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星間の妖精(エルフ)  作者: tk7_sf
第10話 シルフの独り立ち
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10-2 バーレイ

 一夜開けて、ニーヤさんの船を見に来た。

「シルフ、よく来てくれたな。私の依頼を受けるかどうかに限らず気楽に見ていってくれたらいいよ。」

 ニーヤさんの船は型式RC93、リンクスよりも遥かに新しい型だ。

「バーレイ、久しぶりだな。シルフに挨拶してくれ。」

「シルフ様、初めまして。RC93のアシスタントAIのバーレイと申します。本日はよろしくお願いします。」

 普通のAIだ。辺境のAIの連中のアライメントがくるってるからあまりまともな奴がいないからこういう真っ当なAIはとても新鮮だ。(偏見)

「うん、バーレイ。こちらこそよろしく。」

 色々見て回る。船室、貨物室、外郭。

「色々見て回ろうと思ったけど、見どころがいまいちわからないや。」

「それではシルフ様、スペックの説明などいたしましょうか。」

 いたしましょうか。だって。周りにそういう丁寧な言葉遣いをする人がいないから新鮮な響き。

「ああ、そうだ、食料関係は?」

「はい、一般的な航海食はもちろん、甘味類を多数生成できます。」

 甘味類とな。

「合成食品なので自然材料を用いたものと比較すると風味は劣りますが、各種飴類、キャラメル、ビスケット、チョコレートなどが生成できます。」

 天国かな? あー、これはニーヤさんのこだわりなんだろうな。うん、もうこれだけでやる気が出た。俺って食いしん坊だったのかもしれない。あれだけすさんでた心もマシマシ胃ろうやったらスッキリしたし。認めるしかない。この旅が楽しいものになる予感を。


 出発の日が来た。

 見送りに来てくれたのはマスター、ジーニー、ニーヤさん、リータのいつもの4人。

「シルフ、私の頼みを聞いてくれて本当にありがとうな。バーレイはリンクスに劣らず優秀だから安心して行ってきてくれ。」

「ま、お前のことだから心配してないけど、ちゃんと無事に帰って来いよな。」

「俺も、ボスのことだから大丈夫だと信じていやすが、無事に戻ってきてくだせえ。」

「シルフ。よくぞ決心したな。頑張るんじゃぞ。」

 マスターが俺を抱きしめる。マスターの熱が伝わる。まるで大きなネコに抱かれてるようだ。

「おぬしがわしの道場にいた頃、優しくしてやれずずっと申し訳なく思っておったんじゃ。あの時は出来なかったがずっとこうしたかった……。」

「マスター......。」

 四人の見送りを受けて出発することにする。おっと、その前に。ハンドヘルド端末に話しかける。

「リンクス……。」

「……シルフ、ついにこの日が来たわね。私はあなたがこの選択をしてくれてうれしかった。バーレイは優秀な船だから安心して任せられるわ。シルフが帰ってくる頃には私のアップデートも終わっているから楽しみにしていてね。それじゃあ、あなたの旅が無事に終えられますように。」

 なんかリンクスに見送られるのって不思議な感じ。もっとこう、こみ上げるものがあるかなと思ってたけど、案外何もない。でもこれって、出発すると急に寂しくなるやつだ。初探査の時はそうだったし。


 バーレイに乗り込む。

 特に感傷なし。いつもと同じ。自分で思っていたよりも俺はプロフェッショナルだったということだ。そうに違いない。

「バーレイ、改めてよろしく。」

「はい、シルフ様。よろしくお願いします。」

 シルフ様はやだなぁ。

「あのさ、敬称はやめてもらえるかな。シルフって呼んでよ。」

「シルフがそう言うのなら。」

「よし。それじゃあ、出発だ! ヨーソロー!」


「もっとスピード上げられないの?」

 じれったいほど速度が出てない。こんなペースじゃこの任務が終わるのは何時の事やら。

「はい、宙域では制限速度が厳しいので。第3惑星の外側へ行かないと速度は上げられません。」

 レーダーを見ると辺境ではとても見たことがないほど混みあっている。なるほど。これがうわさに聞く渋滞というやつか。

「いいえ、この程度は全然渋滞とは言いませんよ。」

 都会は恐ろしい。一体何隻の船がひしめいているんだ。宇宙空間は立体的に使えるとはいえこれは接触事故も絶えないだろうな。

「退屈だな。もう仮死してもいい?」

「いえ、宙域では管理者がいないといけませんので仮死されては困ります。」

 知ってた。

「……もしかして、今のは冗談ですか?」

「そうだよ。意外とわかる口なのかな? 退屈だからおしゃべりに付き合ってよ。」

 話してみるとバーレイは思っていたよりも付き合いがいい。リンクスみたいにグイグイこないがこっちから話しかければちゃんと返答をしてくれるし、ウィットに富んだ会話も出来る。ニーヤさんが仕込んでいるようで口調は固いけどある程度冗談は通じる。そんなわけで退屈はしない。

と思ったのは束の間、話す内容もなくなって、ニーヤさんのことを聞いたりするのも飽きてきた。

 楽しみなのは食事の時間。ペイロードの都合もあってリンクスは経口食を出すことは珍しいことだったが、バーレイはペイロードからしたら今回の探査は短距離ということもあって宙域を出るまでは経口食を出してくれるそうだ。それもとびきり甘いお菓子を。しばらくはこれを楽しみにすることになりそうだ。


 退屈極まりない宙域を抜け、準光速区間に入る。そろそろ仮死の準備。

「シルフ、そろそろ仮死の準備の時間です。リンクスから聞いていますが、起床は50時間前でよろしいですね。」

「うん。よろしくね。それじゃあ、お休み。」

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