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序章
「心愛!!」
青白い顔でコンコンと眠り続ける親友を見つめる霧島希は、心愛よりもまだ青ざめているように見えた。
誰もいない部屋に、何度も、何度も目を覚まさない親友の名を呼び続ける希の声が響いている。
「……ねが……目を……覚まして……」
強く、強く願う声が部屋に響き渡る。
心愛は、希にとって何よりも大切な友人だった。つらい出来事をともに経験したためか、希が心愛を思う気持ちは強い。
心愛が、目を覚まして、笑ってくれるなら悪魔に魂を売ってもいい、と強く願った、その時、突然周りから景色が消えた。比喩ではなく実際に。心愛の姿も、彼女の部屋も、ドアも何もかも視界から消えて、真っ黒な空間に希はいた。
《お前の願いは……なんだ?》
聞き覚えのない声とともに、見覚えのない人間が目の前に立った。希はまるで、夢の中の出来事であるかのように、彼の顔を見つめた。