表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう戻らない令嬢の話――偽物の聖女と断罪されて、魔族に拾われました  作者: 紡里


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/26

結界

 あれから何日経ったのだろう。

 ベネデッタは柔らかいベッドで、うつらうつらしていた。


 昼間でも薄暗いこの森の中では、昼と夜の境が曖昧だ。

 それに加えて、今までの疲労が溜まりに溜まっていたベネデッタは熱を出し、寝込んでいる。

 起きたときに昼間か夜か、よくわからなくなっていた。


 果物やポタージュ、おかゆのようなものを少し食べてまた眠る。

 何か役に立つことをしなければと気持ちは焦るが、なにもできないままだ。



 村娘のリーナが持つトレイに、パンが乗っていた。

「ちょっこし、食べてみんべ」


 小麦とバターの香りが、久しぶりに食欲を刺激した。

 母が亡くなって以来、初めて湧いた食欲かもしれない。


 貴族たちのパンに比べたら粗い粉だが、生きる糧として、心からありがたいと感謝の念が湧いてくる。


 ふと、魔王城に来る前に見た魔族の薄いパンを思い出した。

 聖女が食べても大丈夫かわからないと言われ、少しかじっただけ。

「洞窟にラモーゾが持ってきてくれたパンを置いてきてしまったの。無駄にしてしまって、申し訳ないわ」


「ああ、誰かが食べてっと思うな。気にせんでええべさ」


「リーナ、これは人族のパンなのかしら?」


「ああ。ベネさんが寝てる間に、軍は引き上げた。んで、主様が森の入り口の幻術を解いた。

 聖女の結界が薄くなってきたから、村との行き来が楽にできんだ」


 ベネデッタは自分の手首を触った。半年前からつけていたブレスレットがない。

 そういえば、ムスが持って行ったような気がする。

 ……実は、森に来てから記憶が飛び飛びになっているのだ。


 大聖女から後継者の修行のための道具と聞いている。追放されたとき、返すべきだったのかもしれない。



 大聖女に見込まれていたのに、王太子に偽物と言われてしまった。

 教会と王家で意見が食い違ったのだろうか。

 王太子の独断だとしても、誰も助けてくれなかった。家族以外にも、そんなに疎まれていたなんて……。


 ここで考えたところで、何かが変わるわけでもない。もう、王太子のために何かしたいとも思わない。


 いえ、王太子のためにと思ってやったことなんて、ひとつもないわね。

 周りに言われたことをやっていただけだもの。

 誰も、わたくしに「どうしたいか」なんて訊かなかった。



 ここでは、よく尋ねられるわ。

 どうしたい?って。


 考え慣れていないから、ちょっと疲れてしまうわね。

 今までのように「どうせ、わたくしがどう答えようと、好きにするのでしょ」と投げやりになることが許されない。



「結界がなくなったら、大変なことになるのかしら」

 聖女が結界を張るのは、大切なお勤めだ。

 だが、ここでは魔族と村の人は「結界が強すぎる」とか「薄くなった」とか、平然と話している。

「結界が破れたら一大事」という雰囲気は感じられない。


「ああ、魔の森の周辺は、それなりにお付き合いがあるかんね。物々交換するしさ。

 瘴気がちょっと漏れてきたくらいじゃ、なんともないし。ちっこい魔物なんか怖くねぇし。

 半年前からの結界が強くて行き来できなくなった時だって、ちゃんとした門からは出入りできたんだ。

 遠回りしなくちゃでおっくうなのと、門番してる兵士に目をつけられたら面倒だってくらいでさ」


「じゃあ、わたくしの聖力で結界を張っていたのは、意味がないのね」


「王都の城壁内は、もう一段強い結界で守られてるって聞いたべ。だけん、お貴族様は瘴気に耐性ないかもな」


「ふふ、村の人たちに影響がないなら、よかったわ」


「お貴族様には『ざまぁみろ』だな」


「それは、聖女として言ってはいけないような……」


「偽物って言われたんだべ? もう、清く正しくしなくてえんだよ」


「あ……」

 ベネデッタはあまりの衝撃に、言葉を失った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