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怪盗少女ビヨンド  作者: Melon
第3章 再会

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ラッティの試練 その4 死闘

 ビヨンドは落ちていったルーフを追いかける。

 ルーフの攻撃を警戒しつつ、覗き込むように下を見た。

 落ちた先は低木の花壇になっていた。

 その低木の上に、ルーフが横たわっていた。


 ビヨンドは無言で鉄製トランプをルーフに投げる。

 そして、ルーフに向かって飛び降りた。


 ルーフは仰向けの状態でトランプを弾く。

 弾き終わると、目の前には傘を振りかぶったビヨンドの姿があった。


 空中で思い切り傘を振るビヨンド。

 そんなビヨンドの攻撃を足裏で受け止める。


 低木がメキメキと音を立てて折れる。

 ルーフはビヨンドの傘を蹴った勢いで後方に回転し、立ち上がった。


「......昔の貴方なら、このように追撃しなかったでしょう」


 低木の花壇の向こう側に立っているビヨンドに向かってルーフが言う。


「そうね。どこかの誰かさんに、余裕ぶっこくことがどれだけ危険か分からされたもの」


「......貴方はしっかり学び、能力もある優秀な人だ。だからこそ、私の意見を受け入れてもらえませんか? 私は、貴方と、いや、貴方と貴方のご友人と敵対したくない」


「貴方たちと敵対......? まさか! あんたラヴァの......!」


「......その通りです。私は、ラヴァの味方。......ラヴァと同じく、学園を狙う者です」


「......っ!」


 衝撃の事実に言葉を失うビヨンド。


「私たちはボスと共に、貴方たちを殺してでも学園から最強の怪盗の証を奪うことになる。ですが、貴方とご友人が学園から去れば、命を奪わなくて済む。私は、貴方たちのためを思ってお願いしているのです......!」


 友人という言葉を聞き、ランディのことを思い出すビヨンド。


「......残念だったわね。それくらいで私が怪盗を辞める訳ないじゃない」


 もし、ランディが学園に戻ってきて、ビヨンドが去っていては悲しむだろう。

 ランディは、怪盗として活躍しているビヨンドと共に怪盗として活躍することを望んでいるはずだ。


「それに、私はどうしても一流の怪盗になりたいのよ。幼いころに両親を失った私に、怪盗として生きる道を与えてくれたキラーナさんのために! 成長した姿を見せることが、恩返しになるはずだから!」


 声を荒げながらルーフに言うビヨンド。

 その返事を聞いたルーフは、悲痛な表情を浮かべていた。


「......本当にいいんですか? 絶対にあなたは後悔することになると思います。学園に残ってしまったことを......!」


「私の考えは絶対に変わらない! 貴方を倒して戦宝を持ち帰って、学園で一流の怪盗を目指す!」


「そう......ですか......」


 ルーフは説得を諦めたのか、レイピアを構える。


「先ほどまでは貴方が諦めることを願い、コッソリ手加減をしていましたが......。貴方の話を聞いて考えが変わりました。......いっそ、私がここで殺してしまったほうが、貴方にとって幸せかもしれないと......!」


