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星間の妖精(エルフ)  作者: tk7_sf
第9話 シルフの憧れ
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9-5 祝勝会

「まったく、なにやってんだ。」

 リータが激怒しながら俺を引っ張っている。

「まあ、大丈夫そうでよかった。さすがに心配したぜ。」

 何が起きたかわからない。レースは終わったらしい。

「オマエ、最終ターンで気絶したっぽいぞ。すぐ目覚めたようだけど。」

「面目ない、じゃあ、リータが優勝したのかな。おめでとう。」

 いやあ、スッキリした。出し切った。優勝したかったし、ニーヤさんに良いところ見せたかった。悔しい。

「レース経験の差だな。今回は俺の勝ちだぜ。」

「うぅ。」

 悔しさに涙が出そう。こんなに悔しい思いをしたのは初めてかもしれない。きっと本気で取り組んだからだ。

「この涙をこらえている顔……。」

 リータが俺の顔を覗き込んで笑いをこらえてる。な、なんだよ。

「いや、オマエも頑張ったよ。ほら、ニーヤのところに行こうぜ。」


「リータさん、優勝おめでとう。シルフくんもすごかったな。期待以上だ。」

「ニーヤさん、本当? 俺、優勝できなかったけどニーヤさんの期待に答えられたの?」

「もちろんだよ。初出場で2位だよ。それでどうして期待はずれと言えようか。とても立派だよ。誇ってくれよ。」

 ニーヤさんの言葉はきっと本心だろう。じゃあ、素直に喜ばなきゃ。

「なんだよ、もう涙目はおしまいかよ。」

 リータが少し残念そうに俺をからかう。

「さて、一息ついたら表彰式だよ。ヒーローインタビューもあるから何を話すか考えておいてな。」

 ニーヤさんはそう言って、俺たちを表彰台へ向かわせたところ、入れ違いにインタビュアーがニーヤさんに話しかける。

「ニーヤさん、ワンツーフィニッシュおめでとうございます。素晴らしいレースでした。」

「ありがとうございます。選手は入れ替わってしまいましたがチームとしては2連覇出来ました。二人には感謝してもしきれないです。」

 ニーヤさんは急に話しかけられてもスムーズに応対している。インタビューはまだまだ続きそうだ。何を話したかは後で聞こう。


 そして表彰台の俺たち二人はというと、

「辺境のシルフ、惑星探査継続してます。お仕事募集中です! よろしく!」

「トラ道場、よろしくな。ジェットパックもうまくなるぜ。俺が証拠だ!」

 ふたりしてインタビューにて宣伝した。

 


 ニーヤさんが祝勝会を開いてくれた。俺を取り巻くいつものメンバーが勢ぞろいだ。

「シルフよ、おぬしにそんな才能があったとはの。立派じゃ。」

 マスターが褒めてくれる。えへへ。

「リータ、あなたカラテよりジェットパックのほうが向いてるんじゃないの?」

 トラ姉さんがリータをからかう。

 なんか楽しいね。それに胃ろう組も経口摂取できる食べ物もある。しかも美味しい。

「これ、おいしい。」

「ここのケータリングは私も長年世話になってるからね。シルフくんの口に合ったようでうれしいよ。」

 ニーヤさん、何でも知っててすごい。かっこいい。

「ニーヤさん、本当は優勝出来たら言おうと思ってたんだけど、俺のお願い聞いてくれる?」

「何だい? 私にできる事ならいいよ。言ってごらん。」

 ごくり。前から言いたかったことを言うだけなのに言葉に詰まる。恥ずかしい。

 スー、ハー。深呼吸。吐く息とともに緊張を抜く。

「あのね。俺の兄ちゃんになってください!」

「え? お兄さん? どういうこと?」

 ニーヤが困惑してる。

「あれ、言った俺もよくわかんないや。リンクスぅ。」

「仕方ないわね。まあ、今回は頑張ったから特別に手伝ってあげる。ニーヤさん、シルフはね、辺境でも友達みたいな関係の人がいないのよ。それであなたにそういう関係になってほしいの。シルフの根っこは見た目通りの精神年齢だから、あなたにはお兄さんみたいに接してもらいたいのだけどできるかしら?」

