レター1:姫凪こよみ -1
ご無沙汰しております。
あれから、半年近くの時間と日数が過ぎました。
いかがお過ごしでしょうか?
私の方は、やっと高校への登下校に慣れてきた感じがします。
「おはよー」
私は、第一志望の高校に受かりました。
そして、入学して直ぐに新しい友達ができました。
そうそう、久樹ちゃんとは別々の高校になってしまい、幼馴染記録は途絶えました。
でも、ときどき連絡は取り合っています。主に、ラインっていう通信アプリ越しで。
「おはよう、このみちゃん」
高校に入って、初めてできたお友達ーーーー葱米 紬ちゃんとは毎日、一緒に通学している一番の友達です。
席が離れていたけど、同じ中学出身であり、また高校までの通学路も同じ方角であったことから、親しくなりました。
他にも、同じ中学出身の人はいます。もちろん、その中にはあの時と同じクラスだった人もいます。
そして、その誰もが覚えてます。
あなたがいたことをーーーー
高校に上がっても、朝の教室の雰囲気は中学校の時となんら変化や違いがありません。
ガヤガヤしてます。
賑やかです。
もし、違いがあるなら、教室で漫画や雑誌を読んでる人がいるってところでしょうか。
私は、紬ちゃんたちとお話しです。
他にも、同じクラス内での友達はいますよ。もちろん、みんな同じ中学出身ですけどね。
他の中学の子達には、なかなか声をかける勇気が出なくって、あまり仲がいいわけではありませんが。
そこは、なんとかしたいと思います。
私は、自分でも不思議なことに今でも思い出す時がある。
中学生の頃は、小学校での卒業式のことなんて思い出すことがなかったはずなのに。
でも、あの時の卒業式だけはいつでも、どんな時でも思い出すことができる。
それは、私だけの思い出じゃないからだと、思う。
きっと、そこに君がーーーー遙ちゃんがいたから。
もし、君がいなかったが、思い出すことなんてできなかったはず。
「ねーねー、こよみちゃん」
「んー?」
今は、お昼休み。お母さんが作ってくれたお弁当を食べてます。
もちろん、一緒に食べてるのは紬ちゃんたちとです。
「こよみちゃんって彼氏とかいないの?」
「んぐっ………ごっほごっほ」
紬ちゃんがおかしなことを聞いてきたので、口していたご飯を喉に詰まらせそうになりました。
「な、何言ってるの、紬ちゃん」
「いやいや、それはつむぎんの言うとおりだよ。こよん」
私のことをこよんって呼ぶのは、紬ちゃんの中学時代からの友達の鴇老 安理ちゃん。
彼女とは、紬ちゃんに紹介されてから仲良くなりました。
登下校時に一緒にいないのは、通学路が反対方向だからです。
「そそ、姫はさ、わかってないっしょ」
私のことを『姫』と愛称をつけて呼ぶのは、野木 明日奈ちゃん。
彼女だけは別の中学校出身だけど、最初の席順で私の前にいたことで仲良くなった友達です。
「そうだよね。こよみちゃん」
「な……なに?」
「こよみちゃんって、この学年内ですごく人気なんだからね。わかってた?」
お弁当そっちのけで、身を乗り出し迫ってきた紬ちゃんが少し怖かった。
「そうなの?」
「うわー。流石だよ、こよん」
「それこそ、姫って感じっしょ」
「あのね、二人ともー。これって、絶対になんかあるって思わない?」
「なんかって、なに?」
「こよみちゃん、本気で真剣に答えて」
「えーと………」
「中学の時、彼氏、いたでしょ?」
そう、忘れすことなんて出来ません。
よく、人は忘れることができる唯一の存在だ。って本に書いてあったりしますが、私はそれは嘘だな。と、思います。
だって、私は忘れないから。忘れたくないから。忘れてしまいたくないから。
だから、忘れない。
「うん」
私は、持っていたお箸を置いて、続きを答えた。
「いたよ」
3人が何か納得したような表情をしていた。
「忘れたくない大切な人がいたよ」
だけど、それは過去のことでーーーー
「ん?待て、姫」
そして、それに気づいたのは明日奈ちゃんだけじゃなかった。
3人とも気づいて、明日奈ちゃんが代表する形で問いかけてきた。
「いたってことは、今は?」
そして、その意味がわかってる紬ちゃんが重い口を開く。
「……それって……」
「うん。そうだよ」
紬ちゃんは知ってる。あと、安理ちゃんも知ってる。
「此方 遙君」
私は、その2人が知ってる名前を口にした。
「へー。そいつが、姫の元カレか。ったく、こんなに可愛い姫を捨てるとは、憎たらしいーーーー」
「違うよ。明日奈ちゃん」
「違う?」
「うん。私は、捨てられてないよ」
「んじゃ、そいつはどこにいんだよ?」
「ここのいるよ」
私は、自分の右胸に自分の右手の手のひらを当て、その上に左手の手のひらを合わせた。
「私の心にいるよ」
「………」
「ずっと。ずっと」
覚えていますか?
