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(納品関連でなんか無いかな?)


 そう思って探して見ると……意外とあるもので、しかも割の良い仕事があったのでその依頼を受ける事にしたのだった。内容は火傷治し10個納品というものだった。

 報酬も銀貨6枚と相場より少し高めで設定されており、依頼主は教会となっていた。

 恐らくは先のアシッドスライムやポイズントードの討伐に出た若手冒険者が火傷を負わされたのだろう。


「さて、行きますか」


 俺はそう呟くとギルドを出て目的地へと向かったのである。そして暫く歩くと大きな教会が見えてきたので中へ入って行く事にしたのだ。


(へぇ……意外と綺麗な所なんだな)


 そんな事を考えつつも受付で依頼書を見せると直ぐに奥の部屋へと通してくれたのである。するとそこには30代後半くらいのシスターが座っていたのだ。彼女は俺を見ると笑みを浮かべて言ったのである。


「ようこそお越し下さいました!私はこの教会の司祭を務めております、アリアと申します」

「どうも……アキラと言います。本日は依頼を受けに来ましたので宜しくお願いします」

「はい、宜しくお願いしますね!それにしても……若いのに礼儀正しい方なのですね」


 そんな事を言いながらアリアさんに火傷治しの軟膏を10個渡した。

 すると彼女は嬉しそうに受け取ってくれたのである。


「それでは、お預かりしますね!」


 そう言って部屋を出て行った彼女を見送った後で俺は椅子に腰掛けると依頼書に完了のサインをしてギルドに提出しておく事にしたのだ。


(さてと……帰るか)


 そう思い立ち上がった瞬間、突然背後から声を掛けられたのである。驚いて振り返ると其処にはアリアさんが立っていたのだ。彼女は笑みを浮かべていたのだが何故か妙な威圧感を感じたので思わず後退ってしまったのだが……次の瞬間、彼女が一気に距離を詰めて来たのだ!そして俺の腕を掴むと言ったのである


「あの! 他にも薬はお持ちですか!?」

「え?ええ……まぁ、ありますけど」


 そう答えると彼女は目を輝かせながら俺の手を引っ張って行く。そして教会の奥へと連れて行かれると其処には沢山の薬品が保管されていたのである。

 そしてその奥には怪我人が寝かされていた。


「あの、これは一体……?」


 そう尋ねると彼女は申し訳なさそうな顔をして言ったのである。


「実は最近、来られた方なのですが、全身にひどい怪我をしていまして、治癒師にも見てもらったのですがこれ以上は難しいと……それで、お恥ずかしいのですが……貴方にご協力をお願いしたいのです」


 そう言われて俺は思わず苦笑いを浮かべてしまった。


(状態によっちゃ錬金術の出番かもしれないな)


 そんな事を思いつつも仕方なく引き受ける事にしたのだが……まさかあんな事になるとはこの時の俺は想像もしていなかったのである。

 アリアさんに案内された場所に行くとそこには1人の男性が寝かされていた。そして彼の全身には火傷の痕があり酷い状態だったのである。それを見た瞬間に俺は絶句してしまったのだ。


(これはヤバいな……早く治してやらないと)


 そう思いつつ彼の側に近寄るとアリアさんが説明してくれた。


「この方は最近、冒険者になったばかりの方なのですが……依頼でアシッドスライムとポイズンスライムの討伐に出た時に毒を受けられたようです」

「なるほど……」


(つまり、その毒を治せば良いって事か)


 そう判断した俺は早速『鑑定』を発動したのである。すると彼の状態はこうなっていた。

 ==========

 名前:レイ・ダルク

 性別:男

 種族:人間族(人族)年齢:17歳

 状態:全身火傷(中度の麻痺毒)、重度の火傷による体力低下

 ==========

 手持ちの薬じゃあ手の施しようがなかった。


「これは……ちょっと厳しいかもしれないですね」


 俺がそう呟くとアリアさんは悲しげな表情を浮かべていた。


(仕方ないか……)


 俺は外に出ると大釜を取り出し、インベントリ内のアイテムを確認しながら調合を始めることにした。

 先ずは麻痺毒に対する素材、キイロタケと月桂樹の葉を乾燥させたものを入れる。

 次に火傷治しのガマの油とアロエを砕き入れ再錬成していく。

 すると鍋の色が黄色から黄緑色に変化して来るので、そこに精製水を入れひと煮立ちさせた。

 すると、鍋から黄緑色の液体が出て来たので鑑定してみると……麻痺毒と火傷治しの成分が含まれた薬液に変化していた。それを瓶に移すと蓋をして完成である!


「よしっ!これで大丈夫だ」


 俺がそう呟くと同時にアリアさんが部屋に飛び込んできたのである。そして俺の手にある瓶を見て驚きの声を上げたのだ。


「まさか!もう薬が出来たのですか!?」


 俺はその言葉に苦笑いしながら答える。


「ええ、まあ……一応は」


 すると彼女は俺の手から瓶を奪い取ると嬉しそうに言ったのである。


「ありがとうございます!!これであの方も助かります!」

「良かったですね」


 そんな話をしていると、部屋の中から物音が聞こえてくる。どうやら彼が目を覚ましたようだ。

 俺が部屋に行くとそこにはベッドから起き上がろうとしているレイの姿があった。彼は俺を見ると驚いた表情を浮かべていたが……直ぐに頭を下げて来たのだ。


「あの!助けて頂いたようで本当にありがとうございます!」


 俺は慌てて頭を上げさせると自己紹介をする事にしたのである。


「俺はアキラと言います。冒険者になってまだ日は浅いですが宜しくお願いしますね?」


 そう挨拶すると彼も名乗り返してくれたのだが……その時、アリアさんが部屋に入ってきたのである。


「アキラ様!本当にありがとうございました!」


 そう言って頭を下げる彼女に俺は言ったのだ。


「いえ、気にしないで下さい……それよりもレイさん以外の方もポーションで治せる方はどんどん治していきましょう」

「はい!分かりました!!」


 こうして俺は教会で怪我人の治療をしていく事になったのである。

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