賽災。
取り替え子、というらしい。
アリトが淡々と語ったいままでの話は想像するにも堪える受難の物語だった。
「つまりお前は外大陸から移り渡った渡来人で、借金問題で一家離散一歩手前で」
「急にこの髪の色になったら家から追い出された」
「……で、腹減ってドラゴンの肉を食べたと」
「あぁ」
アリトとスモーカーは軽食を済ませ、鋸鉈の帰宅待ちが暇だったこともあってか引き続き診察所でぐだぐだ雑談としゃれ込んでいた。とはいっても現状、灰色の街に敷かれている危機態勢やドラゴン襲撃、あの奇怪な塔のことなど二人はよく知らない。情報共有らしい情報もないので結局のところ花を咲かせたのは過去の話、つまるところ、アリト少年のこれまでだった。
髪色の変質、身体変化、鋸鉈の話からてっきりあのドラゴンの肉を食べたことかと思ったが案外そうでもないらしい。少なくともスモーカーがアリトを見つける前から発症はしていたようだ。が、選択肢が一個除外されただけであって進展らしい進展はない。
まったく難儀な話である。
「ここのところ、街の様子も変だった。嫌な予感しかしてない」
「街が変って、どういう意味だ?」
「違和感がずっと。マフィアの動きじゃない変な人たちが増えてた、とても、こう、絵本の住人みたいな」
「……冒険者ではなく?」
「なまものの獣耳な冒険者はもっと派手な格好をしてる。あれは、ええっと、エルフ? ドワーフ? みたいなああいう」
「純正のファンタジーみたいな単語が違和感あるってなかなかすごい話だと思わないか」
「むしろそれが通じる国があるのが、おれは怖い」
「そうだな、種族均衡とか色々あるもんな」
「単一種族の国家が成り立つとか島国かと思う、混種が進んでいないと違和感しかない。種族学的に」
つまり灰色の街で本来いるはずがない純正の亜人種たちが姿をちらほらと見せるようになっていた、ということか。
この壊歴の大陸は一応「大陸」である、しかも調べてみるに見た目は近世だが技術水準はかなり高い。それだけの歴史があるわけだ。だからこそ純正というのはほぼほぼあり得ない、世が進むにつれて人は交わっていく。何をやっても古来よりの血は何かと混ざっていかなければいけない。家系図を辿れば祖先が竜、というのもよくある話らしい。
剣と魔法が辛うじてまかり通る大陸で、エルフやドワーフ、ピクシィなどの固有種がそのままの形で生き残る確率は絶望的だ。そもそもがこの大陸で言う亜人の定義は「先祖返りを起こし外的特徴を色濃く宿した者たち」のこと、どれもこれも結局のところ片方は人間だ。区別意識はともかくとして、どのみち固有種の姿はこの大陸には存在しない。
あるとすれば外大陸からの渡来者だ。
だが、妙な点がある。
スモーカーはもちろん渡来者だ、だが渡来するにしても正規の方法ではなく密航によってこの大陸にやってきた。冒険者や傭兵、捕喰者または組合に属するものは相応にライセンスを取得してこの大陸へ入行許可をもっている。固有種たちが傭兵である可能性もなくはない、と思ったが実はその可能性は一番最初にぶっ潰れるのだ。
「壊歴って確か、レギュレーション制限掛かっていなかったか」
「レギュ……関門規制のこと? たしか準血脈保有者と、戦績未所持者は立ち入り禁止……だったか」
「正確には管制基準の戦績10.2以下は渡来禁止、だな、うん」
「スモーカーは戦績、どれくらいもってるの」
密航している時点でこの大陸に正式入場できないレベルであることは察してほしい。
とにかく。
固有種は、たとえ傭兵だろうが冒険者だろうが規制に引っかかってこの大陸には出入りができないというわけだ。
捕喰者は別だ、あれはなった瞬間から固有種でいられなくなる。そういう枠組みの存在だ。
