10-3 ピストルってなに?
アラームで起床した。
「リンクス、今の状況は?」
「シルフ、私はリンクスではありませんが、簡単に報告しますと出発から12年経過しており、探査対象の星系に入っています。当該惑星は過去に数度の調査がされているため、今回の探査は、」
あー、頭がぼんやりする。長々と話されても頭に入ってこない。
「そうだった、君はリンクスじゃなかった。えーと、バーレイだったね。ごめんね。まだ頭が回ってないから詳細は後日で。」
「私こそ失礼しました。シルフの状態を確認すべきでした。」
今までのことを思い出しながら、しばらくぼけっとしてハイバネ復帰剤を飲んで寝た。
数時間寝て、目覚める。うーん、スッキリ。
「バーレイ、昨日はごめんな。改めて状況を教えて。」
バーレイは答えた。出発から12年、探査対象惑星近傍に到着。過去に数度の探査のため簡易的な調査のみ実施済み、着陸探査に向けて準備済み。ゴーサインが出れば着陸するとのこと。
「OK、もう着陸してくれて構わない。さっさとやっちゃおう。」
「かしこまりました。」
バーレイはさっさと着陸軌道に入る。見事なランディングだ。
「祠がある。」
「そうです。あの祠が探査対象です。たった今、気が付きましたが以前に封鎖されていた入口が解放されておりますね。」
中央星系の拠点から近いこともありニーヤさんは何度もここへは来ているらしい。それのいずれにおいても入り口はしまっていたというのがバーレイの談だ。盗掘にでもあったのかな。まあ、いいや、見てこよう。
早速、船外着を着用して祠へ向かう。例によってテラフォーミングされていないので大気はない。重力は0.4Gとかそんなところか。
入り口は明らかに破壊されている。こういう扉も希少な文化財なのに。悪いことをする奴がいるもんだ。まあ、扉の中に入れるなら調査のし甲斐があるってもんだ。どれどれ?
祠に入るや否やバーレイからの呼び出し。
「シルフ、緊急事態です。何者かに占拠されました。」
「は? 占拠?」
誰かいたってことか? いや、そんな。
「と、とりあえず。声をつないで。」
「かしこまりました。」
早速、声をかける。
「侵入者さん、私の船になにかご用ですか? なんにせよ勝手に入らないでもらえます? 今戻るのでハッチにいてもらえますか?」
「ダメです。侵入者はシルフの話を聞いてません。」
仕方のないやつだな。一応、話し合いはするけど、聞き入れられる事はないだろうな。どうせ暴力での解決になるだろう。あまりしたくないが最悪は実力行使になることを覚悟する。警戒はしているからマスターとか師匠クラスの使い手でもなければ後れを取ることもないだろう。バーレイに戻って侵入者に声をかける。
「侵入者さん、出てってください。」
「出ていけと言われて出ていくわけないだろ。」
そういって、侵入者さんは俺に筒を向けてくる。なんだそれ。
「まあ、知らねーだろうから教えてやるけどよ、こいつぁピストルっていう西暦の遺物さ。」
雷のような音が鳴り響く。
「なんだ! すごい音! 耳がキーンとする。」
バーレイの船室に穴が開く。おいおいおい! 借り物に傷をつけやがって。
「バーレイ、大丈夫か? こいつトンデモナイものもってるな。」
「西暦時代の銃火器です。船室の壁が破壊されました。衝撃と弾速から換算すると300ジュール程度のようです。」
銃火器ってなんだ? とにかくニーヤさんになんて言えばいいんだ。
「な、なんだこいつ。これの怖さがわかってないのか?」
「ピストルだか何だか知らないが、そんなもの人に向けたらダメだろ。今なら許してやるからそれを置いてごめんなさいしろ。な?」
俺は侵入者さんに寛大な姿勢を見せてやる。
「な、なめるな!」
またも雷鳴が轟く。
「ぐえ」
撃たれた。まさか、人に向かってあんなの撃つとは。信じられないやつ……。
俺の冒険はここで終わりか。今までの人生を振り返る。リンクスともう一度、旅をしたかった……。
と、走馬灯ごっこはおしまい。なぜなら、全然平気だもん。
「な、平気なのか? こいつ。な、なんで無事なんだ!? ピストルだぞ!」
なにいってんだ? こいつは。
「それ、300ジュールぐらいだろ。そんな豆鉄砲でどうして船外着に通用すると思ってるんだ。1万ジュールぐらいのエネルギーでもなければ失神もしないよ。」
船外活動中にデブリを喰らっても平気な船外着に数百ジュールのつぶてが当たったところでどうこうなるか。
侵入者さんはピストルをバン、バン、カチカチと鳴らす。冷静さを欠いたのか狙いがブレブレ。あーあ、船室を穴だらけにしてくれちゃってもう。
「もう終わり? そんじゃあ、次は俺の番だな。」
俺は侵入者さんを蹴っ飛ばす。小手投げ。ガード姿勢になったところをすかさずオモプラッタで締め上げる。ブラジリアン柔術の技だったかな。リータの部屋でみたビデオで覚えた技だ。侵入者さんはまるでカラテはなっていないので簡単に極められた。サブミッションこそ王者の技なのだ。
「いてて、降参だ。降参!」
さて、どうするかな。もうピストルの弾も打ち切ったようだし脅威はない。
「おじさん、どうやってこんなところまで来たの? 目覚めが悪くなるからちゃんと答えて。」
「目覚めが悪くなるってどうしてだよ。」
冗談も通じないのかよ。
「それはね、おじさんを、屋外にぽいっとしちゃう罪悪感で気分が悪くなるってことだよ。」
ここまでストレートに言えば通じるだろう。
「おまえ、かわいい顔してとんでもないこと言うんだな。わかった、答える。答えるから。宇宙船だよ。お前と同じだよ。もっとも、俺の船はぶっ壊れちまってるがな。」
生身で撃たれたら死んじゃうようなもの撃ち込んでおいて良く言うよ。生殺与奪の権を握られているのに余裕だな。
「おじさんはヒトでしょ。俺はエルフだから仮死して来れるけど、ヒトはそうはいかないだろ。」
「お前こそ、いつの話をしてるんだ。ヒトでも仮死できる方法は随分前から確立されてるぞ。」
え、そうなの? 全然知らんかった。
「あっそ。じゃあ都合がいいや。おじさんには仮死してもらう。」
仮死の薬を侵入者さんに有無を言わせず飲ました。




