三人で捜索
午後二時。
自主訓練を終えたビヨンドとレパール、クレナイの三人は、私服に着替え、ランディの捜索のために街に出かけていた。
「......で、なんであんた達まで着いてきてるのよ」
レンガ造りの家、石畳の道のエリューの住宅街。
そんな道を歩くビヨンドに、レパールとクレナイは着いてきていた。
「なんでって、見張りよ、見張り。今朝まで不安定だったあんたを一人で歩かせたら、何をしでかすか分からないし」
「どちらか片方だと取り押さえられなさそうなので、お二人で見張っているという訳です」
「別に、あんた達なんかいなくても大丈夫よ」
「ダーメ! しばらくの間、私たちは必ず同行するわ! 勝手な行動は許さないからね!」
「ちなみに、これはフェルノ......。ロミネさんでしたっけ? ロミネさんの指示でもあるんですよ。それでも、私たちに付いてくるなと言えますか?」
「......ロミネさんが?」
ロミネ、四天王である怪盗フェルノアの指示と聞き、眉をしかめるビヨンド。
「なんでロミネさんがあんた達にそんな指示をしてるのよ。どうせ嘘でしょ?」
「本当よ! どうしてかは分からないけど、やたらあんたのことを心配してる感じなのよね」
「この指示をされた時も、どこか悲しそうというか、落ち込んでいる感じでしたものね」
それを聞き、少し考え始めるビヨンド。
フェルノアとは、ラヴァの捜索、確保の任務を行った程度で、そこまで関係はないはずだ。
それなのにも関わらず、今回の二人への見張り指示といい、任務同行の指示といい、何故自分に関わろうとしてくるのか。
「もしかして、ロミネさんのことに関して考えてますか? 多分、優秀で学園の戦力になっているので、いち早く立ち直ってほしいと思っているのではないですか?」
クレナイがビヨンドの疑問に答えるようにそう言った。
それを聞いたビヨンドは、納得がいったのか考えるのをやめる。
「しかし、ロミネさんの指示とはいえ、あんた達がいると行動しづらいわね」
「まだ私たちのことを嫌っているのですね......。一緒に訓練や任務を共にしたというのに......」
落ち込むクレナイ。
「そりゃそうよ。殺されかけたのにそう簡単に......」
突如、ビヨンドは走りだした。
何かを追いかけるように、入り組んだ住宅街を駆け抜ける。
「ちょ、ちょっと! どこへ行くのよ!」
「は、早く追いかけましょう!」
レパールとクレナイは、ビヨンドを追いかけるために走り出した。
「今の髪色、長さ......!」
ビヨンドは一瞬だけだが、ハッキリと見たのだ。
馬に乗ったランディのような人物を。
住宅街を抜け、広場に出る。
その広場の中心に、馬から降りた人物が立っていた。
「......違う」
その人物は、ランディとは違う人物だった。
顔はランディに似ておらず、凛とした表情だった。
よく見ると身長もランディより高く、髪型と髪色以外はランディと似ていなかった。
服装は市民とは明らかに違い、まるで貴族のような青と白を基調とした豪華な装飾が施された服を着ていた。
宝石が取り付けられたネックレスやブローチなどのアクセサリーも身に着けており、高貴な身分だと思われる。
呆然と立ち尽くすビヨンドの前に、レパールとクレナイが走って向かってきた。
「ちょっと! 何急に走り出して......。......あー」
レパールはビヨンドに何故走り出したか聞き出そうとしたが、ランディ似の人物を見て、納得してしまった。
「あら、とても似てますね。......残念でしたね」
「そうね......」
がっかりしたことがハッキリと伝わる声で、ビヨンドが返事をした。
「......ん? なんだ、お前たちは」
ランディ似の人物がビヨンドたちに気が付き、声をかけてきた。
ビヨンドたちの目の前まで近づき、ジロジロとビヨンドたちのことを見つめる。
「あ、いや。人探しをしてるんですけど、この子が間違えちゃったみたいで......」
レパールが説明をする。
「ふん。そうか」
理由を聞くと、すぐに馬の元へと戻っていった。
「......あの人、絶対に市民ではないですよね」
クレナイが小声でビヨンドとレパールに話しかける。
「貴族か、国の関係者って感じよね」
「......顔つきや体格からして、ただの貴族の方ではないと思います。おそらく、闘いに長けている可能性があるかと......」
「あの人とも、そのうち闘うことになるのかしらね......」
レパールとクレナイがコソコソと話しているが、ビヨンドはそれを無視してどこかへ向かって歩き始める。
「私は興味ないから、先に捜索に戻らせてもらうわね」
ビヨンドは二人を放置し、その場から離れようとした。
「こら! 待ちなさい!」
コソコソ話をやめ、ビヨンドに向かって小走りで向かうレパールとクレナイ。
それから、日が沈むまでランディの捜索が続いた。




