異世界?不気味な場所にいる僕は無事に逃げ切ることができるのか?
夢を見ていた。
そう、これは夢に違いない。
だって、そうでもなきゃこんな場所にいる意味がわかんない。
そう、僕は今、廃墟らしき場所にいた…。
一人で…。
床に倒れていたような格好だった為、ゆっくりと起き上がる。
頭はふらついてないようだ。
でも1人でここにきたなんて考えられない。
僕はこの手の類は嫌いで自分から行くような事はしないし、
いけと言われていく人間ではない。
謎で、静かだ。
目の前に鏡がある。等身大のだ。
自身を鏡の前に立たせると見知った自分の顔、体が映る。
昼間だが、薄暗い。
崩れた建物の隙間から光が入ってくる。
【カァ、カァ。】
鴉が鳴く。
ただそれだけだ…。
考えると頭痛がした。
手で触るとたんこぶができていた。
ポケットにあるはずの携帯を探したがどこにもなかった。時間が全くわからない。
もう夕方か?
鴉の鳴き声を聞くと何故か怖くなる僕。
ここは一体どこだ?
他に人はいないのか?
あれは何だ?
上を向いてみた時に廃墟なのに不似合いなものを見つけた。
そう、監視カメラだ。
まぁ、最近は不法侵入するものが多いので、自衛としては正しいと思う。
赤い点が見えるということは今現在も動いていることだと思う。そう思っていたけれど、赤い点が近づいてくる気がしてならない。
そんなはずないのにね。
赤い点だと思ったものは光っていた。
光の加減で光るにしては明るすぎる赤だ。
静かな空間の中、どこかでポタポタと音がする…。それもゆっくりと落ちる音だ。
目の前に現れた赤は空中に浮かんでいた生首の口から垂れてた血の色だった。
「ひー?!」
叫び慌てて逃げ出すも何かにつまづいて転んでしまう。
それは大きなものだった。
だって人の体だったから…。
だけど首から上がない。
何で?
どうしてこうなってるの?
この人は誰?
怖い。怖いよ。
走り出したが、後からついてきている気がしてならない。
ま、マジか?
目の前にある障害物を手当たり次第に足元に倒してなお走り続けた。建物から出ても人一人見かけないことに不安しか無く、人がいそうな場所を探した。
…そうだ!交番があるじゃないか!ただ問題なのは携帯がない為今どこを走っているのか、また交番がどこにあるのかが全くわからなかった。住宅街にいたので誰かいるんじゃないかと思い、近くの家に飛び込んだが、玄関のチャイムを鳴らしても誰も出てくる気配はなかった。
よくみてみると明かりもついていなかった。
いないのか?
夜なのに?
もたもたしてはいられない。
追いかけてくるかもと不安しかないのだ。
自分が走ってきた方を見てみると何かが動いているのが遠くで見てとれた。まさか…あの遺体が?
首がない死体が動くとは思えないが、尋常ではない事態が起きている。何かあってもおかしくないと思う。
「だーれーかーー!いませんかーー!」
僕の声だけが反響しているように思えてならない。
なんで誰もいないんだろう?
ここは現実だよね?
違うの?
独り言をブツブツと言っているが、止めるものは誰もいない。
冷静に考えてこれは夢じゃないかと思い、どうやったら起きるかを考えてみた。高い階段から転げ落ちる?頭をごんする?どれも無理だ。1人ではできない。怖くて勇気が持てないのだ。けどどうしたって何かやらないといずれ捕まってしまう。そうなったら僕はどうなるの?
夢ならここら辺で目が覚めてもおかしくはないが、今までこんな怖い夢など見たことなかったのでどうしたらいいのか全くわからない。
もう迷ってはいられなかった。
階段から転がり落ちる方を選んだ。ただあまりに高すぎると怖くて足がすくむので、中段からゆっくりと転がることにしたが、なんせ急な階段だった為結局はスピードがついてしまい受け身もまともにできないまま全身の痛みで気を失った。
目が覚めたら場所は違うが廃墟らしい場所に倒れていた。
見上げると高い階段が見える。よくもこんなところから転がったなぁと自分を褒めたくなった。
でも全身が痛い…。
骨折は…してはいなさそうだ。
でもこれであの不気味な霊からは逃げられたんだ。
そう思っていた。
そしたらさ、今度は違う霊が現れた。
ポツンと1人道路に向かって立っている。
子供のようだ。
事故にでもあったのか?
子供ならまだ怖くないやと思っていたが、それは考えが甘かった。
子供の方が怖いと時期に気づくことになる。
霊とは言っても子供だから大したことできないよねと近寄らないように視界に入らないようにそばを歩いてその場を離れようとしたら突然声をかけられて僕は心臓がビックリした。
「お兄ちゃん…どこ行くの?」
どう答えたらいいのかわからず黙っていると、また同じ質問だ。
「お兄ちゃん…どこ行くの?」
意を決して喋り出した。
「ここじゃない場所に行くんだ。ここは怖い場所だからね。危ないんだよ?」
「何言ってるの?危なくなんかないよ?だって僕がいるからさ。」
意味がわからない。
何故この子がいたら危なくないのか…、この子がいなかったらどうなるというのか…?
聞く勇気もなかった。
ただ黙ってその場から歩き出した。男の子が何かをしゃべっているようだったが聞こえなかった為そのまま逃げることにした。それがまずかったのか、男の子がものすごい勢いで走ってきた。僕は怖くてさらにスピードを上げるも男の子の方が足が早く簡単に追いつかれてしまった。
「ねぇ、なんで逃げるの?もしかして鬼ごっこしたいの?」
「…んなわけあるか!怖いからに決まってるだろ?お前一体なんだ?いいからほっといてくれ!」
「僕にそんな口聞いていいと思ってるの?僕怒ると怖いよ?」
「どこが怖いんだよ。」
「それはね?」そう言うと男の子だった顔が鬼の顔になった。ツノが2本。口が耳元まで裂けてる。
なんでこんなんばかり…こんな夢ばかり見るんだ?
思ったことが聞こえたかのように鬼が喋り出した。
「それはね、夢…じゃないからさ。クックックッ。」
それを聞かされされた僕は怖くて腰を抜かしてしまった。
体の震えが止まらない。
「逃げることはできないよ。だってお兄ちゃんも死んでるんだから。」「?死んでる?いつ?何で?」分からない。焦りが止まらない。
僕は必死に考えた。
僕が死んだという理由が何なのかを…。
それはただ一つ。
階段を転がり落ちたことくらい。
まさかそれで死んだ?
確かに全身の痛みで気を失ったが、それが直接の死因だったのか?バカな!それじゃあ僕が逃げた意味がなくなるじゃないか。そんなことを考えて新しい始めに見た霊が現れた。
マジか…。
もう逃げる気力もなかった。
だでて僕はもう死んでるんだからさ。
そう言われて納得できてしまった僕がいた。
近づいてくる霊達。
動けない僕。
どんどん近づいてくるその恐怖はたまらない。
もう、もうダメだ!
そう思った時意識が戻ったというか起きた。
焦った僕は顔や身体中を触りまくったが、どうやらどこも怪我などしていないようだ。
ただ全身汗びっしょりかいている。
辺りを見回すと確かに見知った僕の部屋だ。
「た、助かったぁ〜。」
ため息が出た。
あれは一体何だったのか…今でもわからない。
ただ言えるのは霊と呼ばれるものの存在を知った事くらい。
ただただ夢でよかったと…そう思った。