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【ifルート】王子なのに、聖女と結婚したくない~と、私とは婚約破棄しなければならないはずの王子が泣きついてきたので、仕方なく一緒に逃げてあげることにした

婚約破棄してきた王子に、聖女との恋のサポート頼まれました~さっさと完遂して、思いを断ち切りたいと思います~https://ncode.syosetu.com/n9823hs/

のifルートで、王子ルートです。


上記の四話を読んでからのほうが、楽しめると思います。


聖女の癒しの力を代々王族が受け継ぎ、その権威により保ってきた魔法王国。


その王子の目の前に、再び異世界の聖女が降臨された。

王子と婚約者だった私は、彼の目の前に運命のように聖女が現れたと聞いて、婚約破棄を覚悟した。




けどーー情けない泣き顔で、王子は言った。



「僕は君が好きだから、聖女とは結婚出来ない」



あなたは王子だから、そんなわがままを言ってはだめです。


王子のくせに国の行く末を考えられないのですか?


あなたが聖女と結婚しなければ、この国は滅びるかもしれません、国民達を犠牲にして幸せになれますか?。


叱責の言葉が頭にうかんでは、王子の涙が溢れる度に私の頭から消えていった。


「私を好きな気持ちを押さえ込んで、聖女様の隣で笑えませんか?」

「笑えない、僕は君の隣でしか笑いたくない」

「聖女様が現れた今、私と一緒にいても、王子は幸せになれませんよ?」

「君が隣にいてくれるだけでーー君が隣にいなきゃ、僕は幸せになれない」

「そうですか、それじゃあ仕方がないですね」


ため息をはいて、うかれてスキップしたい気持ちを押さえ込んで、私は呆れたように言った。


「二人で、逃げちゃいましょうか?」


ああーでも完全に笑顔になってしまったから、私の気持ちは伝わってしまったのだろう、王子は涙を止め、懐いた犬のように笑って私を抱きしめた。



ーー恋愛おんちだと思っていたのに、こんな場面で初告白とかズルいですよ、王子!。




逃亡は、早い方が良い。

公爵であるお父様に手を回される前に、国境を越えるべきだ。


私は王子を手早く部屋に連れ込んで、その王子様だということを主張している服を全て脱がせた。



変わりに、信頼出来る侍女に内緒で持ってきてもらったメイドの服を、着て貰う。


「何でこんな服を?」

私に言われるがままメイド服を着こんだ王子は、私とお揃いの美しい銀の髪をウィッグにより伸ばし、青の透き通る氷のような目を彩る睫毛をカールさせーー薄く化粧を施しただけなのに、着飾った貴族の女性が霞むほどに、美しかった。


