魔王の面影
お久しぶりです。
投稿再開します!
ため息をつくと幸せが逃げるっ言うけど、あれは本当だろうか。でもそんなこと言ったら、もう俺の幸せなんかとっくになくなってるんじゃないのか。あぁ、だからなのか。
俺にはもう幸せなんかないんだ。
「ハァ……」
ここ数日、ため息の数は数え切れないほどだ。気がつけば出てるし、それに気づいてまたため息をつく。その繰り返しは、もううんざりする。
いくらその考えを払拭しようとも、なぜか頭から離れない。ほかのことに意識を反らせても、気づけばまた考え込んでる。いやになる。
この前なんか、生徒が来てるのにも気づかずため息をついて、逆に心配された。なにやってんだろうな。あの日のあのキスから、ずっとこんなかんじだ。あの日の晩は泣きながら寝たんだ。なんて女々しいんだ俺。バカじゃないのか。大体、なんで泣くんだ。
気づけば魔王のせいにしている。そうでもしなければ、このどうしようもないモヤモヤが晴れない。いや、一層もやもやが増してる気がする。
そんな魔王は、あの日以来会ってない。保健室にも来ないし、俺もあいつの家に行ってない。今のこの状況は、俺の望んだ状況だったはずだ。いい加減、こられても迷惑だったんだし、これでよかったんだ。
「寂しいとか……あるわけねぇだろ」
俺は今、自宅にいる。こじんまりとしたマンションの一室。一人暮らしにはなんの不自由もない広さ。以前はちょうどいい広さで、なんとも思わなかったのに。
今は寂しさが募る。テレビをつけてないと、孤独をひしひしと感じる。
誰かと一緒にいる暖かな家を知ってしまったから。
「有智……ちゃんとご飯食ってるかな……。また出前とかじゃないよな……」
そんなことを一日のうちにどれほど考えただろうか。気づけば同じようなことばかり、考えてた。おかげで仕事のケアレスミスは半端なかった。
だいたいなんで俺が、こんなことで悩んだりしてんだよ。いつもいつも、魔王は俺を振り回して、立ち去っていくんだ。どこまで俺は他人に振り回されなききゃいけないんだよ。だいたい、魔王と初めて会った時だって、わけもわからない俺をまるであざ笑うかのように、散々いじりまくって帰ってたんだぞ。
まだ今の学校に来たばっかで、右も左もわかってなかった。そんな俺に、奴は嘘八百を教えたんだ。嘘だと気づくのに半年もかかったんだぞ!理事長で俺が逆らえないからって、職権乱用もいいとこだろ!
はじめはイライラしてたんだ。でも文句も言えず、ただただわがままな魔王の行動に迷惑してただけだったんだ。
それなのに、今は別の感情で俺はため息をつかされている。
次回 2月11日19時更新です。