「私は死なない! あんたに勝って、絶対に生きて帰る!」


 ルーフは氷塊を召喚し、飛ばす。

 だが、ビヨンドは傘で軽々とはじき、砕けた氷塊が足元に転がり落ちる。

 次の攻撃に備え、ビヨンドは傘を構える。


「おや......。攻めてこないんですか? 先ほどの威勢はどうしてしまったのですか?」


 ルーフは挑発するが、ビヨンドは眉一つ動かさない。


 先ほど、コッソリ手加減をしていたとルーフは発言していた。

 もしかしたら、別の攻撃手段を持っている可能性がある。

 ビヨンドはそれを警戒しているのだ。


「......そうです。貴方の心構えは正解です。今まで本気を出していなかった相手に、不用意に近づくのは間違いです。ですが......」


 突然、ルーフの周りに吹雪が発生し、ビヨンドの体を冷たい風と雪が包み込む。

 一年前、ルーフが逃走する際に、吹雪の中逃げていたことを思い出すビヨンド。


「逃げるつもり!?」


 吹雪の中、ルーフに声をかけるビヨンド。

 辺りを見渡すが、数歩先を認識することは不可能であり、ルーフの居場所はわからなかった。

 近づいていれば、吹雪の中でもギリギリ視認できた可能性はあった。


「ちっ......」


 ビヨンドは舌打ちをしつつ、ルーフの攻撃を警戒をする。


「......っ! もしかして!」


 ビヨンドは傘を上に向ける。

 次の瞬間、ガキンという何かが刺さる音が聞こえた。

 そして、近くに何かが着地する音。


「やっぱりね......。普通の人間なら、落下するのが最速だものね......」


 先ほどの刺さる音は、ルーフのレイピアが傘に衝突した音だろう。

 ビヨンドは次の攻撃を警戒しつつ、その場を動く。

 ルーフも吹雪の中は先が見えず、吹雪を発生させる前の状況を覚え、記憶を頼りに攻撃してきたのであれば、動いてしまえば向こうもこちらの位置が分からなくなるはずだ。


 だが、お互い場所が分からないのであれば、こちらが不利が。

 ルーフは既に目的である虹の弓を持っている。

 このまま吹雪に紛れ、逃げ出す可能性だってある。


「だったら......!」


 ビヨンドは真上へ跳躍する。

 上空から俯瞰し、逃げだすルーフを狙い撃ちするつもりだ。


 顔に叩きつけられる雪を我慢しつつ、吹雪の端を目指す。

 吹雪の端を突き抜け、目の前に星空が広がる。


 上空から下を見渡すが、ルーフの姿はなかった。

 まだ、吹雪の中に身を潜めているのだろうか。

 きめ細かく確認していると、花壇に生えている低木の茂みが光ったような気がした。


「......あそこだ!」


 ビヨンドはトランプを低木の茂みに向かって投げる。

 トランプを投げるのと同時に、赤く光る何かが飛んできた。


「......っ! 何あれ!」


 赤く光る何かは、細長い矢のような光だった。

 トランプと光は衝突したが、鉄製のトランプは黒墨になってしまった。

 トランプを黒墨にした光は、そのままビヨンドに向かって直進する。


「くっ......!」


 空中で自由に身動きが取れないビヨンドは、一か八かで傘で防ぐ。

 幸い、傘に衝突した光は消滅し、体を貫かれることはなかった。


 一安心しているビヨンドを次々と光が襲う。

 着地するまでの間、光を防ぎ続けるビヨンド。


 無事に着地をすると、茂みからルーフが姿を現した。

 ルーフは再び光をビヨンドへ発射する。

 だが、ビヨンドは傘で軽々と防ぐ。


「その傘、貴方が軽々振り回せるだけの鉄傘ではないようですね......。おそらく、魔法を防ぐ力が......。厄介ですね......」


 ルーフがボソっと呟く。

 ビヨンドは表情からは分からないが、心臓が張り裂けそうなくらい緊張していた。

 もし、学園長が言った通り、軽くて赤いだけの鉄傘だったら、光に貫かれて死んでいたのだから。

 

