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鍛冶屋の俺、拾ったトカゲが押しかけ美少女ドラゴンになって嫁に来た

作者: 風風風虱

◆ ◆ ◆


 鍛冶屋をやっていると、まれに“妙な拾い物”をする。


 たとえば森に落ちていた鉄塊を持ち帰ったら、実は古代迷宮の鍵だったとか。

 羊飼いの子どもが拾ってきた石が、魔王の封印核だったとか。


 ――しかし、今日の拾い物は、そのどれよりも意味がわからなかった。


「……おい、生きてるか?」


 手のひら大の、小さなトカゲ。

 体長二十センチ、細い尻尾は折れ、全身に小さな傷。


「キュ……」


 弱々しく鳴くと、小さな舌で俺の手の水滴をちょい、と舐めた。


「かわいいなお前……。ほら、飲めるだけ飲んどけ」


 俺は革袋から布を取り出し、そっと包んでやった。

 鍛冶屋の仕事とは無縁の優しさだが、見捨てることなんてできない。


「元気になれよ」


 そのまま家に連れて帰る。その時は、ただの善行のつもりだった。


◆ ◆ ◆


 翌朝。


「…………なにこれ?」


 自分の家の前に、金色の髪の少女が座っていた。


 服は着ていない。

 肌も光っている。

 人間離れした美しさだ。


 そして――


「おはようございます、ライルさん」


 俺の名前を知っている。


「きのう助けてくださり、ありがとうございました!」


「き、きのう? 俺、誰か助けたか……?」


 トカゲしか思い当たらない。そう言えば、あのトカゲの姿がない。


「ま、まさかお前……」


「はい! わたしです!」


「やっぱりか!!」


 少女は胸を張り、満面の笑みで言った。


「わたし、本当はゴールドドラゴンなんです!」


「ドラゴン!?」


「実は思いがけないことに少々怪我をして困っておりましたところをライルさんに助けていただきました。

 その恩返しに来ましたした。今日からあなたのお嫁さんになります!」


「な ん で そ う な る!?」


「だって恩返しです!」


「色々すっ飛ばしているし、恩返しの方向性おかしいだろ!!」


 朝の村に、俺の声が響き渡った。


◆ ◆ ◆


 エルナ――黄金竜の少女。

 押しに弱い俺は、結局家に入れてしまった。


「ライルさん、これ使ってください!」


 エルナは自分の鎖骨のあたりをつまむと、

 ――ぺりっ、と鱗を一枚剥がした。


「ぎゃああああ!? る、る、流血とかしないの!?」


「しませんよ。ほら、すぐ生えます」


 確かに、剥がした箇所はすぐ光り、ぽわりと新しい鱗が生えてくる。


 渡された鱗は、どう見ても黄金。

 手触りは金属なのに柔らかく、魔力が溢れ出している。


「……うそだろ、これ素材として反則じゃねぇか」


「ライルさんのためです。旦那さまには良い武器を持ってほしいので!」


「旦那さまじゃねぇ!!」


 言い争いながらも、俺は試しに鱗を鍛えてみた。


 カン、カン、カン――。


 叩くたびに光が広がる。

 魔力が金属に浸透し、やがて一本の短剣が完成した。


「……なんだこれ……魔力循環してやがる。

 魔物特攻の符文まで勝手に浮かぶって……

 国が買いに来るレベルだぞ、これ……」


「どうですか?」


「どうですか、じゃねぇよ……使い方次第では国家転覆できるぞコレ……」


「ではもっと鱗を剥いで渡しますね!」


「やめろォ!!」


◆ ◆ ◆


 夕方。


 村に――とんでもないものが現れた。


「フハハハハ!!

 我こそは、魔王軍四天王・バルガス!!」


 山のような筋肉。牛の頭から生える角が禍々しい。風にひらめくマントには咆哮するライオンの紋章。



「魔王軍の紋章。ライルさん……あれ、本当に四天王です……」


「なんで四天王がうちの村に!? 観光地じゃねぇぞ!?」


「黄金竜の気配があると聞いてなぁぁ!!

