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強者との闘い その2

「......はぁ。仕方ないか」


 クレナイから距離を取り、ウエストポーチから導火線が出ている木製の箱を取り出す。


「それは爆弾ですか?」


「クレナイさん。私、人を傷つけるのって嫌いなんですよね」


「あら、そうなんですか? 暴力がお好きな方だと思ってましたが」


「......嫌いなんですが、クレナイさん。貴方には死んでもらうことになるかもしれません」


 ビヨンドは導火線にライターに火をつける。

 爆弾の投擲を警戒しつつ、背を狙われないようにビヨンドを睨む。


「なっ!」


 そんなクレナイは、ビヨンドの奇行に驚いた。

 なんと、導火線の先端ではなく根元に火をつけたのだ。


「正気なんで......」


 クレナイが驚いる間に、爆発音が鳴り響いた。

 あたりに火薬の匂いが充満する。


 ところが、木箱は爆発していない。

 そのため、ビヨンドは無事だった。


「い、痛……」


 だが、クレナイは違った。


 視線を自分の腹に向けるクレナイ。

 腹には針が十本ほど刺さっており、血が滲んでいた。

 先ほどまでの勇ましかったクレナイの表情は、痛みで歪んでいた。


「導火線が出ていたら、爆弾だと思って距離を取りますよね? 実際は射撃する武器だから、離れるだけじゃ意味ないのに......」


 語りながらクレナイに近づくビヨンド。

 痛みに耐えつつも、クレナイは刀を振う。

 体が痛むのか、先ほどよりも速度や力は無かった。

 そんなクレナイの攻撃を軽々と避ける。


「クレナイさんって、化け物みたいな持久力の癖に痛みには弱いなんて、かわいらしいですね。さ、早くくたばってください」


 ビヨンドはクレナイの頭を目掛け、木刀を振り下ろした。

 鈍い音が部屋に響く。

 クレナイの全身からは力が抜け、膝をつく。 


「おみ……ごとです……」


 気を失い、倒れそうになるクレナイ。


「おっとっと」


 クレナイが倒れる前に体を支え、倒れるのを阻止した。

 このまま倒れてしまっては、針が深く刺さってしまうからだ。


「クレナイさん。これに懲りたら、二度と私に戦いを挑まないでくださいね」


 ビヨンドはクレナイを抱え、学園へと帰っていった。



 その後、クレナイはすぐに学園の治療室へと運ばれた。

 ビヨンドが火薬量を丁寧に調整して威力を控えめにしていたため、傷口は深くなく、治療を行って安静にしていれば問題ないようだ。

 クレナイが先に手を出したのもあり、ビヨンドが怒られることはなかった。



 クレナイとの決戦から二ヶ月後。


「皆さん? お茶とお菓子でもいかがですか?」


 クレナイがトレーに食堂から持ってきたお茶とお菓子を乗せ、机に置く。


「あ、私もらってもいいですか?」


 机に置いてあるお菓子をランディが手に取る。


「私にも頂戴!」


 ランディに続き、レパールもお菓子を手に取る。

 三人はお菓子を食べつつ、楽しそうに会話をしていた。

 そんな様子を不満そうな顔で見るビヨンド。


「なんでレパールとクレナイさんが私の席に遊びに来てるのよ……」


「あら、いいじゃないですか。私たち、もうお友達みたいなもんじゃないですか。なので、今後は丁寧な言葉遣いじゃなくても構いませんわよ」


「殺し合いをした相手を友達って……。体の治療ついでに頭も見てもらったらどうですか?」


「まぁまぁいいじゃない」


 レパールがお菓子を頬張りつつ言う。


「はぁ……」


 ため息をつくビヨンド。

 自分の命を狙った者たちが身近にいることに耐えられないビヨンドは立ち上がる。


「あっ、ビヨンドちゃーん!」


 ランディに呼ばれても振り向かず、無言で教室を出た。

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