「そんなことなら喜んで。これからはシルフって呼んだらいいかな?」

 呼び方が変わった。

「うん! 俺も兄ちゃんって呼んでいい?」

「もちろんだ。」

 めちゃくちゃうれしい。最高だぜ。

「なんだ、シルフ、オマエ、笑顔も中々かわいいじゃねえか。んー、でも俺は泣き顔のほうがいいなぁ。」

 リータがウザがらみしてくる。

「なんだよ。俺が喜びをかみしめてる時に水を差すようなこと言うなよ。」

「お? オマエ、さっき悔し泣きしてたのに。」

 は? 泣いてねえし。

「スマン、スマン、確かに泣いてはいなかったな。必死にこらえてたな。思い出したら、うぅぅ。」

 なんかリータが一人で身震いしてる。不気味な奴だな。

「私もシルフの泣き顔みるとゾクゾクするんだよなぁ。」

 トラ姉さんがそう呟くと、マスター、ジーニー、みんなが賛同する。なんだ、お前らみんなして。

「あ、つい。リータの言う通りおぬしは笑顔も良いぞ。もっと笑っておれ。」

 マスターが言い直す。泣き顔が良いなんて言われてうれしいわけない。でも、みんなが望むのなら笑っていたいな。


「そういえば、ニーヤ、久しぶりねぇ。イエネコ! 珍しいやつがいるわよ。」

 トラ姉さんがニーヤさんを捕まえて絡みだした。そしてマスターを呼ぶ。

「そういえば最近、シルフと遊んでくれていたのはおぬしじゃったか。」

 なになに? 知り合いなの?

「兄ちゃんと知り合いなの?」

「そうじゃ、トラが道場を継ぐ前、わしらが同門だったころにこいつもいたんじゃ。」

 はえー。トラ道場通ってたと聞いたけど、それだったらだいぶ前の話だな。

「こんなにブクブクと太っちゃってまあ。」

 トラ姉さんがニーヤの腹の肉をつまみながら言う。

「痛い、痛い。痛いって。止めて!」

「やめてよ!」

 俺は止めに入った。俺の周りの女性はどうしてこうも乱暴なのか。

「おい、リータ。大至急、あれ持ってこい。」

「師匠、そりゃないですよ。俺、この会の主役なんですよ。」

 トラ姉さんはそれもそうかと、道場の誰かに連絡して「アレ」とやらを持ってくるよう指示した。

 俺はニーヤさんにとって悪いことが起きたら嫌だなと思って止めるよう説得を試みた。

「大丈夫だって、悪いようにはしないから。」

 

 しばらくしてトラ道場の門下生が到着。

「お客さんですぜ。」

 ジーニーが通す。君、いたんだね。

「あ! それは! や、やめてくれ!」

 門下生の持ってきたものを見てニーヤさんが叫ぶ。胃ろうコネクタのキャップだ。鍵付きの。

「胃ろうエルフのダイエットと言ったらこれだろ。」

「私は痩せたいなんて一言も言っていないだろう。なんてやつらだ。」

 件の門下生は鍵をもって帰って行ってしまった。ということは。

「もうわかると思うけど、痩せるまでキャップは外せないぞ。あきらめろ。」

「えー、もう兄ちゃんとマシマシできないの……。」

 俺は悲しくなってしまった。

「シルフ! あれはもうダメって言ったでしょ!」

 すかさずリンクスにたしなめられる。

「ごめんな、シルフ、うまい経口食おしえてやるから、許してくれ。」

 ニーヤさんは自分へ降りかかった悲劇より、俺を心配してくれた。俺は自分のことしか考えてなかったのに。

「うん。いいよ。兄ちゃんこそ大丈夫?」

 今日の経口食も美味しいからグルメのニーヤさんなら目くるめく食の世界を教えてくれるに違いない。期待大だ。

「そうね。明日からタイガーズブートキャンプが始まるわよ。摂取カロリー以上の運動をさせてあげるわ。今日はたらふく食べてしっかり栄養とっておきなさい。」

 トラ姉さんはニーヤさんに容赦がない。まあ、仲が悪いわけではなさそうだ。

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