集団心理と接触
セシリア叔母様のお話についつい聞き入ってしまい、婚約パーティーだという事を忘れそうになっていた。
「話し込んじゃって、主役を独占してごめんなさいね」
そう私とディラン様に謝られたが、周りは関係者でがっちり固めていたので他に話が漏れる様な心配はなかった。
「もっとゆっくり話したかった様だね」
ディラン様からそう言われて、私は頷いた。
「でも今はパーティーに集中しないと」
会場のあちらこちらから視線が集まっている。
「じゃあ、踊ろうか」
そう言ってまたダンスの輪の中に入っていった。
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心配した様な妨害も無く、嫌がらせらしきものもなかったので安心していた。
するとディラン様が顔見知りの男性達に呼ばれ、私を両親に預けてからそちらに向かった。
私には友人と呼べる様な方が居ない。
どうしても噂が先行して、遠巻きにされ話しかけても逃げられる事が多かった。
私と一緒にいる事で、ご自分の評価が下がるとでもいうかの様な態度に辟易して、無理をするのは止めている。
無理して付き合って貰ってもそれは友人では無い、ただの顔見知りの知人だ。
寂しい気もするが家族もいるし、年上の方々とは気が合って楽しくお話し出来たりするので、敢えて気にしない様にしていた。
「本日はおめでとうございます」
後ろから突然声を掛けられて振り返ると、令嬢が五人ばかり皆笑顔を浮かべて挨拶された。
「本日は私たちの為に、ありがとうございました。楽しんで頂けていますか?」
そう笑顔で返事がてら返すと、私の家族達は少し離れてくれた。
「お噂とは随分雰囲気が違うのですね」
いきなりそう言われた。
「噂?何か私に関する噂が出回っているのですか?いい噂なら嬉しいのですけど」
令嬢達はお互いに目配せして何か言いたい事がある様だった。
「おめでたい席でこう言っては何なんですが、一応お耳に入れておいた方が宜しいのでは……という話になりまして……」
随分取ってつけた様な言い方だ。
「一部で、この婚約は何か意図があって偽物だという方々がいらっしゃるのです」
「まあ、そんな事を仰る方が?」
「そうなのです。私達は……ねえ、そんな事はないって申し上げましたのよ」
ねえ……と皆に同意を求める辺り、名前も名乗らないその子中心の意見とミリエンヌは見た。
「教えて下さい、どの方々がそんな事を言われたのでしょうか。誤解がある様なので」
「えっ!」
そんな返しがくるとは思っていなかったのかしどろもどろになる。
普通なら涙を浮かべて退場か、下を向いて無言になる……そんな風に予想していたのかしら。
「よく覚えていらっしゃらない様なので……あなたはどなただったか覚えていますか?」
ミリエンヌは別の令嬢に矛先を向けて聞いてみた。
「わ、私はその場にいなかったので」
と言い出した。
「では他の皆さんは?」
「……」
みんな下を向いてしまった。
「困ったわね、あなたしか聞いていないお話の様ですわ。他の皆さんは付き添いね」
「……」
「先程のお話は複数の事でしょう?方々って仰ったもの」
「何かのお話でそんな話題が……」
「どこでですの?お茶会かしら?それとも……」
「兎に角そんな風に皆さん仰って疑っておいでですの」
「皆さん?ここに居る皆さんはどうかしら?」
「私達はそんな事ないと申し上げましたわ!」
一人が声を上げて皆頷いた。
「あら?変ですわね。覚えてないはずでは……?」
「と、兎に角ご忠告申し上げましてよ。それでは……」
「皆さんお待ち下さい!お名前伺っても宜しいかしら?顔を覚えるのは得意なので後は是非、お名前伺いたいわ」
「ひっ……」
そういうと青くなって淑女らしからぬ小走りで皆さん一目散に去って行った。
それにしても『ひっ』って何?人を化け物みたいに酷くない?
その後、母が先程のご令嬢方の名前全て分かるというので、後日お礼状でも送ろうと思う。
善意で言って下さったのだもの。
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その後無事にディラン様と合流して、先程の事を話す。
「ぷはー。その場に居たかったな、残念」
「居たらそんな話にはならなかったと思いますよ。流石にね」
ディラン様は他人事のようにゲラゲラ笑う。
周りが珍しさに凝視している事にも気がつかず。
「ミリエンヌ様、お話がございますの」
ショッキングピンクのふわふわ髪、真打の登場だ!
「失礼ですがどなたですか?」
知ってはいるが、聞いておこう。
「ケイトリン・モナークと申しますわ」
「今日は私達二人の為にご出席頂き、ありがとうございます。ミリエンヌ・スペンサーですわ」
「はぁ、どうも」
話があるにしてはその返しは如何なものだろう?
「他のご令嬢方はご一緒ではありませんの?」
「えぇ、個人的な話なので」
「初対面で個人的なお話……?ここではダメですの?」
「少し込み入った話になりますから、控室にでもおいで頂けませんか?」
「ダーリン、どうしましょう?」
「では控室には私も行くよ」
「……いえ、ディラン様はここでお待ちください。すぐ済みます」
声がワンオクターブ低くなった。
ダーリン呼びに反応したらしい。
扇子を持つ手がプルプルしている。
「ご存知ないかもしれませんが、先日嫌がらせを受けましたの。それで行動は複数でという事にしていますのよ」
「そ、そうなんですか。知りませんでしたわ」
「でも不思議な事もあるもので、その時のご縁で父が大層ダーリンを気に入ってしまって」
「そうそう、それでウチの娘は要らんかね?ってなったんだよな」
「えーと、これって災い転じて福と成すでしたっけ?」
「そう、それ!」
二人で手を取り合って笑っているといつのまにか居なくなっていた。
「あれ?居ない?」
ディラン様がわざと言う。
「お急ぎでは無かったのかしら?」
わざと声を大きくして私も言ってみた。
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