 恐怖と緊張感、それによる嘔吐感がビヨンドに襲い掛かる。

 気を抜けば、そのまま意識が飛んでしまいそうだった。


「というかあんた。氷の攻撃以外もできるのね......。ちっ、厄介ね......」


「私が世間で何と呼ばれているかお忘れですか? ......魔術師の怪盗。氷を好んでいたのは、私の信念である不殺を貫きやすいため」


 ルーフが手の平をビヨンドに向ける。

 ビヨンドは先ほどの光を飛ばす攻撃を警戒し、傘を構える。


 ルーフの手を中心に、赤い魔法陣が浮かび上がる。

 そして、光が射出される。


「......っ!」


 だが、射出された光は一本だけではなかった。

 十本を超える光が、拡散して射出。


 咄嗟に横に転がり、回避するビヨンド。

 その隙をルーフは見逃さない。

 再度、同じ攻撃でビヨンドを狙うルーフ。

 ビヨンドはしゃがんだまま傘で防ぐ。


 そして、低姿勢のまま靴の能力を発動し、ルーフに急接近する。

 姿勢を低くすれば体全体を傘に隠すことができるため、足を狙われることはない。


 だが、このまま接近しても氷の壁を展開され、近づくことはできないだろう。

 上から攻めるにしても、一度行った行動であるため、対策されてしまうはずだ。


 ビヨンドの想像通り、ルーフは氷の壁を自分の目の前に展開する。

 氷の壁の目の前まで到達したビヨンド。

 壁に衝突する直前で、右側に移動するように地面を蹴った。


 氷の壁は正面にしか展開されていない。

 ビヨンドは斜めからルーフを狙うつもりだ。


 ビヨンドは傘を投げ捨て、ポケットからトランプを二枚取り出し、両手で構える。

 そして、ルーフの膝と首を狙って投げた。

 刃物から身を守る金属板が入っていない関節部分である二カ所だ。


 ルーフから見て右側には氷の壁があり、右側に避けることはできない。

 しゃがむにしても膝を狙ったトランプを避けることは不可能であり、伏せたり左側に転がって避けたとしても大きな隙を晒すことになる。

 レイピアで弾くにしても、離れた部位を同時に狙われてはどうしようもないだろう。


 傘を投げ捨て、完封を狙った攻撃。

 ビヨンドはその攻撃を追うように接近し、怪我で怯んだ隙に、虹の弓を奪う予定だった。

 だが、そんな攻撃を目の前にしても、ルーフは焦りを見せない。

 

 ルーフに向かって急接近するビヨンド。

 トランプはルーフのすぐ目の前にまで迫っている。

 

 そんなルーフが取った行動は、レイピアで弾く行為だった。


 首を狙ったトランプをレイピアで弾こうと構える。

 だが、それでは膝を狙ったトランプを防ぐことは不可能だ。


 優れた怪盗とはいえ、生身の人間だ。

 膝に鋭利な刃物が刺されば、痛みで隙を晒すだろう。


 レイピアを振るい、首を狙った刃物を弾くルーフ。

 膝にはトランプが接近している。

 このままなら確実に当たる。

 ビヨンドはそう思っていた。



 だが、次の瞬間。

 ルーフの膝から黒い靄が発生する。

 そして、黒い何かが出現し、トランプを止めてしまったのだ。


「なっ......!?」


 ルーフに近づいたビヨンドが驚愕する。

 黒い何かはよく見ると、真っ黒な腕だったのだ。

 腕は拳で殴ってトランプを弾き、そのままビヨンドの顔へと接近する。


「がぁ......!」


 ビヨンドの顔面に黒い拳がめり込む。

 殴られたビヨンドは鼻から血を吹き出しながら吹っ飛ばされた。


「嘘......」


 意識がだんだん薄れていき、力が抜けていく。

 ルーフからどんどん離れていき、自分が殴り飛ばされたことを悟る。

 背中と頭部を強い痛みが襲い、ビヨンドの意識は消え去った。

 

 

「お守りとして持たされた第三の腕(サードアーム)が役に立つなんて......。帰ったらお礼を言わなければいけませんね......」

 

 倒れたビヨンドに歩み寄るルーフ。

 

「幼いながらこの私を追い詰める貴方の実力。本当に見事なものでした」

 

 ビヨンドに跪き、敬意を示す。

 

「貴方とノーティーが一緒に活躍する未来があったとしたら、私にとってどれだけ幸せだったか......」


 ルーフは涙を流しながらも、レイピアをビヨンドの首に当てる。

 

「......さようなら。貴方のことは、必ず忘れません......」

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