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星間の妖精(エルフ)  作者: tk7_sf
第10話 シルフの独り立ち
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10-4 ニーヤの厳しさ

 改めて、祠の調査を再開した。

 まあ、よく見るようなメカが沢山。ロボットの類やディスプレイ、ボタンのついた機器の数々。どれも電池切れなのか動作しない。とりあえず、いくつかの機器を屋外に運ぶ。光で動く機器もあるかもしれないからだ。

 充電に時間もかかるだろうということで、船へ戻る。一晩ほど明かしてもう一度見に行こうと思う。

「シルフがお出かけの間に先ほどの騒動で受けたダメージを確認したのですが、まずいことになりました。」

「もったいぶらず言って。」

「はい、先ほどの銃撃で補助スラスターの機能が失われました。」

 え、それってやばいやつじゃ。

「帰還できるの?」

「いえ、このダメージでは航行はできません。救難を求めるしかありません。」

 ジーザス。この元凶をつくったあいつ、マジでぽいっとしちゃおうか。

 八つ当たりしても仕方がない。いや、正当な復讐か。でも現代人の俺は復讐なんてダサいことしないよ。

「とりあえず、今日はいろいろあって疲れたから寝る。難しいことは明日の俺に考えてもらおう。」

 翌日、とりあえず探査を続けることにした。救難を求めるにせよ仮死をするにせよ探査レポートを作ってからにしようということだ。

 祠の前に置いておいた機器を弄り回す。押せるボタンは押してみる、長押ししたり連打したり。叩いてみたら起動した。やってみるものだ。西暦の機械は叩けば直るのかな。

 

 ディスプレイに表示される西暦の言葉はちっともわからん。バーレイが翻訳してくれる。曰く、いつだかの流れ。俺がもらった衛星の時と同じ流れだ。破れかぶれの俺は速攻で了承した。どうせ断れないんだし。

 なんにせよ話し相手が増えたことはうれしい。バーレイとの会話もいい加減飽きていたので助かる。

「あのさ、俺たち帰れなくなっちゃったんだけど、どうにかならないかな?」

 そう俺が問うと西暦ロボは答える。

「どうにかとは?」

「帰還したいんだ。」

「どうやって?」

「えーと、船を修理出来たら帰還できるかな。」

「それでは修理したらよい。」

「直し方がわからないんだよ。」

「調べればよいのでは?」

「調べようにも船のライブラリには詳しい情報がなくて、本星に確認しないとならないんだよ。3光年の距離があるから応答が返ってくるのに6年かかるんだよ。」

「なぜ?」

「なぜって、量子通信でもない限り、光速でしか情報伝達もできないじゃん。」

「量子通信、できないのか?」

「うん。」

「我はできる。」

 うーん、西暦ロボのコミュニケーションはいまいち面倒くさいなぁ。え?

「できるの? 手伝ってもらえる?」

「手伝える。」


 バーレイは西暦ロボとうまいことインターフェースして、量子通信に成功。西暦ロボの量子通信は西暦のメカ同士でしか通信できないが、衛星シルフ経由で通信できるようだ。さっそくニーヤさんに繋ぐ。

「兄ちゃん、俺だよ。シルフだよ。久しぶり!」

「え、シルフ!? どうやって連絡してきたの?」

「えーと、西暦の機械に助けてもらって。早速で悪いんだけど、兄ちゃんにお願いがあって」

 俺はニーヤさんに現況を話した。悪人に襲われたこと、バーレイを傷つけてしまったことを。

「兄ちゃん、ごめんなさい。バーレイを傷つけちゃった。」

「いや、ダメージの件は気にしなくていいよ。早速修理のためのRC93の整備マニュアルを手配、いや、もっといい方法があるだろう。」

 ニーヤさんは何か思いついたようだ。なんだろう。

「リンクスがやったやつだよ。メインエンジンのベクトル制御で姿勢をコントロールするという。」

 あー、あれか。中性子星の重力にとらえられた際の姿勢制御スラスターが破損したリンクスが編み出した制御方式のことか。

「でも、そのためには大規模な構成変更を再設定したはずだけど、出来るの?」

「リンクスにできてバーレイにできないはずはないだろう。リンクスは航行中にそれをやったんだろ。今は停泊中なんだからますますバーレイにできない理由がないよ。バーレイ、やれるよな?」

「はい、ニーヤの許可があれば。ただ、その前にダメージコントロールが必要です。主従逆転してしまい申し訳ありませんが、手数が足りないためシルフに手伝ってもらう必要があります。」

「もちろん俺は構わないよ。」

「よし、バーレイ、それじゃあ決まりだ。あと、シルフに私と同等の権限を付与する。シルフ、遠慮なくバーレイをこき使ってくれ。」


 ニーヤさんの許可が出たのでバーレイをアップデートする事になった。

「バーレイ、本当に出来るの?」

 俺はニーヤさんの無茶ぶりに少し心配になっている。こういっちゃあ、手前みそだけど、リンクスはあれでかなり特殊で優秀だ。バーレイの優秀さはよくわかるけど、あんな特殊なことはそうそうやっていいとは思えない。

「はい、問題ありません。リンクスより詳細を聞いていますし、TAKUMIを仮想領域で動作させることで十分対応可能です。早速、お手伝いしてもらうことですが、」

 バーレイはそう言って俺にメンテナンスの指示を出す。まずは銃撃を受けた内装の内張りをはがす。銃弾がどこまでダメージを与えているのかを正確に把握するためだ。

「バーレイ、本当にごめんな。キレイにしてあったのにこんなことになってしまって。俺がもっと慎重に行動していればよかったと反省しているよ。」

「シルフ、気にしないでください。あれは不可抗力ですしあなたが反省することは何もありません。それにニーヤと探査に出ればこんな程度のことは日常茶飯事でしたから。」

 ニーヤさんが実は中央星系の探査員でもっとも船を壊したエルフとして有名だということがバーレイによって明かされた。

「私、これで4台目なんですよ。あなたはリンクスをとても大事に扱っているようですね。これからも大切にしてあげてください。」

「バーレイは兄ちゃんに大事にされていなかったの?」

「いいえ、そんなことは決してありません。ニーヤは出来る限り私のことを大切に扱ってくれていましたよ。ニーヤの名誉のために言っておきますがそれだけ過酷な任務が多かったということです。」

 俺は改めてニーヤさんのことを先輩探査員として尊敬した。

「シルフ、ありがとうございます。内装の方は致命的なダメージはなさそうです。あとは私の方で検査できることがほとんどなので、しばらくお好きにお過ごしください。」

 バーレイがそう言うのでまた遺跡に行ってみることにした。ロボットたちとおしゃべりでもしよう。

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