ソフィア
性的虐待の記述があります。苦手な方はご注意ください。
私は放置された子どもだった。
父は魔道具にのめり込み、母は子どもの面倒などみる人じゃなかった。
たまに来る使用人にご飯をもらい、泣くと父か母に殴られる。
機嫌がいいときは、美味しいものを食べさせてもらえたし、お風呂に入って綺麗な洋服を着せてもらったりした。
父の仕事仲間という人は、優しかった。
お土産をくれて、抱っこしてくれた。
だから、べたべたと体を触られたとき、気持ち悪かったけど嫌だと言えなかった。
構ってもらえて、可愛いと言われて、幸せな気分になったし。
それから、心細いときや欲しいものがあるときは、触らせてあげることにした。
もっともらえるように、焦らしたり駆け引きしたりすることも覚えた。
十一歳のときに、母は私を連れて異国の男と結婚した。
父と離婚したのか、そもそも結婚していたのか、私は知らなかった。
そして、「ソフィア」という名前をつけられた。
「貴族っぽくて、賢そうな名前だろ」と母が笑った。
一歳下の義理の妹ができた。
母親を亡くしたばかりという可哀想な子だ。
いい服を着て、髪もさらさらだけど、可哀想。
義理の父は私たちをお屋敷に連れて来たら、すぐに外国の仕事場に戻って行った。貴族も平民も父親というものは、仕事だけするものらしい。
義妹と何を話せばいいのだろう?
私が教えてあげられるのは「おねだり」の方法か。
私はそれが悪いことだとも恥ずかしいことだとも思っていなかった。
だから、侍女がいても気にしないで教えようとしたんだけど、悲鳴を上げられた。たくさんの大人が走ってきて、母にぶたれた。
なんで? 生きていくためには必要なことでしょう?
義妹と一緒に家庭教師にマナーを習うことになった。
意味不明なことをさせようとするから「くだらない。馬鹿みたい」と正直に言ったら、怒って辞めていった。
次に来たのは男の家庭教師だった。
授業中に太ももを触ってくるけれど、たくさん褒めてくれるからまあいいかと思った。
母は義妹をみすぼらしくしようとしていた。侍女を取り上げ、変な服を着せ、狭い部屋に追い出した。
絵本で見た継子いじめみたいだなぁと眺めていたのよ。
義妹が十二歳のときに、彼女は聖女となった。
私が育った国にはいなかったけれど、こちらの国にはいるのね。特別っぽくて羨ましい。
でも教会で長い時間お祈りすると聞いて、可哀想と思ったわ。
そして次の年、彼女は王太子の婚約者になった。
純潔を守ることを教えるために「閨教育」をするという。私も同席した。
――貴族の娘は、生娘でなければ価値がない――
え?
どういうこと?
私は、もう……。だって、そうしなければ、欲しいものが手に入らなかったんだもの。
それでは、私は「貴族のご令嬢」になれないの?
まともな結婚ができないの?
ああ! ベネデッタをいじめている母も、彼女の貞操を汚そうとはしていない。
嫌らしい家庭教師が私に手を出すのは黙認しているけれど、ベネデッタを相手にするのは許さないと言っていた。
つまり、そういうこと?
――ベネデッタが憎い。
どうして彼女だけ守られているの?
許せない。
その立場を奪って、私がそこに座ってやる。
そう決意したとき、私は十四歳だった。
勉強から逃げ回っていたため、貴族の学園に入学できる状態ではなかった。
それから二年かけて、貴族らしさを身につけた。
年を誤魔化して、ベネデッタの義理の姉ではなく妹として入学し、王太子を誘惑した。
女の魅力で、イチコロだったわ。
私は魔道具が発達した国で生まれた。
父は魔道士で、魔道具の開発にのめり込んでいた。
母はその父と今も繋がっているようで、ベネデッタから聖力を分けてもらう腕輪を手に入れた。
そのままベネデッタに渡したら怪しまれるので、教会の人間から彼女の手に渡るようにしたそうだ。
司教と次席聖女が味方になってくれたという。
ベネデッタが教会に行くのに着いていった。
魔力判定の道具へ、ばれないよう腕輪から魔力を流す。それはベネデッタの聖力だから、当然聖女という判定になるわけだ。
ベネデッタは聖女だから王太子の婚約者になったんでしょう?
それなら、王太子の恋人の私が聖女になったんだから、婚約者になれるはずよね。
私は王太子妃になって、皆から愛される。
更に王妃になったら、誰も私に逆らえない。
そうしたら、触られるのを我慢することもないのよ。嫌なときは手を払ってもいい……わよね?
全ての望みを叶えるわ。
私を馬鹿にした人間を痛い目に遭わせてやることもできる。
早く王太子の婚約者になりたいわ。
もし、王様が反対しているなら、王様もいい気持ちにしてあげれば認めてくれるだろうし。
人生、楽勝よ。




