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ひかる海  作者:
3/9

【第三章】渦巻く波

【③-1 練習開始】


「さあ、4人、リレーの流れを掴んでいくぞ!」


顧問の声に押されるように、みんながスタート台に立つ。


湊は、緊張でこわばった朝陽の背中を見つめた。

直は腕を組みながら、無言でスタート台をにらんでいる。

千紘は、深呼吸を繰り返しながらも、わずかに手が震えていた。


(――バラバラだ)


湊は、はっきりとそう感じた。


【③-2 リレー】

朝陽、スタート台に立つ。


(俺が失敗したら……)


無意識に肩に力が入る。

飛び込む瞬間、バランスを崩し、タイミングがずれる。


「っ!」


最初の出だしで、すでに数秒のロス。

プールサイドから、顧問の表情が曇る。



朝陽から必死にタッチを受けた直。

でもその表情は、(どうせ俺が繋いだって……)

という冷めたもの。


泳ぎは”悪くない”。でも、気持ちがこもっていない。タイムは、普通。


(馴れ合いで勝てるわけないだろ)


心の中で、直は吐き捨てた。




直からバトンを受けた千紘。

強く、早く、水をまとってぐんぐんと進んでいく。その姿は美しかった。しかしある瞬間――

(溺れる)

一瞬、過去の事故の記憶がフラッシュバックする。身体がわずかに硬直し、泳ぎが乱れる。タイムがガクンと落ちる。


それでも必死に泳ぎきるが、本人は明らかに落ち込んだ表情。




そして、最後の湊。

飛び込む瞬間、みんなの泳ぎの乱れが頭をよぎった。


(俺が全部取り戻さなきゃ)


無意識に、昔の”一人で勝つ”感覚に戻りそうになっていることに、本人は気が付かない。


でも、身体は言うことを聞かず。

迷い、戸惑い――

そのわずかなロスが、タイムに大きく響いた。


泳ぎきっても、結果は最悪だった。





4人、プールサイドに上がる。


重苦しい空気。

誰も目を合わせようとしない。


「はぁ……」

朝陽が、無理に笑って誤魔化す。

でも誰も笑わない。


直はタオルで髪を乱暴に拭きながら、プールに背を向けた。

千紘は黙ってタオルを握りしめている。


湊は――

誰よりも、胸が苦しかった。


(これが、今の俺たちなんだ)




そんな4人を見つめながら、

顧問は静かに呟く。


「……まだだ。まだ繋がってないだけだ。」


朝陽には、最高のスタートを切れる素質がある。

直には、誰にも負けない安定感がある。

千紘には、圧倒的な才能がある。

そして――湊には、仲間を繋ぐ力がある。


(お前たちは、必ず強くなる)


顧問は、誰にも聞こえない小さな声で、そう確信していた。

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