アフターレター1:姫凪こよみ10
高校生になって初めての夏。そして、夏休み。
7月最後の日。
明日から、夏休みの本番とも言える8月の始まり。
夏休みの宿題?
中学生の時から比較すると、その量はすごく少なかったので、まさかの8月前にすべて終了。
終わっちゃったことにびっくり。あと、終わらした自分にびっくり。
そして、
今日の予定は----
念願の彼、羽賀君と夏休みに入ってからの初デートの日。
羽賀君は運動部に入っているので、現在、朝練中。
で、それを待つ私は、あの時以来久々に、駅前の喫茶店で時間つぶし。
座席に案内されて、メニュー表を見て、頼んだのはーーーー
あの時と同じ、モーニングセット。
500円で満足できるあのセットは、すごくうれしい。
注文したモーニングセットが届くまで、時間がるから、
「見直そう」と、高校合格のお祝いに買ってもらったポシェットから、昨夜遅くにやっと思いで書きあがった手紙を取り出す。
本当に、これができるのに大分苦戦した。
書き出しのは、期末テストが終わった7月頭付近。
何度も何度も、書いては消して書いては消してを繰り返した。
時には、丸めたり、やっぶたりした時もあった。
あと、紙質と模様がダメなんだ。と紙のせいにして、文房具屋さんや100円ショップで新しいを買ってきて、最初からやり直した時もあった。
ほんと、四苦八苦というか、紆余曲折っていうのかな?
あんまり、国語が得意じゃなから、言ってる熟語と今の私の状況があっているかどうかわからないけど。
4枚になった手紙。
実は、書くまで1枚か2枚程度で終わるだろうな。と思っていたけど…………
いざ、書き出してみたら止まらなくなった。
何を書けばいいのかわからないのに、ボールペンは止まることなく、どんどん書けた。
けど、たぶんだけどーーーー書いてある内容には矛盾もあれば、何これ?的なものもあると思う。
そもそも、書いた私本人が、その内容を覚えてない。
ただ、これだけは自信ある。
この手紙の内容は、あれなのかもしれない。
でも、ここに書かれている内容すべてが、遙ちゃんに伝えたい、私のこと。
私のまわりで起きた出来事。
私の変わってほしくないけど、いつかきっと変わる思い。
そして、ありがとう以上の感謝。
そのどれもが、この中に書かれてる。
「失礼します」と、注文したモーニングセットが運ばれてきた。
ちょうど、手紙を便箋に入れてるとだったので、店員さんが、「ラブレター、かな?」と聞いてきた。
「え、あ、違います」と、答える私。
でも、そう見えても仕方ないかな。
100円ショップで見つけたちょっとピンク色の便箋。
あと、ハートの封シール。
うん。少女コミックとかでよく使われるラブレターに近いかもしれない。
「ただ、大切な人に大切なことを伝えたい手紙です」
それって、ラブレターじゃ?と、思ったけど、違う。
だって、ラブレターで告白を伝えたいために書くもの。
でも、私のこれは、私の気持ちだけを伝えたいから書いたもの。
だから、ラブレターじゃない。
「そうなの?でも、珍しいよね」
「珍しい?」
「だって、最近の若い子って、メールとかLINEで済ませちゃうじゃない」
言われると、そうかもしれない。
私のまわりで、ラブレターを渡したよ。って聞かなくなったような…………
「そうかもしれませんね」と同感。
でもーーー
「でも、やっぱり、大切な人に大切なことを伝えたいなら手紙が一番です」
だって、そっちのほうが達成感というか、やりきった感じがするから。
それから、数分後、「ごめん。遅れた。待ったでしょ」と、羽賀君がやってきた。
「んーん、待ってないよ」と、お約束の対応。
あの時以来の久々のやり取りに、懐かしさを感じた。
あの時は、わざとふてくされて、お昼を奢ってもらった。
でも、今日はーーーー
今は何もないけど、明らかに何かがあった痕跡が残るお皿。
はい。ハーフサイズのトーストがありました。
とても、美味しかったです。
あと、空になっている丸い小皿。
サラダが入ってました。
しゃきしゃきしていて、ドレッシングもいい感じで、美味しかったです。
うん。
これじゃ、ふてくされないよね。
なので、「何か、飲もう?」と、ちょっと息が乱れ気味の羽賀君に言った。
これって、一応、成長してる。ってなるのかな。
その後、羽賀君はアイスのダージリンを頼み、少しお話をして、ゆっくりした。
駅から7分ぐらい歩き続けて、今日のデートの目的地に到着。
夏休みのデートの目的地がここってのは、あれだけどーーーー
「ここ?」と、何も説明していなかった羽賀君が困惑気味に聞いてきた。
「うん。ここはねーーーー」
私たちが到着したのは、ちょっとした高台にある墓地。
「私が大切な人が寝てる場所なんだ」
遙ちゃんのお墓がある場所。
今日のデートは、私が、わがままというか、無理矢理セッティングした。
羽賀君には、日時だけ伝えて、場所は伝えなかった。
そのことに、羽賀君は触れてくれなかったので、安心した。
彼のお墓の前についた。
「私がーーーー」と、途中のコンビニで買ってきたお花を、私の前に誰かが来たのか、まだ新しい花が挿してある花立の隙間に挿す。
たぶん、彼の両親がきたのかな。
そういえば、彼の両親とは、あれ以来あってないや。と、思うと、なんか寂しさを感じた。
「今でも一番好きで、愛してる人なの」
それは、今でも変わっていなくって。
だから、私は悩んだ。
だから、私は迷った。
「此方 遙君。それがね、その人の名前なの」
久々に言った、彼のフルネーム。
私は、彼のお墓の前で、手を合わして、目を瞑った。
思い浮かぶのは、彼と一緒にいた日々。
楽しかった。うれしかった。
でも、苦しかった。つらかった。
「でもね、もうね、一番じゃダメなんだよね」
いつまでも囚われてじゃダメ。と、幼馴染の二人に遠回しになったけど教えてもらった。
「ごめんーーーー」と、なんでか知らないけど謝る羽賀君。
私は、振り向いた。
「俺さ、好きなったのに、その人のことなにも知らなかったんだ。姫凪さんに、そんな人がいたなんてーーーー」
んーん。
羽賀君は知らなくって、当然だよ。
だって、何も教えないもん。
だからね、だからね……
「教えて、君のこと」
私は、羽賀君のことをもっと知りたい。
「私のことも教えてあげるから」
羽賀君は、わたしのことを知ってほしい。
だってーーーー
「私、きっと、羽賀君のことを遙ちゃん以上に好きになってみせるから」
私は、遙ちゃんが好き。
でもね、遙ちゃん。安心して。
きっと、私は遙ちゃん以上に、この人のことを好きなってみせるから。
言われた通り、新しい恋をしてみせるから。
駅から出発する汽車の汽笛が鳴った。
この話で、学生生活~卒業の涙~アフターレター1;姫薙こよみ編は終わります。