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星間の妖精(エルフ)  作者: tk7_sf
第10話 シルフの独り立ち
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10-5 博物館

「さっきは手伝ってくれてありがとう。」

 俺は西暦ロボに量子通信で手伝ってくれたことをお礼を言った。

「礼には及ばぬ。」

「そんなことはないよ。とても助かった。君以外にもおしゃべりできる機械はないの?」

 起動したのは今しゃべってるロボットだけ。

「うむ。起動できたのは我のみだ。」

 そっか、ざんねん。

「ちなみに君は何のロボットなの?」

「我は学芸員である。」

「学芸員? なんの?」

「シルフ殿が我らを引き出した場所のだ。」

「あの祠? あれってなんなの?」

「博物館である。」

 なんと。

「そうだったんだ。じゃあ、案内してもらえる?」

「うむ。承った。」

 早速、祠だと思ってた博物館に入った。

「入口、壊されてしまったけど大丈夫?」

「問題はない。ご心配頂き、痛み入る。」

 荒らされた展示物は幸い、入口付近だけ。というか、エントランスより奥の展示室には立ち入られていないようだ。つまり、そこを最初に見る人類は俺だということ。役得だね。

「エントランスは携帯武具の展示である。」

 なるほど。侵入者さんはここでピストルを入手したのか。展示を見るとその仕組みもわかった。だけどさあ、銃弾もセットで置いておくなよなぁ。

「俺ね、その盗まれたピストルで撃たれたんだぜ。」

「それは実に興味深い。大事がなかったようで何よりである。」

 ちょっと皮肉をこめて言ったんだけど、通じなかったよう。まあ、それを指摘するのも性格が悪いからやめよう。

 携帯武具はナイフやピストルなど手のひらサイズの武器の類だそうだ。平和な時代しか知らない俺はこれらで何をしていたのかは想像するのも嫌になった。

 奥に進む。

「第一展示室は中型の武具の展示である。」

 中型、1メートル前後の武器の類が展示されている。剣やライフルと呼ばれる銃だ。

「このあたりのライフル? のエネルギーってどんなものなの?」

「銃身長にもよるが4000ジュール程度である。」

 侵入者さんがこのあたりの武器をもっていたらちょっと危なかったかもな。ピストルと違って装弾数も多いようだし。船外着には通じなくても船室でこんなの乱射されたらバーレイに深刻なダメージが出ていたかもしれない。

 次、次。

「第二展示室は大型の武具の展示である。」

 大口径ででっかいライフルや機関銃と呼ぶもっとでかい銃火器が中心だ。この展示室にある銃火器で撃たれていたら大変なことになっていただろうな。まあ、この大きさだと船内で俺に狙いをつけることはできないだろうけど。

「しかし、物騒なものばかり展示されてるな。」

「ここは武具や兵器の博物館である。」

 あらやだ。暴力反対な俺にとっては面白くない施設だった。とはいえ、ちょっとだけかっこいいと思ってしまうのはなぜだろう。

 どんどん先に行こう。

「第三展示室は大型兵器の展示である。」

 大型兵器、ミサイルやロケット。火薬や推進剤を燃焼させて飛翔する兵器。さすがに実物は展示されていないが航空機や水上船から発射されたらしい。航空機、かっこいい。宇宙船もこういう格好いいデザインにしてほしいな。

 次だ、次。

「第四展示室は宇宙戦争時代の兵器の展示である。」

 西暦の人たちは宇宙でも戦争していたのかよ。呆れちゃうね。

 宇宙戦争時代は質量や爆発物を利用した兵器よりも光やマイクロ波などの電磁波による攻撃がメインだったようだ。交戦距離が遠くなり質量兵器は届く前に迎撃されてしまうのだとか。

「以上である。」

 以上か。ちょっと心躍る展示もあったけどやっぱり兵器はない方がいいね。

「どうしてこんな惑星に博物館なんて作ったんだろう。」

 つい、そんな独り言をつぶやいてしまう。

「争いを繰り返さぬためである。」

 そっか。そんな理由か。今でも平気で暴力をふるう人はいる。人間が人間である限り争いはなくならないのだろう。それでも今は西暦よりずっと平和だ。少なくとも俺が目覚めてから数千年の間に戦争のような争いは起きてない。