「とてもお似合いですよ、王子」

安心させるように笑った私も、メンテナンスに気を付けているので彼の隣に立つのに不足しているつもりはないが、ちょっと身長が低いのでそこだけは不足かもしれない。


私にも持ってきてもらっていたメイド服を着込み、それから地味めの鞄にお金に変えられそうなものを積めていく。


宝石の他では下着が良いだろうーーかさばらなくて軽く良い素材を使っているのでお金になるし、宝石を包む布にもちょうど良い。


後はーー混乱を起こすだけ。



「一分後に火の手が上がるので、動揺しないでついてきて下さい」

「一体なにを!?」


「死人は出ません、大丈夫です」


ただ起こることの説明だけをして、王子の手を引いて走る。


背後に赤い光と熱風、音だけはとにかく響くようにした。



「あまり誇るほどのものだと思ったことはないですけど、魔法が使えて良かった」

「君は凄いよ!いつも僕を暗い所から連れ出してくれるーーそれにくらべて僕は」

「王子がいるから、私は強くあろうと思えた」


火の手が上がる屋敷を出て、闇をまといながら馬車乗り場まで急ぐ。


「私を強くしたのは、王子です」


王子と自分に風を纏わせれば、常人の数倍の早さで目的地につく。



馬車乗り場は閑散としていたが、馬の貸し付け場には明かりはついていた。


「王子は乗馬出来ますよね?」

「一通りは、だけど日が落ちてからはーー」

「基本が出来ていれば、大丈夫です。前は彼らが見てくれますから」


言いながら貸し付け場に入り、馬を二頭借りた。


夜は獣が出るので、かなり割高だ。


まあその分、ついた町の返却口に返せばある程度は戻ってくるのだが。


「彼らの前は私が道を開けます。王子はただ私の魔法に驚いた馬から落ちないで下さい」

「わかった」


さあーお父様に気づかれる前に距国境越えなきゃ、時間との勝負だわ。


暗闇に紛れて襲ってくる魔物を、私は遠慮なく魔法でしばき倒して行く。



しばらく馬を走らせ、彼らが疲れる度に王子はその尊い癒しの力を使って癒した。


その効果は凄まじく、常に元気な状態の馬は全速力で走ってくれて、懸念していた国境は、数日後に越えられた。



私と王子の逃亡は思いの外に上手くいき、別の町の船着き場のある港についていた。


そこから先が、わりと悩み所だった。


私がお父様の思考が読めるように、お父様も私の思考が読める、順当に行けばすぐに捕まるだろう。


だから王子に、頼ることにした。


「王子は、どこへ行きたいですか?」


「僕が行きたい場所で良いの?」


女装がいたについてきた王子が、首を傾げた。


さすがにここまで来るとメイド服は目立つので、普通の平民の娘の服を着ているのだが、中身が極上なので良い所のお嬢様にしか見えない。


血迷って女性物の下着を着けてもらおうとしたら、赤い顔で恥ずかしがって拒否された。

わりと新しい趣味に目覚めそうなほど、麗し可愛いかった。


「理論で考えると間違いなくお父様に決め打ちされてますし、それ以外なら確率はあまりかわらないので、王子が楽しそうと思える所ならどこでも良いですわ」


「だったらーーー」




王子の提案の元、私達は神に見捨てられた国に行くことになった。



ほとんどの国民が魔法を使えないこの国で、私達も魔法が使えないから移住してきたという振りをした。


魔法が使えないというコンプレックスから、この国に移住する者は少なくないからだ。



すぐに追っ手に追い付かれて捕まってしまうだろうという私の予想に反してーー私達は穏やかに年を重ねていった。



王子は剣を鍛えていてそれなりの腕だったので、魔法のほとんどないこの国では、その能力は魔物を退治するのに重宝された。


銀髪の女神と呼ばれようになる彼が名の知れた冒険者になるのに対した時間は必要なくーー王子である時は頼りなかったのに、平民としての生活は、彼に頼りっぱなしだった。


魔法が使えるのを隠していなかったら私だって!、平民でいるほうが頼りになって格好いいとかなんなんですか!?。



お互いに平民に生まれた方が、きっと私達は幸せになれましたね。



ーー逃亡して数年後、双子の赤ちゃんを授かったタイミングで、王子は魔法王国の追ってに捕まり国に戻された。


「必ず、どんなに時間がかかっても、君と子供達の所へ帰ってくるから!」


別れ際、この数年でしっかりたくましくなった王子は、そう約束してくれた。



私はというとーー魔法王国に捕まらずに、神に見捨てられた国の王子である発明王子に、子供共々保護されることになる。


「これまで私達が捕まらなかったのはあなたが手を回していたからですね?、王子の特別な血が手元に欲しかったんですか?」


発明王子は、黒髪で赤目ーー自己主張の激しい配色で分かりやすい美男子ーーのわりにへりくだっていると勘違いになりそうなほど、低姿勢で言った。


「言い訳になるかもしれないけど、君達を守るのは大変だったんだ。この先どんなに隠蔽してもいずれはバレていた、そしたら国際問題になるし、あの国に目をつけられるのは困るからね。二人の愛の結晶を授かる時間が与えられただけ感謝してほしいな」


「感謝しておきましょう、ーー王子と二人きりで生活出来たのはとても幸せだったのでーー少なくとも私はこの思い出だけで、残りの人生がどれほど過酷でも、幸せな人生でしたと笑って死んでいけます」


発明王子は、まるで眩しいものをみるかのように、こちらを見つめてきた。

「ーー君みたいな素敵な女性に愛されて、王子が羨ましいな」


「くすっそんなに男前な顔をしてなにを言ってるんですか?。ああーーそうですね、私に指一本触れることなく子供達を大切に育ててくれるでしたら、王子がいない間だけ、あなたのことを愛してさしあげても良いですよ?」

それはもちろん、軽口のつもりだった。


「僕はわりと、そういう冗談を本気にするタイプだ」

発明王子は真面目なようだ。


「どのみち私達を手元に置いておく建前があなたには必要でしょう?。真実の愛に目覚めたとか適当に言って手元に置いておけば良いーー契約の範囲内なら、愛しい旦那様と呼んであげます。ああでもあなたの子供を生む気はないので、そういうのは別の所でお願いしますね」

相手の反応が面白くて続けた冗談に、発明王子は赤い目を喜びに輝かせて頷いた。


「君と君の子供は僕が命に変えて守ります。だからーー僕に君の愛を下さい」


「冗談です、と言っても聞きそうにない顔ですね、あれ?もしかしてあなた色んな策謀は置いておいて、私を保護したのはたんに私に惚れて?」


発明王子は微笑んだまま口には出されなかったがーーえーその恋心はわりと笑えないぐらい迷惑なんですが?。


数年後に聖女を元の世界に返した王子が、私を迎えに来てくれて、その後かなーりの一悶着があるのですが、これだけは断言できます。




ーー私と王子と子供達は、その後幸せに暮らしました!。













とある日の二人。



「すっかり女装するの、趣味になっちゃいましたね?」


「君と姉妹かと聞かれて、嬉しかったから」


「そこ嬉しがるポイントですか?、ああーー嬉しがる所ですね、あなた親にも恵まれず兄弟にも死なれてますしーー私の母性本能くすぐるのやめてもらえませんか?、もっと王子のこと幸せにしたくなっちゃうので」


「もう十分幸せだから、これ以上は困るかもしれない」


「まさかの幸せのおかわりの拒否!?」


「僕は十分幸せだから、君を幸せにしたい」


「んーんー確かに今が幸せだと、これ以上は贅沢だなーって思っちゃいますね」


「何か一つだけでも」


「んーじゃあそうですね、あの時くれようとしてくれた髪飾りを、いただけますか?」


「ーーーー知ってたの?」



「そういう素振りを見せていただけたのはあの時だけだったので、告白される前は、私の勘違いか願望だったのだと思ってました」



「あの時の私のために、一生懸命に選んでくれたキキョウの髪飾りを、いただますか?」



「ーークレアはずるい、今のは僕のほうが幸せにしてもらった」

「私も幸せになってるので、引き分けでどうですか?」





キキョウの花言葉


「永遠の愛」「変わらぬ愛」




◆◆◆◆◆◆◆◆






ここまでお読みくださってありがとうございます!。

我慢出来ずに書いたifルートですが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです!。

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