4. 連絡先と部活動
めちゃくちゃ久しぶりなのでキャラの口調が変だったらごめんなさい。
突然だが、みんなにはある日突然スマホのない生活を強いられた経験はあるだろうか。
現代社会では連絡の多くをスマホのアプリや電話機能で行っている。
その必需品がある日急に使えなくなったら……不便以外の何物でもないだろう。
そして、異世界での生活でも当然連絡手段がなかったため、知り合いに便りを送るときはいつも手紙だったし、街中で俺一人の力で人を探すのにもよく苦労した。
もっとも、俺が高難易度魔法である念話を習得してからはそんな苦労はないに等しかったが。
「……でも、そのあとの期間があまりにも短かったなー」
「なんの話?」
しまった。念話を手にしてからの快適さを思い出してつい声にまで出してしまっていた。
まだ新学期なのもあってか放課後の図書館の人口は少なく、静寂であるため余計に耳に届きやすかったのかもしれない。
ふ、藤さんになんて言って誤魔化そう。
「い、いや……春休みってあっという間だったなーって」
「あ、そ」
誤魔化し方に無理がありすぎて呆れられてしまっただろうか……?
いや、これは違う気がする。
そもそも図書館に来る前から機嫌が悪かったわけだから、もっと別の理由で俺への態度が素っ気ないのではないだろうか。
「……ねえ、なんで今日食堂に来なかったの?」
「え……? あ、ああ。なんか同じクラスの植木君が弁当あるのに景品欲しさにパン買いまくっちゃったらしくてさ。それをおすそ分けしてもらったから今日はラーメンを我慢して……」
嘘である。
本当はもっと別の理由で昼休みを潰されていたわけだが……あいにくこの場で口に出すことは叶わない。
知り合って3日くらいだけど濡れ衣を着せてすまんな、植木。
明日お詫びに何か上げよう……景品用のシールが貼ってあるパンでいいか。
「ふ、ふぅん。……そういうことは先に言っておいてくれない? 親切心で隣の席開けておくか迷ったんですけど」
「ご、ごめんなさい」
その場で頭を下げて謝る。
俺の短いくせに一気に濃くなった人生経験で得た教訓その2.謝るときは謝る!
こちらに僅かでも非があるのであれば一旦謝るべきだ。少なくとも、相手を傷つけたくないなら。
俺は、感謝と謝罪は友人相手であれば何度だって言ってもいいと思っている。
……そうだよなー。昨日の感じで行けば今日も俺は食堂に来ると思うよな……というか実際俺もそのつもりだったし。
連絡先交換したい……けど、今はどう考えても聞ける雰囲気じゃない!
「別に、怒ってるわけじゃないから。ほら、さっさと手動かしなよ。昨日よりも宿題の量多いんだから」
「お、おう」
教科によっては明日締め切りではないものもあるが、明日に持ち越すとやるのを忘れてしまいそうだ。
今日は授業が終わってすぐに藤さんと一緒に図書館に来たからたっぷり時間がある。
他の生徒はというと、部活の体験入部に行ってしまった。
今頃あいつらは新しい出会いをわんさか経験しているのだろう。
ちょっと疎外感を覚えて寂しいが……明日の休み時間が楽しみだな。
「体験入部……行きたかった?」
「えっ!? なんでそれを……?」
新入生特有の話題ではあるだろうけど、そんな俺が考えていたタイミングで都合よく話を振れるものなのか……?
「もしかして藤さんてエスパ」
「席隣だし、休み時間中の会話くらい聞こえてるんだけど……それに、今日の6限目が部活動紹介だったし」
「あ、はい」
ですよねー。
……いかんいかん。高校生活が始まってから疑い深くなってしまった気がする。
これが異世界から帰ってきた影響なら矯正すべきだろうか。
「それで、実際のところどうなの?」
「う~ん…………『体験入部』というイベント自体には興味があるんだけど、部活動をやる気にはならないんだよなー」
「それって、勉学を優先したいからってこと?」
「いやー別に、そっちもほどほどでいいかなって」
「へぇ……意外だね」
文武どちらともあまりにも熱意がなさ過ぎて呆れられてしまっただろうか……?
