魔王の思惑
動物園に行ってから2週間。俺は北条宅に行ってはいない。
どうやら魔王の仕事も、ひと段落したようで、今は魔王自身が迎えに行っているそうだ。俺といえば、以前の暮らしに戻っただけで、またいつもどおりの日常を過ごしている。
寂しいとか、思ってしまった。晩御飯はどうしているんだろうとか、考えてしまっている。他人の家庭の心配をしてるなんて、どうしちゃったんだろうな、俺は。
普通に学校で過ごしてて、魔王に会うことはまず、ない。魔王が会いに来ていたからこそ、俺はあんなにも魔王とあっていたわけで、こちらから会おうと思ってもなかなか会えるわけじゃない。
あと30分くらいで放課となるこの時間、保健室には俺だけだ。誰も使用しなかったベットに寝転がり、天井に掲げるようにあげたのは、北条宅の合鍵だ。返すタイミングがなく、今もこうして俺のもとにある。
「なんだろう……この感じ。ぽっかりとして……ひどく、静かだ」
よくこの時間は、今晩のおかずのことばかり考えてた。もちろん今日だって俺だけの晩御飯を考えなきゃいけないけど。なんか違うんだよな……。
「返そっかな……」
「お前が持ってればいい」
「そういうわけに……って、だから何でいつもそんな唐突に!?」
寝転ぶ俺を真上から覗き込むのはやはり魔王。逆光なのに、いやだからだろうか、どこか現実離れしてる雰囲気が漂っている。
「そもそも、これって有智を迎えに行ってから必要になるから俺に渡したんでしょう?それじゃあもういらないじゃないですか。はい、返します」
「お前が持ってろ」
「なんでですか?赤の他人な俺が持ってたら、いろいろ心配でしょう?」
「俺はお前を信頼してる」
「どこからそんな自信でてくるんですか?」
魔王は一瞬の間を置いたあと、俺の上に覆いかぶさってきた。呆気にとられていたけど、俺はすぐ飛び起きようとした。だけど魔王の膝のしたに俺が着用している白衣の裾が有り、どうしても起き上がれない。
シーツの上に両腕を縫い止められ、鍵がポトッと音を立てる。力を入れてもびくともしない、その状況で俺はただやつを見上げるしかできない。
「何してるんですか!?離してくださいよ!!此処どこだかわかってんですか?生徒とか、先生が来たら……」
「鍵かけたから問題ないだろ」
「そうじゃなくて……あんた俺に何してるかわかってんのかって!!冗談やめろよ!」
「冗談?どこが冗談だ?」
「今!!今のこの状況だよ!!あんた妻子持ちだろ!?今ならまだ冗談とかで終われるし!傍から見たらどう見てもこれはおかしい……んっ!?」
俺の文句はまだまだ続くはずだったのに、魔王にそれは阻まれた。
キスという、なんとも信じがたい手段を使ってである。
次回:2月3日19時の予定です