私たちの出会いを。私たちの始まりを。
私は覚えてます。
私たちの始まりーーーー付き合い出すきっかけになったのは、中一の秋頃でした。
あの時は、本当に驚きました。
だて、私も同じことを思っていたから。
それなのに、まさか、そっちから先に来るなんて思いもしませんでした。
でもね、なんとなくそんな気がするなーって、どことなく感じていたけどね。
気付いてた?
私が、遙ちゃんのことを同じクラスの男子の中で気になりだしていたのは、小学校5年生の時なんだよ。
でもね、あの時の私たちはまだ同じクラスの人で、なかなか声をかけることがありませんでした。
そこで、幼馴染というかご近所さんの久樹ちゃんの紹介で近づいたんです。
今ではどうだったのか覚えてないけど、きっと、あの時の私はすっごく緊張というか、ドキドキしていたんだと思います。
だって、今まで一言たりとも話したことがないのに、突然、紹介してもらうのって変ですよね。
きっと、遙ちゃんののことだから、変だと感じていたことかと思います。
これが、私たちの始まりでした。
そして、もう一つの始まりになったあの日。
あの日に私が感じたことは、ほとんど覚えてます。
すごく、嬉しかったです。
でもね、それなのにすぐに答えることができなかったのは、私たちの今の関係ーーーー友達として関係の崩すことから感じる恐れが、私の嬉しさを上回っていたからです。
あの時の私は、恋とかそういった関係よりも、友達のような楽しくやりあえる関係を大切にしていたみたいです。
そうそう、実はあの後、久樹ちゃんにこのとこを相談したらね、なんと、久樹ちゃんはこうなることをずっと前から知っていたみたいで、頭くるよね。
あー、でも私が久樹ちゃんを通して、遙ちゃんのことを紹介してもらっている時点でそのへんはバレバレだったのかもしれないね。
そして、私は遙ちゃんの告白の返事で、私から告白を返しました。
覚えてますよね?
それに、それからのことは、わざわざ書かなくても大丈夫だよね。
今、こうして前のことを思い出しながら書いてると、私は本当に幸せだったんだ。と、思います。
辛いことがありました。
悲しいことだってありました。
怒りたい時もありました。
そして、なにより、現実を憎んだときだってありました。
でもね、それらを乗り越えて、体験したからこそ、私は幸せだったんです。
だって、私はもっともっと君のことを知ることができたから。
君のーーーー遙ちゃんが抱えいた悲しみや苦しみを見ることができたから。
高校生になって初めての長かった期末テスト期間を終えた6月のある日のことです。
その日、私はこれまでの人生の中で2回目に経験したイベントに遭遇しました。
2度目の告白をされました。
相手は、クラスメートの羽賀幸谷君です。
彼とは、高校生になってから初めてあった人で、私が中学生の時に体験したことや、付き合っていたことを知らない人でした。