表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう戻らない令嬢の話――偽物の聖女と断罪されて、魔族に拾われました  作者: 紡里


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/61

光の家で(前編)

 その日、ベネデッタは部屋から出ないようにと、リーナに言われた。

 司教が来るから、見つかったら連れ戻されるよと。

 絶対に出ない、鍵を掛けると誓った。


 猪の子どものような魔物が、遠見鏡をつけてベネデッタの部屋に来た。

 魔物と二人で大人しくしていろということかと思ったら、リーナも部屋に来た。

「ワイルドボアのボウちゃんだ。いざとなったら土魔法で守ってくれるんだ」


 ボウはリーナの言葉にうなずいた。


「ボウちゃん、よろしくね」

 そう言って背中を撫でると、気持ちよさそうに目を細めた。


 軽食と飲み物をリーナが用意して、ベネデッタの部屋はちょっとしたお茶会のようだ。


「父ちゃんが来て、ここで司教を出迎えるんだ。

 そっちのお茶の用意もしてきたでね」


「それなら村でお話しした方がいいのでは?」


「ううん。あの司教が父ちゃんを魔の森に捨てたんだ。うんと昔のことだけど。

 どの面下げて来るんだべな」

 リーナが静かに怒っている。



 玄関を開ける音がした。登録してある魔力を流すと開く仕組みを、鍵の代わりにしている。


 聞こえてくる声から推察すると、ムスがルカを眠らせた状態で連れてきたらしい。

 ルカは司教の実の息子だが、表向きは甥という関係だ。


 部屋の鍵を開けて廊下を見ると、使っていない部屋にルカを運び込んでいるところだった。

 話の流れで乱入させた方が面白そうなら、彼を起こすそうだ。


 ゴリラのような立派な体格の魔物は、ルカを床に置くと軽く頭を下げて家を出て行った。

「あん人は、わりと紳士的なんだ」

 リーナがこそっと教えてくれた。



 ムスはするするっと棚の上にのぼった。

「僕は置物のふりをして、見物してるから」



 リーナの父が入ってきた。

「ベネデッタさん。初めまして。パオロと申します」


 昔この家に住んでいたことがあるので、鍵を開けることができると説明された。


「こんな可愛いお嬢さんが住むなら、私の魔力登録は削除した方がいいかもしれないね」


「でも、パオロは研究で奥の部屋を使うでしょ」

 ムスが棚の上から会話に参加した。


「まあ、その辺りは後で相談しましょうか。

 そろそろ、招かれざる客が乱入してきそうですよ」

 パオロの言葉で、ベネデッタとリーナは部屋に隠れた。



 だん、だんと乱暴に扉が叩かれた。

 パオロは玄関まで歩いて行ったが、そこで立ち止まり、黙り込んだ。


 外にいる人物には、中にいるパオロの足音が聞こえたはずだ。


 お互いに相手の様子をうかがうような時間が流れる。



 沈黙の後、罵る声が響いた。


 パオロはその悪口が引き金になり、昔の因縁を芋づる式に思い出す。

 そのたびに許せない記憶が蘇り、表情が抜け落ちていく。


 ムスは棚の上から、それを面白そうに眺めていた。

 普段は明るい人間が見せる、仄暗い側面が堪らなく魅力的なのだ。



 外にいる人物はしびれを切らしてドアノブに手をかけ、ガチャガチャと開けようとした。


 パオロは「誰かいないかと、声もかけずに不躾な」と小さく呟き、テーブルに戻って椅子に座ってしまった。

 足を組んで、外の人物がどう行動するのか観察し始めた。



 外から扉を蹴る衝撃が、家全体に伝わる。

 ベネデッタはリーナと抱き合って、恐怖に耐えた。


「足に強化魔法でも使ったんだべか。無法者だな」

 リーナはぶつくさ文句を言ってから、ボウを抱き寄せた。そうすると遠見鏡が見えなくなってしまうが、震えている魔物を安心させる方が重要だ。



「だ、誰かいるんだろう? は、早く開けなさい!」

 ついに司教が大声を上げた。一人で暴れて息が上がっているようだ。


 パオロは面倒くさそうに立ち上がり、ムスに話しかけた。

「ムステッロ様。扉を開けたら、顔に飛びついて引っ掻いてやってほしいのですが、よろしいですか?」


「ん? それはいいけど。話し合いはやめるの?」


「あの男の性格を思い出しました。変わっていないようなので、おそらく話し合いになりません。

 持論を押しつけて、喚くだけなので時間の無駄かと。

 それによく考えたら、醜悪なものを自分のテリトリーに入れたくありませんので」

 眉間に深いしわが刻まれている。


「ええ? 言い合いしてほしいのにな」


「では、ムステッロ様が飛び出した後にチェーンをかけます。

 扉越しに少し話しますので、屋根の上からのぞき見していただけますか?」


「んん。それでもいっか。了解」

 ムスは軽々と棚の上から飛び降りた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