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魔王の襲来

 だいたい合鍵とかって普通奥さんとかが持つんじゃないの?


 そうこうしてるうちに、怒鳴り声は更にひどくなった。もう外にまではっきりと聞こえてくるほどだ。


 有智は、中にいるんだろうか。親が怒鳴り合ってるのを近くで聞いているんだろうか。有智だけでも、連れ出せないだろうか。まだ幼いんだし、親が喧嘩してるのを見るのは辛いだろう。


 俺は合鍵を使って中に入った。隔てるものがなくなり、怒鳴り声はより鮮明に聞こえた。玄関に入ったところで、有智の靴がないことに気づいた。靴箱にもいつも履いてるお気に入りの靴はない。どこかに行ってるんだろうか。でも保育園はとっくにしまってしまったんじゃないだろうか。


 何を思ったのか、俺は家の奥へと更に入っていっていた。


 言い合いをしてるのは、リビングのようだ。俺はそのすぐ脇にある洗面所へと隠れた。いや、リビングのドアのそばで聞き耳立ててるわけにもいかないでしょ?出てくるかもしれないし、これ不法侵入だよ多分。


 魔王の怒鳴り合いの相手はやっぱり奥さんのようだった。


「何度も言ってるだろう。俺はもう寄りを戻すつもりはなくなった。だいたい、先に話を持ち出したのはお前だろ」

「最初は反対してたじゃない!私あれから考え直したの!やっぱり、あなたと一緒にいたいの!!」

「もうお前のわがままにもいい加減付き合いきれない。自分勝手なのもいいかげんにしたらどうだ。有智の教育上も良くない」

「有智はまだ幼いし、母親が必要なはずよ!」

「その母親が母親らしいこと何一つしないじゃないか。それじゃあ、あってもなくても同じだろう」


 何やら、修羅場じゃないか?杉下さんが言ってたとおりじゃん。ていうかなんで俺タイミングがこうも悪いんだ。出直そうかな。


「母親らしいことって……、ちゃんと有智を育ててたじゃない!!」

「ただ見てただけだろう?悪く言えばあれは育児放棄だ。お前全てに家事を押し付けようというわけじゃなかった。だけどお前はあまりにもしなさすぎだ。掃除、洗濯。全て杉下にやらせてた。料理はほとんどデリバリー。あんなので有智を育ててたと言えるか?俺はまだ我慢できるが、有智を任せてはおけない。わかったらさっさと出て行け」


 感情をあらわにしてわめき散らす奥さんと、ただただ冷たく言葉を言い放つ魔王。その温度差が、すごく雰囲気を悪くしてる。別の空間にいるのに、俺まで苦しくなる。


「私のこと愛してないの!?」

「そうだな。もうお前を妻だとは思えないな。結婚しようと思った俺がバカだった。女を見る目は無いようだな。悪いがお前を愛することは無理だ。さっさとどこにでも行って、新しい男でも見つけるんだな」

「っ!!あんたなんかと……結婚なんかするんじゃなかったわ!!」


 ものすごい音がした。そして玄関のドアも同じくらい大きな音を立てて開閉した。どうやら奥さんは出てってしまったようだ。


 にしても、終始冷たい物言いだったな。ちょっと奥さんに同情する。ていうか、なんて場所に居合わせたんだろう俺。


(ガラッ)

「っ!?」

「お前……盗み聞きとはいい趣味をしてるな?」


 洗面所に、魔王降臨したんですけど。俺どうする。どうなっちゃうんだ!?




次回:2月15日19時更新です。

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