 出て来い! 我が拳で木っ端微塵にしてくれる!」


 背後でエルナが小さく囁いた。


「ライルさん、わたしが……!」


「いや待て! まずは俺にやらせろ!」


「えっ!?」


 俺は短剣を握りしめ、バルガスの前に立った。


「人間ごときが相手とはな……笑わせる!」


 バルガスが斧を振り下ろす。

 大地が割れ、衝撃波が俺に向かって走る。


「くっ……!」


 恐る恐る目を開けると薄緑色の光が衝撃波を防いでいた。


「自動発動の防壁魔法。まじで伝説級だぞ、この短剣」


「さすがです、ライルさま!」


 エルナの声に勇気が湧いてきた。


「やるぞ――!」


 短剣を構え、一気に踏み込む。


 一瞬。

 本当に一瞬だった。


 黄金の閃光。

 四天王バルガスの巨体が“真っ二つ”に裂けた。


「……え?」


「……嘘だろ、短剣で……?」


「旦那さま、すごいです!!」


 エルナの瞳がきらきらと輝く。


 すると、倒れていたバルガスの上半身がぴくりと動いた。


「ぐ……は……

 だが……覚えておけ……!!

 我は四天王の中でも最弱……!」


「出たよ……!!」


「あの向こうの山頂の我が同胞三人が必ずやお前を(ころ)――」


 バルガスは震える指で遠くの山を指差した。


 その瞬間。


「――ふんすっ!!」


 エルナの瞳が黄金に輝き――


 ビィィィィィィィッ!!!


 光線が放たれた。


 遠くの山頂が、

 音もなく“蒸発”した。


 そこにあったはずの岩、木、城壁――

 全部なくなった。


 その場の全員が固まる。



「…………」

「…………山……?」

「…………どこいった?」

 と村人のみんな



「えっ……」

「ま……まってください……」

「三人……え……ええぇ……」

 半泣きになりながら塵と化すバルガス


「……お前、強すぎねぇか?」


「だって旦那さまを殺すとか言ったんですよ!!」


「だから旦那さま言うな!!」


◆ ◆ ◆


 村は大騒ぎになった。

 四天王撃破。

 さらには山頂蒸発事件。


 俺はというと、騒ぎの中でひと息ついていた。


「ライルさん」


「なんだよ」


 エルナが、少し不安そうに近づいてくる。


「……わたしのこと、嫌いになりましたか?」


 あの化け物じみた強さのあとで、こんな小さな声を出すのかと思うと、胸が痛んだ。


「……嫌いじゃねぇよ」


「!」


「むしろ、なんかもう……好きにしろって感じだ」


「はいっ!!」


 エルナは跳ねるように喜び、本当に嬉しそうに尻尾を出した。


「尻尾出てるぞ!!」


「あっ、恥ずかしいっ!」


 エルナは慌ててくるりと後ろを向いた――

 その瞬間、しっぽが暴走した。


「え?」


 太い黄金の尻尾が、うねって俺に襲いかかる。


「うおおおおッ!? ちょ、待て!!」


 間一髪で横に飛んで避ける。

 尻尾は俺の横にあった大木へ直撃し――


 メリメリメリバキィィィッ!!


 とんでもない音を立てながら、大木が根元から“へし折れた”。


「え、えぇ……?」


 折れた木がドサァンと倒れる。


 砂埃の中で、俺は震える声で一言。


「……あ、あぶねぇ。

 俺、本当に……これからも生きてられるかな……」


 ――たぶん、この先も大変だ。

 でもまあ、悪くない。

「ゴールドドラゴン娘の押しかけ溺愛」をやってみたくて書いた短編です。

エルナの“可愛いのに危険”感が少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。


反応をいただけたら、

ライルとエルナのいちゃらぶ続編もぜひ書きたいと思っています!


※本作の原案作成にAI補助を使用し、最終的な文章は作者が加筆・編集しています。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。とても楽しく読ませていただきました。
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