妙な事が集中している気がするがここはこういう場所だ、仕方がない。
「にしてもアリト、お前実は結構いいとこの坊ちゃんか。なんか視点が違う、いや違うっていうか。一般人じゃないなお前」
「一応、貿易商の一人息子だ」
「つくづく思うが貿易商って最強の職業だよな」
「没落したおれにいうのか……」
「……すまん」
ともかくとしても、今の状況はだいぶ良くないということには違いない。スモーカー自身この件に関わる義理はまったくないのだが、残念なことに今のところ厳戒態勢なこともあって関所を越えるのが非常に面倒くさいことになっているのだ。外大陸の件となれば多少知識の利があるとはいえ、背に引っ提げた聖剣がどう作用するやも分からない。
現状打破、しなければいけないのだろうか。
それはそれで面倒くさいなぁ。
「ただいま戻った」
うだうだしていたところで鋸鉈が奥から戻ってきた、雰囲気からしてどうにもお疲れのご様子だが。
「おかえり、どうだった」
「大変なことになった」
盛大なため息の後、まるで天を仰ぐように目を天井に逸らしながら鋸鉈は告げた。
「土地が発症ぬやもしれん」
「はい?」
また訳の分からないことが起きるらしい。
アーサー
:「唐突のおまけもとい情報整頓コーーーーーナーーーー!!!! とうとう台本形式だが許してくれこの台詞量は裁けない!! 死ぬ!! 情報過多で回線落ちしてしまう!!」
スモーカー
:「うーわーーーーとうとうおっぱじめやがった上に結局俺かー!! 呼ばれるの俺かー!!」
鋸鉈
:<私もいるぞ!!
スモーカー
:「よかった鋸鉈さえいればってだめだ!! こいつ幕間じゃ弾けるんだった!!」
アーサー
:「人選事故はともかく、更新遅くてすまないもはや月刊ペースだな!! すまない!!」
鋸鉈
:<今回の原因は。
アーサー
:「種火周回してたのとブレ〇ブ〇ーデフ〇ルトやってたせいだな! TRPGもしていた、PLたのしい」
鋸鉈
:「NCはいいぞ」
スモーカー
:「話進めようか!!!!!!!」
■進行状況
アーサー
:「現状、ブリテンで俺視点の【灰色の街から来た勇者】の案件と、灰色の街でジェシーの【竜と討伐組織と外部外交がやばい】と」
スモーカー
:「自分が担当している【鱗化障碍と街の異変】の三つ同時進行、鬼か?」
鋸鉈
:「全体項目として【違法な技術の売り渡し案件】が出ている。事実上四か所同時進行だ」
スモーカー
:「これ番外編だよなぁ!? 番外編なんだよなぁ!?」
アーサー
:「いつものことだろ、諦めろ。今のところ全員がようやく事態の把握にとりつけたところだな」
鋸鉈
:「そして私が五つ目の案件をぶんなげに来たところだ」
スモーカー
:「やめてさすがにストレージ足らない!!! ってかこれもう本筋でよくね?」
アーサー
:「知ってるか、本編と番外編の違いはな、「大規模戦に発展するか否か」なんだ」
スモーカー
:「必然的に俺が死ぬ構成だった!!! 解散!!!」
鋸鉈
:「とても心苦しいと思っている、がんばれ"主人公"」
アーサー
:「そうだがんばれ"主役"、俺おまえと全然絡みないけどな!!!」
スモーカー
:「なくて結構だわ!!!! ちくしょう!! なんで焼き払わないんだ!! 焼き払うべきブリテンだろうここは!!」
アーサー
:「雨でも沈まない国だから仕方ないな!! やっぱだめだな台本形式だとカットされるはずの台詞までもろばれだ、全然話が進まない」
鋸鉈
:「漫才八割がたカット処理だから仕方がない、私の渾身の漫才も全カットされた。悲しい」
スモーカー
:「裏事情は広報垢でやれ!! 解散っ!! これはだめだ、解散!!」