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共同任務 その1

 とある日の放課後。

 訓練場に生徒たちが集められた。

 ビヨンドはポケットに手を突っ込み、壁に寄りかかりながらめんどくさそうに立っていた。


「ビヨンドちゃん......。すごく部屋に戻りたそうにしてるね......」


「当り前よ。こっちは任務で寝れてないんだから......」


 そう言いながらビヨンドはあたりを見回した。

 見たことある生徒が多いため、おそらく同じ学年の生徒が集められていると思われる。


「あら、ビヨンドさん」


 生徒たちをかき分けながら歩いてきたクレナイがビヨンドの前に現れる。


「あっ、クレナイさん」


「うわっ......」


 ビヨンドは、露骨に嫌な顔をした。


「そんなに嫌な顔しないでください。そろそろビヨンドさんと再戦したいと思っているのですが、次はいつ戦ってくださいますか?」


「二度と戦いませんよ」


「あら。じゃあまた木刀で殴りかかったりお宝を横取りしちゃおうかしら」


 微笑むクレナイ。


「そんなことしたら次は顔に撃ち込みますよ? この前のやつを」


「あの時は知らなかったので当たってしまいましたが、もう当たりませんよ?」


「楽しそうな話してるじゃない。私も混ぜなさいよ」


 突然やってきてビヨンドとクレナイの話に割り込むレパール。


「面白い話なんてしてないわよ。どっか行きなさい、クズ」


「クズ!?」


「背後からナイフを投げるようなやつなんてクズよ、人間のクズ。死になさい」


 そう言いながら手で首を斬るジェスチャーをする。


「ビヨンドちゃん、眠れてなくて機嫌悪いんだ......。許してあげて……?」


 そんな会話をしていると、離れたところから教師と思われる男の声が聞こえた。

 教師は話し始めたが、ビヨンドはあまりの眠さに聞く気がなかった。

 立ちながらうつむいており、今にも寝てしまいそうだ。


「早く終わってくれないかしら......」


 そう思いながら教師の話を聞いていた。


「君たちには、複数人で協力して任務を行ってもらう」


 ビヨンドは誰と組むかを考え始めた。


「とりあえずランディと組んで、あとは......」


 ビヨンドは考えるが、眠気に勝てなかった。

 しばらくぼーっとしていると、肩をゆすられた。


「ビヨンドさん、大丈夫ですか?」


 肩をゆすったのはクレナイだった。


「......なによ。あ、それよりメンバーを決めないと......」


「それなら安心してください。もう提出しておきましたから」


「......は?」


 困惑するビヨンド。


「メンバーは、私、レパールさん、ランディさん、そしてビヨンドさんです。よろしくお願いしますね」


 にっこりと笑うクレナイ。


「......嘘でしょ?」


 ビヨンドは、眠気を我慢しなかったことを後悔した。



 次の日。

 ビヨンドの席にクレナイ、レパール、ランディが集まっていた。

 今回の任務は、国立美術館に彫刻品を盗みに行く任務だ。


「で、なんで私がサイコパス二人と組まなきゃいけないのよ」


「だれがサイコパスよ! ……仕方ないじゃない。クレナイが勝手に提出したんだから」


 レパールはクレナイのことを指さす。


「だって、優秀なビヨンドさんとレパールさんの仕事ぶりを見たかったんですもの。ランディさんがいればビヨンドさんも文句ないと思ったのですが、ダメでしたか?」


「自分を殺そうとしたやつが近くにいることによるストレスが物凄いってわかりますか? って、わからないからこんなことになってるのか......」


「ふふ、もう諦めてください。それと今更ですが、私たち同学年ですから、呼び捨てでもため口でも構いませんよ?」


「はああぁぁぁ......」


 ビヨンドは大きなため息をつく。


「......組むことになったなら仕方ないわね。......よろしく。レパール、クレナイ」


「私がいればどんな任務も大丈夫よ! 頼りにしなさい!」


「こちらこそ、よろしくお願いしますね?」


「わ、私もみんなの足を引っ張らないように頑張る......!」


 こうして、ビヨンドとその友人ランディ、ビヨンドの命を狙ったレパールとクレナイの四人組チームが誕生した。



「それじゃあせっかく仲間になったんですし、親睦を深めるために少しお話ししませんか?」


 放課後、ビヨンドの元にやってきたクレナイはそんな提案をした。


「嫌よ」


 即効で断るビヨンド。


「ビヨンドちゃん。これから仲良くしなきゃいけないんだから、ちょっと嫌でもお話ししようよ」


「そうよ。私たち仲間なんだから」


「チッ......わかったわよ」


 舌打ちしつつも、話をする気になったビヨンド。


「それじゃあ……。偽名の名前の由来なんてどうですか?」


 クレナイが話題を決めた。

 すると、レパールが一番に口を開いた。


「私のレパールって名前の由来は、可愛いからよ!」


「しょうもないわね」


「な、なんですって!?」


 しょうもないと言うビヨンドにレパールが怒りそうになったが、ランディが抑える。


「わ、私も大した理由なくて……。明るい女の子になりたいから、それで……」


「あら、いいじゃないですか」


 褒めるクレナイ。


「それじゃあ私も。……その前に、私が怪盗を目覚ました理由をお教えします」


 怪盗らしさがないクレナイのことが気になるビヨンドは、クレナイの話に意識を向ける。


「私は、代々伝わる家宝が怪盗に盗まれてしまい、この国に持って来られたと言う話を聞いてこちらにやってきました。そして、怪盗の噂を聞き、この学園に入学いたしました」


「そ、そんなことがあったんですねぇ」


「そして、盗んだ者をこの刀で血祭りにあげ、紅に染め上げることが私の望み……」


 物騒なことを笑顔で話すクレナイ。


「だから、私はクレナイと名乗ることにしました」


「へ、へぇー……」


 若干口が引き攣り、弾いていることがわかる表情をしているレパール。


「そ、そうなんですね……。じ、じゃあ最後にビヨンドちゃん。私は何となく察してるけど......」


 ビヨンドに聞くランディ。

 めんどくさそうな態度と表情をしながらもビヨンドは話し始めた。


「名前通りよ。目標である怪盗を超えて一人前になるためよ」


「その目標って……?」


「……命の恩人。名前は怪盗キラーナ」


「あら、キラーナと言えば……」


「っ!! 知ってるの、クレナイ!?」


 突然大声を出すビヨンド。

 表情も一変し、真剣な顔になる。


「あまり詳しくはありませんが、少しなら……」


「知ってること話しなさい! 今すぐ!」


 ビヨンドは立ち上がり、机に手をつき前のめりで対面にいるクレナイにお願いする。


「今回の任務をきちんと頑張っていただけたら教えますわよ」


 クレナイは、微笑みながらそう返事した。

 そして、ビヨンドの肩を手で抑え、座るよう促した。


「……わかったわ。今回の任務、絶対に成功させるわよ」


「そう言われなくても最初からそのつもりよ」


「私も同じです」


「わ、私もっ!」


「絶対に成功させるわよ」


「「「おー!」」」

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