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3. 図書館と勉強時間



 突然だが、みんなには異世界に召喚されて、そのままその世界を救った経験はあるだろうか?

 俺にはある。


 異世界を救った英雄(えいゆう)でも、緊張するイベントがある。

 それは女の子と二人で何かをすることだ。


「ごめん、遅れたー」


 TPOを考慮して小声で藤さんに話しかける。

 ふぅ……図書館は静かで落ち着くな。

 ……この状況はいい意味で緊張するけど。

 さっきまで教室で話し込んでたから声が大きくなりすぎないように気を付けなければ。


「別に待ってないけど」


 そう言いつつ、隣に座れるように場所を開けてくれる。


「あれ、もう宿題終わった感じ?」


 藤さんの手元には図書館のものと思われる本しか見られなかった。

 彼女は溜息を吐いてから少し間を開けて口を開く。


「今日そんな量なかったでしょ」

「確かに」


 今日の授業はガイダンス中心であまり進まなかったからな。

 そのため出された宿題も少なめだ。


「じゃあ俺もさっさと終わらせよっと」


 隣に腰かけて教科書とノートを取り出す。


「……宿題終わったら帰るの?」

「うーん……」


 帰ってやることも特にないしなぁ……。


「せっかくだしここの蔵書を少し見て回ろうかな。俺の宿題が終わる時間にもよるけど」


 我が校の図書館の閉館時間は6時30分だ。

 試験期間中だと8時まで伸びるが……その場合は勉強したい学生たちで席の取り合いになりそうだ。

 チラっと時計を見る。

 ……今は5時。

 おそらく藤さんは4時30分くらいにここに来ていてすでに終わらせている。

 つまり俺の手際がどれだけ悪くても1時間ほどで終わるだろう。


「何か面白そうな本あった?」

「今のところ見つけてない。そんなここに回れてないし」


 うちの図書館は教室と併設されたタイプではなく、独立した建物で3階建てでなかなかの規模を誇っている。

 本が置かれているのは1階のみだが、それでも大きめの体育館ほどの広さはある。

 とても一日二日ほどで回れるような蔵書数ではない。


「2階の学習席だと私語厳禁なんだっけ?」

「そうなんじゃない? よく知らないけど」


 よし、お互い図書館について知識不足なのはわかったな。


「……っし」


 勉強道具を鞄にしまい、大きく伸びをする。

 緊張していたせいか少し頭が回らなかったが、宿題は30分ほどで終わった。


「ん、お疲れ様」


 それにしても、近くで誰かに見守られながら勉強するこの感覚……何かに似ているような……。

 …………思い出した!

 魔法の術式の勉強の時の感覚だ。

 あの時近くにいたのは確か相棒のピナだったな。

 物音一つ立てずに静かに待ってくれていたんだよな。

 それで俺が「終わったー!」って叫ぶと決まって短く一度吠えて労ってくれてたんだ。


「もしかして藤さん、前世がオオカミだったりする?」

「……そんなこと言われたのあんたが初めてだけど」

「ごめん変なこと聞いた」


 つい勢い余って頭の中で考えていたことをそのまま口に出してしまっていた。

 とにかく、この調子なら高校の勉強は何とかなりそうだ。

 心の中で藤さんとピナに感謝した。



ここまでお読みいただきありがとうございます!

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毎日投稿3日目!

気長に頑張ります。

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