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魔王の喧嘩

 仕事が終わり、家に帰ってきた。


 一人の生活はもう十年以上しているはずなのに、最近ひとりでいる部屋が嫌いになった。


 ひとりでいると、ぐるぐると考え事をしてしまう。


 今だって、テレビをつけてはいるものの、それを見ることはせずベッドに寝転がって天井を見てる。


 魔王は今離婚しようとしてるのか。この前杉下さんが言っていた。でも元妻?いや、まだ離婚してないからおくさんだよな。奥さんはしたくないと魔王にしつこく言っているらしい。そして魔王も奥さんと離婚するのにまだ未練があって、強く踏み出せないでいる。


「離婚したら……」


 俺にも可能性はでてくるんだろうか。


 0%から1%でもいい。ちょっとでもこの気持ちを抱いてて、それにふさわしい関係になれたら。そう思ってしまった。

 離婚って、とても喜ばしいことじゃない。愛し合って、誓い合って結ばれた二人が別れる。そんなの喜んだり願ったりしてはいけないのに。


 離婚した親を憎んでいたのに。


 いざ自分のことになると、それは違ってくるのか。今は離婚してしまえと、願っている俺がいる。そういう自分に腹が立つ。


 なんであの時、キスしてきたんだろう。


 単純に奥さんと俺を重ねただけなんだろうか。どうせ俺は女顔だ。それは否定しない、現に母親の若いころそっくりだと、小さな頃言われた。

 でもそんな理由で、男にキスするだろうか。


 でもそう思うと全て、俺の理想に過ぎない。


そうであればいいと俺が願うようにただ思えているだけで、実際は単なる気まぐれなのかもしれない。

 だって魔王は、未だ奥さんが好きなんだろう。杉下さんが言ってたじゃないか。


 でもどれだけ悩んでも、想っても変わらないものもある。俺にはどうしようもないことだ。あの人の気持ちは、俺には変えられない。


 きっと、この想いは通じ合うことはない。


 俺はそう思いながら、夢の中におちてった。



◆◆◆◆◆



 久々に訪れた高級マンションの前。そう俺は北条宅に来ていた。ちょっと前までは頻繁に訪れてたのに、今は少し緊張する。ここにひとりで来るのは初めてだったな。合鍵があるから、最上階の家に行くのに何の苦もなかった。


 玄関のドアの前に立ち止まって、俺はふと思い至った。このまま鍵だけ置いて帰ればいいんじゃないかと。だいたい今居るかわからないし、会うのはなんとなく気まずい。あんなこと言っちゃったし、キスしたわけだし。会って平常でいられる自信がない。


 でも郵便受けはない。厳重なセキュリティだったとしても、家の前に鍵を置くのもどうだろう。


 そんなことを考えてたら、家の中からかすかに怒鳴り合う声が聞こえた。男と女の声。男は多分魔王だと思う。女の方は聞き覚えがない。もしかして奥さんだろうか。だったといたら、やっぱり今はいるのはまずいんじゃないのか。


 帰ろうかな……。

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