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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

とある研究者の日記 ~ デスゲームの裏側

作者: 月狩朔夜

 以下、被告人葛原由の日記(一部抜粋)




×××××年5月20日

今日から日記をつけようと思う。

なにやら日記をつけると記憶力が良くなるらしい。

私は、この最悪な気分を忘れたくて、そしてそれ以上に忘れたくない。



6月2日

ニュースでテロやら無差別大量殺人の事件を視ると「いいぞもっとやれ」と思う私は、人間としておかしいのだろうか?

もしそうなら、私はいつからおかしくなったのだろうか。

私はあいつらのせいだと思うのだが。見知らぬ犯人に苦しみ殺されればいいのに。



6月4日

ふとニュースでヴァーチャルリアリティ、通称VRなるものを聞いた。まだ実現していないが、そうなったらどうなるのだろうとインターネットで調べたら、ゲームの物語ばかりだった。デスゲーム(笑)。



6月13日

あいつらがゲームの話をしている時、ふとこの間のデスゲームの事を思い出した。VRゲームを私の手で実現させられれば、あいつらに復讐できるかもしれない。間接的にでも私の手で殺せるなら、少しは気が晴れるかもしれない。



6月14日

昨日の件をずっと考えていた。

デスゲームを実現させるに当たって、重要な事は

・VRの実現

・デスゲームの最中、脱出されない事

この二点を押さえればなんとかなるだろう。最悪、一人用でもあいつらを釣れればいい。



6月15日

引き続き考えていた。というより探していた。

デスゲームの最中に脱出されない方法は物語に溢れていた。方法は概ね二種類。

・物理的な脱出を行おうとすると対象者が死亡する

・思考を大幅に加速させて外部が異常に気付いた時には既に全て終わっている

私が自分で1から作るのならば『カプセル型のハードで、外から脱出させようとすると死亡する仕組みを任意に起動させられる』が一番やりやすいか。一番のネックはVRだが。



8月3日

ふと気付けばデスゲーム計画を本気で考えている自分がいる。

だが、私がこの手で直接、とやるには筋力も体力も圧倒的に足りない。もしかしたら、あいつらを目の前にしたら動けないかもしれないし。毒やらなんやらにしてもそれらをどうやって用意して、実行して、そして実際にやれるのか。こんな事をやらせる他人も居ない。お金もないし。

……あれ?何故こんなデスゲーム計画(笑)が一番妥当な計画なのだろう。ちょっと涙でてきた。



9月30日

あんな事をするなんて。

絶対に許さない。

デスゲームだろうとなんだろうと復讐できるならやってやる。

誰がどれだけ巻き込まれようと知ったことか。



10月20日

あいつらの内の一人は将来×××××になるつもりらしい。もしそうなってしまえば、私がデスゲームを実現させた時にはこいつはそもそもゲームとは縁遠いトコロにいるのではないだろうか?

……デスゲーム計画で本当にあいつらを殺せるのか不安になってきた。



×××××年7月2日

実際にデスゲームを作るとして、まず必要なものがハードとソフト。次にVRのシステムだろう。先を越されないようにするには私がVRとハードの研究をしつつソフトのシステムを考える、というのが妥当か。

誰にも言うつもりが無い以上重要な所は一人で作らないといけないのか……。




×××××年4月20日

大学でゲームとかVRとかの製作ができそうなとこに入部。先に心の中で謝っておきます。先輩方、同級生たち、未来の後輩さん、私は人を殺す為にここに居ます。



×××××年9月18日

VRシステムのプロトタイプが実現したらしい。もっとも、私とはほとんど関わりの無いところでだが。デスゲームの事を伏せてVRゲームを作りたいと言ってシステムをもらい、同時にハードとゲームシステムを考える方向に。



9月21日

まさか部の連中が手を貸してくれるだなんて。断ろうとしたのだが無理だった。彼らの熱意に負けた。計画を実行に移すときには、遺書の一つでも用意して彼らが私に巻き込まれないようにしないと。法に裁かれるのは私だけで十分だ。



9月3日

彼らの手を借りるということは、デスゲーム計画の根本である「現実の体を殺す」部分を彼らから隠さないといけないのか……。



10月2日

後輩部員の一人の言葉に凍った。「これ(ハードの事。まだ設計段階だけど)、どうやって量産とかするんですか?」だって。

何にも考えてなかったよ!

