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もう戻らない令嬢の話――偽物の聖女と断罪されて、魔族に拾われました  作者: 紡里


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内緒の遠足

「ベネ、聞いて聞いて」

 ムスが光の家にいるベネデッタを訪ねてきた。


 背中に荷物をくくりつけている。

「これね、お土産」

 小さな子どもが褒めてほしいという時の得意げな顔で、ムスは包みを開いた。


「まあ!」

 ベネデッタは控えめな喜びの声を上げた。

 清貧を謳う教会の食事。その中で、結界の間の仕事など特別な働きをした時にもらえる焼き菓子だ。

 久しぶりに見る「ご褒美」に、ベネデッタの頬が緩む。


「ムスは王都に行ってきたの?」

 ベネデッタはムスの様子をうかがうように訊いた。

 王都に魔物が侵入したら事件として騒ぎになったはずだ。

 聖女たちの結界が、うまく張れていないのだろうか。


「……僕くらい小さかったら、門の隙間から入り込めるって。

 しゃべらなければイタチに見えるし」

 ムスは何を言おうとして口を閉じ、ベネデッタの様子を観察してからしゃべった。

 なにか都合の悪いことを隠そうとしていると感じた。


 だが、ベネデッタが王都の安否を考えたところで意味はないと思い直す。

 偽物の聖女として追われ、こんなに魔族に世話になっているのだから今は「裏切り者」と呼ばれるだろう。


「ムスは怪我しなかったのね? 無茶をしてはだめよ」

 そう言うに留めた。


「無茶したかったけどさぁ、ラモーゾがあれやるな、これは危ないって禁止ばっかり。

 もうね、主に任されて、はりきっちゃってさ」


 また、言い合いをしながら楽しく用事を済ませてきたのだろう。

 ベネデッタは微笑みながら聞いていた。


「今回は下見だったから、また人族のところに行くよ。

 持ってきてほしいものとか、手紙を出したい人とかいる?」

 ムスはベネデッタがお茶を淹れるのをまたずに、持参した焼き菓子をむちゃむちゃ食べ始めた。


 ベネデッタはお湯が沸くのを待つ間、考えた。

 お菓子は嬉しいけれど、それを盗んできたなら頼んではいけないと思う。

 会いたい人も、無事を連絡したい人も思い浮かばない。


 大聖女には目をかけてもらったが、彼女に嵌めさせられた腕輪を外してから体調が良くなった。魔の森にいるにもかかわらず……。

 あの腕輪から聖力を抜き取られていたなら、事前に説明してもらえなかったことに不信感が募る。

 また利用されるなら、死んだと思われていてもいい。


 ベネデッタはお茶を三人分淹れて、テーブルに戻った。


「あれ? 三つ? リーナもいるの?」


「いえ、そろそろ来る予定なの。

 それと……人族の世界から持ってきてほしいものとか、連絡してほしい人とか、今は特にないみたい」

 ベネデッタは断言を避け、軟らかい表現を使った。後でお願いしたいことが思い浮かぶかもしれないので。


「ねぇ、それだったら、ベネも魔族になっちゃう?」

 ムスがとんでもないことを言い出した。


「なっちゃうって……そんな気軽に言うものでもないでしょう。

 そもそも、人族が魔族になれるの?」

 ベネデッタは苦笑いしながら、冗談のつもりで言った。


「……なれるよ?」

 ムスの目が怪しく光る。


「光属性の魔力を持っている魔族もいるんだ。

 時々、人族に闇属性の魔力持ちが現れるみたいにね。だから――」


 ムスの様子がいつもと違うような気がして、ベネデッタは怖くなった。



「おはよーさん」

 リーナの明るい声がして、ムスは言葉を切った。


「あー、ムッさんがいる。

 なんか、王城で大暴れしたんだって?」


 ムスがむせた。

「え、なんで……」


「商人がこの国を出るって、大急ぎで村を通り過ぎていったさ」

 けらけらとリーナは笑う。


「ベネに乱暴者って嫌われたら、どうしてくれるのさ」

 ムスはリーナにぷんぷん怒って見せた。


「言われたらマズいことなんか、やらなきゃいいべさ」

 リーナは、ムスをまるで弟のようにあしらった。


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