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年齢がレベルの世界

作者: やすすや
掲載日:2026/06/12

『年齢がレベルの世界』


プロローグ


人は生まれた瞬間、レベル0。


一歳になればレベル1。

十歳ならレベル10。

二十歳ならレベル20。


この世界では年齢とレベルは完全に一致していた。


経験値もなければレベル上げもない。


誰もが平等に、一年に一つだけ強くなる。


そして。


レベル80前後で、ほとんどの人間は寿命を迎える。


だからこの世界で最も尊敬されるのは、若くして強い者ではない。


長く生きた者だった。



「レベル16でゴブリン討伐か」


少年アレンは冒険者ギルドの依頼書を眺めた。


年齢は十六歳。


つまりレベル16。


新人としては普通だ。


隣ではベテラン冒険者が酒を飲んでいる。


「見ろよ」


アレンが指差した先には、巨大な剣を背負った男がいた。


胸の冒険者証にはこう書かれている。


レベル58。


周囲の若者たちは羨望の眼差しを向ける。


レベル58。


つまり58歳。


それだけ長く生き延びた猛者ということだ。


「すげぇな……」


「いや、あの人はまだ若い方だぞ」


受付嬢が言った。


「え?」


「本物の化け物はレベル70を超えてる」



王都には伝説がいた。


その名は賢者エルド。


レベル76。


現役最強の魔法使い。


人類最高峰の存在。


しかし。


誰も彼を羨ましいとは思わなかった。


なぜなら皆知っている。


あと数年で死ぬからだ。



この世界には特殊な職業がある。


それが。


遊び人。


戦わず、働かず、酒を飲み、女を追いかけるだけの者たち。


若いうちは楽しい。


しかし遊び人は事故や病気で死ぬ率が高い。


レベル30台や40台で命を落とすことも珍しくない。


だが。


ごく稀に。


レベル50まで生き残る遊び人がいる。


すると職業が変化する。



遊び人 → 賢者



「なんでそんな進化するんだ?」


アレンは昔から疑問だった。


するとギルドの老人が笑った。


「簡単だ」


「?」


「五十年も遊んで生き残れる奴は、だいたい人生の真理に辿り着いてる」


「なるほど」


「死ななかった時点で才能の塊なんだよ」



ある日。


アレンは森で奇妙な男と出会う。


ボロボロの服。


酒瓶。


昼寝。


完全にダメ人間だった。


「おっさん」


「んー?」


「ここ危険だぞ」


「そうか」


「魔物出るぞ」


「そうか」


「逃げろよ」


「そうか」


男は起き上がった。


その瞬間。


森が震えた。


巨大なオーガが現れたのだ。


レベル45。


アレンでは勝てない。


死を覚悟した。


だが。


男は欠伸をしただけだった。


「邪魔だな」


パチン。


指を鳴らす。


それだけでオーガが消滅した。


跡形もなく。


アレンは固まった。


「な……」


「ん?」


「今何した!?」


男は頭を掻いた。


「別に」


「レベルは!?」


「63」


アレンの声が裏返る。


「ろ、ろくじゅうさん!?」


男は笑った。


「元遊び人だ」



元遊び人。


現在賢者。


その名はゼノ。


世界最強クラスの一人だった。


「坊主」


「はい!」


「強くなりたいか?」


「なりたい!」


「じゃあ長生きしろ」


「え?」


「この世界で最強になる方法は一つだ」


ゼノは空を見上げた。


夕日が沈んでいく。


まるで人生そのもののように。


「死なないことだ」



その言葉を聞いたアレンは知らなかった。


数十年後。


自分がレベル78に到達し。


最後の賢者と呼ばれることを。


そして。


人類の寿命そのものを覆す秘密に辿り着くことを。


これは。


レベルと年齢が同じ世界で。


誰よりも長く生きようとした男の物語である。

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