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導師アーサーの憂鬱  作者: Namako
00:雪花自裁。
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賢者。



「待ってくれ、意味が分からない。分かるように説明してくれ」

 

 彼。どうしてだかアーサーと呼ばれ続ける彼は、現実に戻ると同時に冷静に問いかけた。

 死に際に杖を手に入れた。それは分かる。目の前に男性がいた。それも分かる。だがすこし待ってほしい。

 今、なんつった?


「杖を引き抜いたのでお前は王になった、それだけだ」

「杖を引っこ抜いて王になるというその間にある経緯を教えろっていってるんだよ」


 どうしてそうなる。

 そんなもので次世代の王が決まってたまるか、そういわんばかりの勢いで彼は食い下がる。その様子をみた男性は何が楽しかったのだろうか、はっはっはとわざとらしい笑いを発するとすぐさま真顔にもどる。

 さて、どんな言い訳をしてくれやがるのだろううか。彼は腕を組み待ち構えていると。


「そんなものなどない」


 最悪の答えが返ってきた。


「とにかくお前が王だ」

「待て」

「というわけでだ、皆の者! ここに新たな王が誕生した!!」

「おいこら」

 

 話を全て無視して勝手に進んでいく男性は、唐突に大きく腕を広げながら、あたりの人々へ声を広げる。

 いつのまにか雪も降りやみ、綿のように横たわっていた曇天は大きく切り裂かれたように青空がのぞいていた。男性の声はいっそ清清しいほどに高らかに、その場全てに行き渡るように言い放つ。


「その名は──アーサー王!」


 街の人々がその宣言と共に大きく歓声を上げた。

 その表情はなんだかとても明るく、いうなれば希望に満ちていて。流石の彼も文句を言えなくなってしまう。いや、全然納得してないのだけれど。アーサーって誰だよ。俺かい? ふざけるな。思考をぐるぐるさせながら呆然と立ち尽くしていると、ふわりとした浮遊感に狩られる。


「……は!?」

「そういうわけだ、城まで来てもらうぞ」

「はぁ!?」


 男性に荷物のように抱えられ、そのまま拉致されるように持っていかれてしまった。



 主無き城。

 長らく玉座に座るものも存在せず、ただそこにあり続けたそれは、いつしかそう呼ばれるようになっていた。そしてその玉座に、もう訂正する事を諦めた彼……アーサーは座っている。というよりかは座らせられている。初めて座る赤いふかふかした豪奢な椅子はどうにも気持ちが悪く、下水道で鼠のように生きてきたアーサーにとってはとても居心地が悪いものだった。

 いや、此処に座るまでも似たような感覚だった。

 まともな食事でさえ貴重だというのに、出てくるのは貴族が食べるものであろう豪華なものばかり。こんなものをいきなり出されても、食べたところで胃がびっくりしてしまうだろう。そう遠慮していたら、誰かが気を利かせてくれたのか普通の麦粥(それでもかなり上等なものだが)を出してくれた。とにかく腹は減っていたので物凄くうまかったことをよく覚えている。

 ひと段落したら、今度は服の話になった。

 貴族服は明らかに似合わない、と戸惑っていたらあの黒服の男性(めんどくさいのでこう呼ぶ)がいきなり指を鳴らすと、それもまたはじめてみるような服にアーサーは身を包まれていた。黒服の男性曰く、ゴシック調にスチームパンクの雰囲気を取り込んだうんたらかんたら。ひとまずこいつの感性はおかしいということだけは、アーサーにでも分かった。だが新しいものがすきなのだろうか、城に使えているらしき召使たちは目を輝かせていた。確かに貴族服よりかは馴染む気はするが、どうにも。

 そんなこんなで拉致されてから一日が過ぎ、なんやかんや此処まできたというわけなのだが。


「それで、何なんだ」

 アーサーは手に入れた問題の杖にしがみ付きながら問う。

 玉座の間は想像以上に広く、物がない。それだからなのか嫌に声が響く。そしてこの場にいるのはアーサーと、黒服の男性。その二人だけだった。


「何がだ」

「この状況と、あんたと、目的と、全部が全部さっぱりわからないのだけど」

「ふむ……」


 黒服の男性がまたわざとらしく顎に手をあて、髭をなでる。すこし静かに待っていると、黒服の男性は静かに口を開いた。


「まず、私の名を伝えておくとするか」


 カツン、カツン、黒服の男性は二歩、アーサーへ近づくと紳士が取るような礼をし、こう名乗った。


「私は賢者。賢者マーリンだ」

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