 祠の外に出る。天日干ししていた機械たちが目覚めている。

「シルフ殿が博物館の最奥部まで見学されたからである。」

「俺が?」

「左様。シルフ殿は西暦人なのであるから。」

「俺はエルフだよ。むしろ、その辺の人よりずっとヒト離れしていると思うけど。」

 言いながら考えてみたら、世代的には確かに西暦の人に近いかも。なにせ、俺たち第一世代エルフは西暦時代の難破船の生き残りなわけだし。

「なるほど、俺が西暦時代のレガシーに良くしてもらえるのはそういうことなのかな。」

「うむ。我らを目覚めさせるにはシルフ殿など西暦人に近い世代の声が必要である。」


 付近を探索していたら侵入者さんが乗ってきたであろう宇宙船を見つけた。侵入者さんはぶっ壊れていると言っていたとおり見るからに破損している。一応、中も見ておこう。

「おじゃましまーす。」

 あれま、ずいぶんと内部もあれている。辛うじて生命維持は可能だけど、そう長くは持たなそう。船外着のコンピューターを介してバーレイにも見てもらう。

「船のAIにもアクセスできませんね。燃料が漏れて、バッテリーの残量のみで駆動しているようです。」

 素直に助けてくださいと言われれば仲良くできたろうに。。極限状態でピストルを持っていたらそれを使って状況を打破したいと思うのかなぁ。

 いやいや、俺はゼロGカラテのブラックベルトというそれを持たない人からしたら凶器みたいな拳をもっているけど、拳をむやみに人に向けたりはしない。というか、そういう俺だからマスターは俺にそれを授けてくれたのだろう。俺が道をそれてしまったらマスターが悲しむ。マスターの悲しむ姿を俺は見たくない。

「バーレイ、この船のAIを起こせないかな?」

「横付けしてブースターケーブルを接続すれば可能です。なにかお考えがあるのですか?」

「うん、確かめたいことがあって。」

 来てもらえば楽なんだけど、搭乗員が乗り込んでいない時に船は動かない。いったん戻り再訪した。ブースターケーブルをバーレイの指示に従って接続して、バーレイは侵入者さんの船のAIを再起動した。

「初めまして。シルフ様、私はビガスの船のパーソナルAI、カニンと申します。以後お見知りおきを。」

 ビガスというのは侵入者さんの名前だろう。

「うん。初めまして。ビガスはうちの船、バーレイに乗船してもらっている。こっちも食糧事情に課題があるから仮死してもらっているけどね。」

 ビガスに銃撃されたので返り討ちにしたことは言わずとも良いだろう。

「ビガスがご迷惑をおかけして恐縮です。わざわざ私を再起動したのには理由があるかと思いますが、どういったご用件でしょうか。」

「話が早くて助かるよ。まあ、そのまま戻っても良かったんだけど、付近を探索していたらカニンを見つけたんでね。ビガスが大切にしてるものだとか、なにか持って帰ってほしい物を運べそうなら運んであげようと思ってね。」

「ご配慮、ありがとうございます。シルフ様。」

 リンクスと違ってバーレイは積載量がとても大きいので今回の探査はペイロードに余裕があるからだ。

 カニンはいくつかの物品をピックアップした。写真、家族かな? ずいぶんと年季の入っている時計、その他こまごましたもの。それとカニンのAIのバックアップ。

「痛み入ります。シルフ様、バーレイさん。本当にありがとうございます。」

「できれば、サルベージしてあげたかったんだけど、そこまでは協力できなくてごめんな。」

「いえ、本当にお気持ちだけで十分です。ビガスを無事に人里まで連れ帰っていただけるだけで私は本当に十分なのです。あなたたちが来なければビガスを助けることはできませんでしたから……。」


「シルフ、カニンはおそらくビガスのしでかしたことを知っていたようですよ。」

「だろうね。俺たちが着陸して留守を狙って侵入するの早かったしね。」

 彼は極限状態だったのだろう。俺も探査員でそんな経験は何度もある。エルフの特性ゆえに自己統制が働くけど、ヒトにはそうはいかないらしいし、正直仕方ないと思う。大事に至っていないしカニンに免じて許してやることにした。

「カニンのことは残念だったね。どうにかしてあげたかったんだけど。」

「シルフは宇宙船に感情移入しすぎです。私たちは所詮は機械なのですから、そこまで同情する必要はありません。AIのバックアップを取ったのですから十分です。」

 それもそうか。バーレイにこんな風に叱られてしまうのは意外だったけど、船のAIと人に区別をしていないのは俺の悪いところかもしれない。

 帰還する前に祠、じゃなかった、博物館へ寄る。学芸員たちに挨拶をしておこうかと。多分、今後、ここは中央星系の人が管理することになるからその後についても話さないと。

「というわけで、10数年後にはたぶん誰かしら来るんじゃないかな。」

「承った。ところで我からシルフ殿に頼みごとがあるのだが聞いてもらえるだろうか。」

「いいよ。俺のできる事なら。」

「我も同行させてほしい。」

 西暦時代のレガシーを持ち帰るのは原則禁止されているんだけど、まあ、いいか。怒られそうならその辺の衛星にでも隠しておいて後で拾えばいいし。

「わかった。俺としても君が来てくれると量子通信が使えるから助かるよ。よろしくな。」

「感謝する。こちらからもよろしく頼み申す。」

 愉快な仲間が増えた。

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