言われるまで量産とか流通とか気付きもしなかったよ!

デスゲーム計画(笑)



×××××年2月8日

医療やら軍事やらを優先させていたVRシステムがようやく私でもみれるようになった。これで一気に計画が進められる。いまさらだけど、私、悪いこと考えてるなあ。



2月23日

ハードがおおざっぱに完成。家に持ち帰って運転試験。家の庭に迷い込んだノラネコは無事に殺せました。



2月24日

昨日のノラネコはノラネコじゃなかったらしい。あちこちの電柱に尋ね猫の貼り紙がある。ごめんなさい、そのネコの死体は我が家の庭に埋まっています。



4月10日

ハードに合わせてVRシステムを改良。それに併せてソフトもある程度形になった。……ハードは2台しかないけれど。資金不足をどうしよう。



4月15日

いつの間にやら部員がVRゲームを宣伝していたらしい。そのせいで学校や企業から投資やら引き抜きやら。計画が前提にある以上引き抜きには応じづらいのだが。



4月18日

結局、×××××社に引き抜きされることにした。ハードの量産とゲームの流通を考えるとここが一番適していた。ますます巻き込む人数が増えるが、止まる気は無い。



×××××年5月28日

ソフト面に大幅なテコ入れを入れられたゲームがいよいよ一般的に宣伝された。私は計画さえ実行できるならソフトの内容はあんまり気にしないが。



8月9日

一般公募からのテストプレイヤーを募るαテストとやらが開始された。ちなみに、αテストはオフラインでオンラインのβテストなるものもあるらしい。



9月3日

あいつらの内の一人から連絡がきた。なんでも、製作者の欄に私の名前を見付けて、昔のよしみでゲームを譲ってほしい、だとか。どうやって巻き込むかとか、巻き込めなかったら計画どうしようとか思ってたところにこれですよ。内心で拍手喝采ガッツポーズ。とりあえず、製品版発売の際は譲ろう。これならあいつのアカウントも簡単にわかるし。



9月5日

あいつらのメンバーから次々連絡が。思っていた通りに仲間内で自慢したらしい。もう笑いも計画も止まりません。



×××××年1月10日

βテストも終わって、製品版発売までもう少し。

それはそれとして、計画でちょっと悩んでる。

90%がログインしたらログアウト不可は確定。

あいつらだけ死亡直前に痛覚フィードバックを200%にするのも確定。

『あいつらを殺したらログアウト可になる』か『普通のデスゲーム、ただしあいつらだけ全ステータスに常にランダム補正がマスクデータでかけられる』かで迷っている。いや、どっちもプログラムしてあるし、なんなら両方でも大丈夫だが。



3月10日

明日はとうとうサービス開始。そして地獄の始まり。

明日はログアウトが不可能になったのを確認したら自殺するつもりなので多分これが最後の日記。

せいぜい苦しむがいい。

「こうして見ると少し同じょ――」

「同情、なんて言わないで下さいよ? どう言い繕ったところでこの人が犯罪者であることに変わりはないんです」

「そう、ですね。たとえ復讐と云えど、犯罪は犯罪ですよね」

「そうですよ。一万以上の人たちとゲーム機の中で餓死させた犯罪者です」

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[気になる点] ぬこには罪はないッ!ぬこを、ぬこを返せぇぇぇぇ! と、リアル複数匹ぬこ使いが言ってみる。 [一言] これ、長編にしましょう(鬼気迫る笑顔
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