かれたくないところを攻められた。

「え?あ?だってさ、久樹くんだけじゃない。あの高校に進学したのって」と、慌てて言い訳を考えて口にする。

「ほら、久樹君の性格だから一人だけで、全然友達がいなくって寂しくなっていないか心配したんだよ」

さらに、付け加える。

ばっちり、怪しまれるように地雷を踏んでます。しかも、踏んでる地雷が土の中埋まってるようなものじゃなくって、土の上に置いてあるやつ。

「余計なお世話だ」

「てへへ」

笑って誤魔化す、私。

「まー、俺だけなんだよな……」

「?」

「高校変えたのは、俺だけなんだよな。って、今更思ってさ」と、コーヒーを啜る久樹君。

私たち3人は、同じ高校に通うことを約束していた。

ずっと一緒にいようと約束した。

幼馴染として。

そして、遙ちゃんとは恋人として。入学して、 暮らしが一緒だったらクラスの中の一番のカップルになろうと。

でも、それは遙ちゃんが亡くなったことで、叶うことができない夢物語になった。

でもーーーー私は、その夢物語の舞台となっている高校に受験し、合格し、通学している。

けど、それは夢を叶えたかったわけじゃやない。

「ほんと、こよみちゃんには敵わないな」

違うよ。と、言いたい。使えたい。教えたい。

私があそこに行っている理由は、夢を叶えたかった。わけじゃない。

本当の理由は、私には他の高校のことを何一つとして知らなかったから。

唯一の場所が、あそこだけだった。

「まじで、こよみちゃんは強いよ」

違う。

私が強いわけないじゃない。弱いよ。

とっても弱いよ。最弱だよ。

だって、私一人じゃ何もできないんだから。

遙ちゃんと久樹君がいたから、目指すべき高校を決めることができた。

でも、もし一人だったらどこにするべきか決まらなかった。決めれなかった。

だから、私は決めてもらったあの場所に行ってるだけで、そこに私としての意思も意見も志望が全くない。

もし、試験内容に面接があって、入学志望動機を聞かれたら、何も答えることができなくって落とされていたに違いないよ。

だからねーーーー私からしてみれば、久樹君の方がずっと凄いよ。

だって、久樹君は一人になってもいいから別の高校に受験して合格したんだから。

それに、そっちのほうが何段階も上のレベルの高校なのに、受かっちゃうんだもの。

だから、久樹君の方が凄いんだよ。、言いたい。

伝えたい。

なんで、できなんだろ。私。

今思うと、私っていつもそうだ。

あの時だって、私から言えばよかったんだ。でも、そこまでの勇気を貯めるのに時間がいっぱいかかった。

いつもーーーいつもーーーどんな時でもーーー

私は弱いよ。

「でもさ、やっぱ、今のままじゃダメなような気がするよ」

突然、久樹君がそう言った。

「いまの………まま?」

それって、今の私のこと。

悔やんで、後悔してーーーー私が私のことを嫌いになりかねない私。

最初、久樹君の言葉が何を指しているのかわからなかったけど、それはすぐに、これのことだと予想できた。

なんたって、それは今の私のことを指しているから。示しているから。

たぶん、久樹君的には違うことなのかもしれない。

実は、久樹君自身もそうなのかもしれない。

でも、それは私のことなんだと思うと、それが正解のように感じて、違う。って感じられなくなって来て。

「うん。そうだよね」と、私は相槌をうった。

「私ねーーーー」、そして、私が今と前の私自信を比較して感じたことがすらすらと口から出る。

「違うんだよ。私は、あの時の約束なんて叶えてない。叶えたくって、あそこに行ってるわけじゃない」

黙って聞いてくれる、彼。

「私にはあそこしかなかった。あそこしか知らなかった。だって、知ろうとしなかかったから仕方ないよね。馬鹿だよね」

苦笑いを浮かべる。

「私一人じゃ、なにも決められない。なにも知らない。何も見えない。誰かがいないと、私は何もできない。そんな私からしてみれば、久樹君の方がずっと凄いんだよ」

「おれが?」

「うん。だって、久樹君は一人で違う高校に行くことを決めたんだから、凄いよ」

ストロー越しに飲んだガムシロップとミルクを沢山入れたカフェオレを飲んでみたら、溶けた氷の水でやや薄くなっていた。

そして、私は久樹君に本題を打ち明けた。

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