いや、これは違う気がする。
「意外、というのは……?」
「なんとなくだけど、何かに打ち込んで青春を謳歌したいタイプだと思ってたから……なんとなくだけど」
どきりとした。
これは決して、彼女が髪を耳に引っ掛ける仕草が色っぽかったからではない。本当だぞ。
この「一度しかない高校の3年間、せっかくだから絶対に青春を謳歌するぞ」という発想は異世界にいる間に常々思っていたことだったのだ。
ま、まあ彼女の発言内容と少し違うが……核心を突かれたようでびっくりしたというのが正しい。
だがしかし、ここでだんまりを決め込むのはまずい。
そして動揺を悟られるのもまずい。
なぜなら……地雷でもなんでもないことを言われて焦っている様子を見せるのはキモイからだ。……あくまでも俺個人の意見だが。
「うーん……俺も前まではそう思ってたんだけどさ、こうやって毎日一緒に勉強してくれる友達に巡り合えたから今はそれだけでお腹一杯というかさー」
この動揺している心境を悟られないために頭からひねり出した突破口が、俺の中にあるイケメンがギリ許されそうなエモキモイ台詞だった。
ちなみに俺は自分の顔がイケメンだとは思ってはいない。
つまり今のこれはただのキモイ台詞である。
……結局俺はキモイということか。
「ふ、ふぅん……? それは、私もそうだけど……」
「え……?」
心の中で黒歴史を作っちゃったなーと思うのも束の間、言われた当人である藤さんはまんざらでもない様子だ。
この人、意外と照屋さんなのか……?
彼女は恥ずかしさからか、こちらに目を合わせることなく、机に開けたノートと参考書を見て黙々と宿題を解いている。
お、ここの問題、ちょうど俺が今やってるところじゃん。
……少し見せてもらおう。
ダンッ!!
俺が盗み見ようと思っていた部分に、彼女の振り下ろされた拳が覆いかぶさる。
「ねえ……そんな歯が浮く台詞で騙せると思った?」
「で、ですよねー」
「まったく……ほら、わからないならやり方だけ教えてあげるから、一回くらい自分で解きなよ」
「あ、ありがとうございます」
どうやら彼女は俺が宿題を写すタイミングを伺っていたと思っているらしい。
……結果オーライだな。
そうして、時々藤さんに問題の解き方について相談しながら宿題は順調に進んでいき……
「終わった~!」
「ふぅ……お疲れ様」
「藤さんも、お疲れ」
なんとか閉館時間ギリギリに終わらせることができた。
最初の方の内容だからそこまで難易度が高くないとはいえ、家に帰ってから頭を悩ます必要がないのは嬉しいし、何より時間内に終わらせられたことで達成感がある。
「ねえ……さっきの話って、本当にそう思ってる?」
席を立ちあがって片付けをしていると、藤さんが俺の制服の袖をつまんで尋ねてきた。
「え? ああ、勉強だけでお腹一杯って話?」
「そうじゃなくて……いや、その話ではあるけど……」
うーんと……?
5秒ほど冷静に考える。
わかった。
「こうやって、一緒に勉強したりご飯食べたりしてるんだから友達だろ?」
「うん。そうだよね」
その答えに満足したのか、藤さんは背中を向けて片づけを始めた。
一種の確認作業のようなものか。
友達の定義は人によって様々だろうけど、俺はこうやって一緒に何かをしている仲のことを友達と呼んで差し支えないと思っている。
こういうのって、ちゃんと言葉にしないとわからないこととかあるもんなー……ましてやまだ出会って3日だし……。
まあ、お互いの認識に差異がなくてよかったよかった。
……ということで、
「藤さん、連絡先を交換しようよ」
いつ言おうか迷っていたけど、この流れで言わないのは逆に変だ。
高校に入って初めて、女子の連絡先を追加しようとしているわけだが……なんとも言えない緊張があるな。
俺の思いを知ってか知らずか、彼女はゆっくりと振り向き、スマホの画面を無造作にこちらに向けてくる。
「……別にいいけど。……昼食、どこで食べるのか連絡くらいしてよね」
「それはほんとにごめんね」
謝りながら、連絡先を交換する。
そんなこんなで高校生活の一大イベントの一つである「女子との連絡先交換」を無事成し遂げた俺は軽い足取りで帰路につくことになった。
「恥ずかしいから人のいるところでスキップしないでよ」
「……すみません」
ま、帰り道は途中まで藤さんと一緒なんですけどね。
モチベが戻って来たので更新再会しようと思います。
とりあえずこの作品に集中して、筆が乗ってくるまでとにかくたくさん書いていきたいです。
夜にはいつも通りモノローグを投稿する予定です。
よろしくお願いします。
挨拶はこれで終わりにしまして、改めてここまでお読みいただきありがとうございます!
感想などがありましたらお気軽にどうぞ。