わたし聖女なんだって!
とある国で聖女に選ばれたミルルカ。
聖女に選ばれた途端王子が膝まづき結婚を前提に婚約を申し込んできた。キラキラプリンススマイルで。
彼の隣には婚約者がいるのに。
「聖女に選ばれしミルルカ・ボット嬢。
私第一王子ユースは貴女に結婚を前提とした婚約を申し込もう」
聖女選定の為王都教会に集った200人の乙女とその関係者達の前で、そういって祭壇から下りてきた王子様はわたしに跪いた。
私の住む国では数十年に一人聖女が選ばれる。
聖女には王族貴族平民関係なく、神様よりさずけられる癒しや防御結界を貼るための強い神力を受け取る為の器を持つ者が選ばれる。
でもその器がなんなのか誰も知らない。選ばれた聖女さえも分からない。
凄い美人だからなるわけじゃない。
頭が良いから優しいから魔力があるからでもない。
その反対でもない。
誰が選ばれるのか本当にわかんないの。
でね。
聖女に選ばれたら、神様が聖女に凄い加護をくれるの、聖女が望む幸せを聖女が望むだけくれる。器になってくれたお礼ってことで。
それなら聖女が自分の親や兄弟友達みんな優しくて好きだったらその人たちの分も幸せを願うじゃない?
誰だって自分の好きな人は幸せでいて欲しいし。
─だからだよね。
王子様がわたしに婚約を申し込んできたの。
「聖女ミルルカ、さあ私の手を……」
キラキラプリンススマイルでユース王子はわたしが自分を選ぶと確信してる笑顔で見上げてくる。
でもさあ。
「ユース王子って婚約者いましたよね?」
わたしの問いにキラキラスマイルが一瞬曇った。
「ああ、だが私と聖女の婚姻は彼女も祝福してくれるはずだ。私が幸せになれば国が富むのだからね」
そうかな。
わたしが聖女に選ばれるまで王子の隣に居た金髪の超美人が扇を今にも真っ二つに折りそうにひん曲げてるけど。
「私、お城のマナーとかなにも知らないけど」
「大丈夫、君は城での仕事などなにもしなくていい。他の者に全て任せるよ。君は城で優雅に自由に過ごせばいいさ」
当たり前だけど場の空気が一気に冷えた。
「え、なんの仕事もしないのにお城に住んで税金で贅沢させるとか有り得ないんですけど?!」
「……は?」
あ。ちょっとキラキラスマイルが引きつった。
「それに見ず知らずのあなたにいきなり婚約申し込まれても困ります」
「……少しずつお互いを知ればいいさ」
「わたしもう結婚前提に付き合ってるひといるし」
王子様の唇の端がひくひくと数回動いた。
「私のほうが地位も名誉もある。その上容姿も良いだろう?もちろん君を愛する努力もする」
「ええ〜」
「まだ条件が必要か?
では、子を成す行為はしなくていい。王妃としての仕事は側妃にさせよう(ここで振り返って金髪美人に頷いてみせた)君は聖女として城に在ればそれでいい。─どうだ?」
わあ。
すごいねこのひと。
祭壇に並ぶ神父様も王様も王妃様も宰相様もみんな怖い顔してるのに全然気付いてない。
目が合った王妃様に唇だけ動かして『言ってもいいですか?』と聞く。
王妃様は深く頷いて親指を下に立てた。
わたしはすうっと息を吸い込んで
「神様ー!このひとわたしと結婚したいんだって!わたしが聖女だから!!」
天井に向かって叫んだ。
「は?」
突然叫んだわたしに王子様はびっくりしてる。
「聖女の加護のおこぼれが欲しいからわたしを愛するフリして結婚してわたしをお城に閉じ込めて自分は別の人と家庭を持つんだって!!」
わたしの言葉に王子様はウンウン頷いてる。このひとなんにも解ってないなあ……。
王様は頭を抱えて唸ってて、神父様と金髪美人と金髪美人のお父さんらしき人は真っ赤な顔で眉を吊り上げて怒ってる。
「どうだ!聖女ミルルカへの私の提案は素晴らしいだろう?……え?」
キラキラプリンススマイルで背後を振り返り王子様はやっと皆が自分を褒めてはいないと気付いたみたい。
「な、なぜ皆そのような顔を……父上!」
周囲をキョロキョロ見回し祭壇の王様に問い掛ける。
「この……!バカむ」
ピシャアアアン!!
王様が『バカ息子!』と怒鳴りきるより先に雷が王子の足元に落ちた。
「ひっ!!」
ざわざわとしていた場が一瞬に静まる。
だってさ。
教会って屋根があるじゃない。
その屋根をすり抜け?て雷がピンポイントで王子の足元にだけ落ちるなんてさ。
なんて言うか、もう、アレじゃんね。
後の歴史書には
『聖女ミルルカ 市井にて家族と共に幸せに暮らし国を富ませた』
と記載され。
ユース王子についての記載は黒く塗りつぶされていたと言う。




